見出し画像

ルヴァンシュについて語る:ネタバレあり

前回、創作論とか言ってルヴァンシュの諸々について語ったら、もう少し語りたくなってしまった。
↓前回

そんなこんなで、noteには載せていない部分の話も含めてルヴァンシュを語ることにした。
某所で書いているルヴァンシュを知らない方にとってはなんのこっちゃ、となる話(某所での話を知っている方は名前と細かい設定の変更に混乱するかもしれない)。

考えてみたら、自分の創作した話についてきちんと語るのはほぼ初めてかもしれない。
自己満だけどいいんだ。そもそも創作自体が自己満なんだもの。笑

最初からネタバレになるが、情報屋のラウルスは精霊王である。
精霊士であるアルテアが力を借りていた、精霊たちを束ねる王だ。
そもそもラウルスが人間ではない描写は最初からある。
獣人であるカンナが人間ではないと気づいていること(草原のような匂いがすると言っていた)、突然変な場所に現れること(気づいたら木の枝に座っていてシプレを驚かせたことがある。なおこのときにアルテアに向かって「今来たばかり」とも言っていた)。
時間に対する移動距離もおかしく、持ってくる情報はすべて正しいものばかりだったり、人間にしてはおかしいと感じるものもあった。

ここで気になる人もいたかもしれないことを書くと、なぜラウルスを普通の精霊ではなく精霊王としたのか、という点。
当初の予定だとラウルスは精霊だった。精霊王ではなかった。
ただ、ラウルスが精霊王だと明かした場面ではストーリーがかなり進んでいたこと(話の冒頭の出来事から5年経っている)、アルテアが言う「復讐」がシプレを王位につけることだとストーリー上確定していたから、というのが大きい。

王族のシプレと、元貴族であったアルテアとカンナ。
キトルスも王族だし、アルボルだって貴族だ。
こう考えたときに、いくらラウルスが特殊な立場にいるとはいえ特別な地位にいる存在でないのは話の中で浮いてしまうのではないか、と感じた。
この話の流れでいけば、シプレは国王になる人間だ。
そんなシプレと対等に話していた人物が、ただの精霊という存在で終わらせてしまっていいのか、と。

おそらく本編では細かくは書かれていないと思うが、ルヴァンシュの世界では精霊は多い存在ではない。
精霊士を殺すと精霊から呪われるというこの言い伝えは、精霊のことを神聖視しているために生まれたもの。
精霊が神聖なものであるから、その精霊の力を借りることができる精霊士も神聖視されている。
だからこそ、一族処刑を言い渡されても精霊士であったアルテアは生き残ることができた。
精霊も精霊士も、場合によっては信仰の対象となるような存在だ。

そんな存在だから、ラウルスをただの精霊としても何の問題もなかった。
ただ、アルテアがシプレを王位につけると決めた以上、少なくともシプレと対立していたアルボルの存在は消えることになる。
この時点でのキトルスの扱いは考えていなかったものの、いくら頭が良くても十九歳であるキトルスが「国王」が何であるかを完全に理解しているとは思えなかった。
シプレを王位につけたとて、その後が分からずに回らなくなってしまうのではどうにもならない。
そのときに、「国王」と似たような立場にいる人物が近くにいればいいのではないかと思ったのだ。
その結果が、精霊王ラウルスだった。

結果的にシプレは、事故とはいえキトルスを殺して王位につくことになる。
シプレは正当な王位継承権は持っているものの、革命を起こしたのと同じ。
そんな状況を理解して助言をできるような立場はあるのかと考えたときに、一番手っ取り早いのは自らも同じことをした経験がある、というものが思い浮かんだ。
これは私も予想外のラウルスの過去だった。

精霊王であるラウルスの言うことを聞かない精霊たちがいることは、作中でも出てきていた。
その理由がラウルスの王位簒奪にあったとなれば、精霊たちの行動にも納得がいく場面がある。
そして、言うことを聞かない精霊たちに対して「精霊王だと認めてくれていないらしい」とどこか諦めている様子でラウルスが話していたことも理解できた。
この伏線は、私が意図していなかった部分のもの。

カンナに関しては、モデルとなった人物と設定が変わっている。
髪色も変わっているが、なにより瞳の色を変更した(右目は黄色、左目は緑)。
理由は、カンナが犬の獣人であるから。
犬には識別が苦手な色があるとされている。赤と緑だ。
ここから生まれた設定が、魔力で書かれた緑色の文字は見えないというものだ。
瞳の色の変更は、それを象徴するためのものでもある。

カンナは獣人の中では珍しく、魔力を持って生まれて魔力の扱いを学び、魔法を使うことができるが、作中でもあった通り平民の獣人の扱いは酷いもの。
獣人本人には分からない形で、でも獣人からは一応同意を得た形でさまざまな契約を結ぶとしたらどういうものだろう、と考えていた。
騙すような形で奴隷契約を結ぶなら、獣人には見えない色を使って文字を書けばいいのではないか、と。
ただの魔力の文字では、魔力を持つ者には見えてしまう。
平民でも魔力を持つ人間はたまに生まれるし、獣人でもそれがまったくないとは言い切れない。
だからわざと色を変えるのではないだろうか、と。

こうなると、フレッサ王国の内情についても考えることになる。
王位争いによって国が混乱して、多くの国民が国外へと逃げ出した。
その中でも獣人たちは、獣人の国とも呼ばれる北にあるトラオム共和国へと逃げている。
そして、獣人たちは共通のアイルーロス語という作られた言語も持っている。
なぜ獣人の国であるトラオム共和国がありながら、フレッサ王国に住んでいたのだろうか。
なぜ国が混乱するまで、酷い扱いを受けながらもトラオム共和国へ逃げなかったのだろうか。
なぜ、カンナは「俺から獣人たちに協力してくれとは言えない」と言ったのか。

実はこの辺りもきちんと考えている。
作中でこの設定が出てくることはないだろうな、とは思っていたもののこうやって書く機会を得た。
だから、フレッサ王国と獣人の関係について少し深い話をしてみる。

本来、獣人は身体能力が高いもの。
ラウルスもその認識をしており、森の中を歩いていて「カンナがいたら大変だっただろうね」という発言をしたアルテアとシプレに疑問を呈している。
このときに、アルテアはカンナの生家スキロス伯爵家が爵位を持っていた理由を「魔力を持っていた獣人だから」と認識していたことも分かる。
それにもラウルスは何か言いかけたところで、話は終わってしまっている。
この場面にも、少し意味がある。
ラウルスはスキロス伯爵家が爵位を持っている理由を知らないと言っていたが、察してはいたからこんな曖昧な反応をしていた。

スキロス伯爵家、もといカンナが生まれる前までのスキロス男爵家は、名前だけの貴族家だった。
男爵家ではあるものの、貴族としての扱いはほぼ受けていない。
そのため、カンナが生まれて伯爵家となっても不当な扱いを受けていた。
それは他の貴族だけの問題ではなく、そもそも王家もスキロス家をきちんとした貴族家とは認識していなかったのではないか、というところから話が始まる。

スキロス家は身体能力と引き換えに魔力を手に入れた獣人の一族だ。
そしてその代償として、貴族としてフレッサ王国に縛られていたのではないかと思う。
フレッサ王国に限らず、獣人に対する差別意識はどこの国でも根深い。
おそらく、人間相手にはできない実験のようなものも獣人相手にはできていただろう。

プラタノ皇国では人身売買の禁止が定められていたが、フレッサ王国では特に定められていない。
だからこそ、プラタノ皇国の貧民街近くなどで人攫いが発生する。
隣国のフレッサ王国では人身売買が合法になるからだ。
そのため、奴隷としての子どもや獣人の売買がフレッサ王国では行われており、王家もそれを黙認していた。

フレッサ王国が排他的な国であったことは、アルテアも認識している。
プラタノ皇国にいる外国人の多さと比較して、外国人をあまり受け入れていなかったフレッサ王国のことを考え直している。
アルテアは自らが国を追われて「外国人」という立場になって、やっと認識したのだ。

こう考えると、フレッサ王国は大国でありプラタノ皇国と張り合っていたものの、プラタノ皇国とは真逆の性格を持つ国であったといえる。
そして、フレッサ王国が持つ性格は「自国民がよければ他の民族のことは知らない」という、冷たいものでもあったともいえるのだ。
この「自国民」に、果たして獣人は入っていたのだろうか?

こう考えると、フレッサ王国の中でのスキロス家の存在が異質なものになる。
獣人に対して冷たい国で、なぜ獣人の貴族が生まれたのか。
それがおそらく「代償」だ。

獣人の身体能力の高さを羨み、人間にもその身体能力が備わればと願う人間はいるだろう。
例えば、軍隊の兵士など。
獣人の身体能力の高さの仕組みが分かれば、人間にも活かせるかもしれない。
もしくは、獣人の身体能力の高さを無効化することができるかもしれない、と。
獣人の身体能力の高さは、国を守る兵士にとってみれば恐怖だ。

獣人にとってみれば、魔法というのは憧れだ。
獣人が魔力を持つことはほぼなく、あったとしても数百年に一度のこととか、そんなレベルのものだった。
獣人として生まれた以上、人間が使う魔法とは縁がない。
それどころか、「人間」として生きることすら許されない。
魔法さえあれば、人間たちを倒してこの支配から逃れることができるかもしれないのに。

この両者の願望を叶えるために選ばれたのが、スキロス家だった。
獣人が身体能力が高い理由を研究するために。
魔力を得て魔法を使えるようになるように。
利害の一致があり、スキロス家はフレッサ王国の王家と契約を結び、王国の男爵家として迎え入れられることになった。
その契約は同時に、スキロス家だけではなく他の獣人たちをもフレッサ王国に縛ってしまう呪いであった。

獣人の特徴である身体能力の高さを失い、魔力を得て魔法を使えるようになったものの、スキロス家は人間からも獣人からも受け入れられない異質の存在になってしまった。
フレッサ王国にいた獣人たちは呪いの影響で国外に出ることができなくなってしまい、逃げる先を失った。
獣人の身体能力についての研究が終わったあとは王家もスキロス家への興味を失い、男爵家のままにはしたものの貴族としての扱いはほぼせずに存在しないかのように振る舞った。
それでも貴族であるから、スキロス家の人間が奴隷のような扱いをされることはなかった。

これが、余計に獣人の平民とスキロス家の分断に繋がった。
スキロス家が存在しているせいで獣人たちはフレッサ王国から逃れることができないのに、当のスキロス家は腐っても貴族の扱いを受けている。
平民の獣人たちの目にはこう映ってしまったのだ。

この事情が変わったのが、あの内乱だった。
内乱が起こっても獣人たちは呪いに縛られたままだったが、スキロス伯爵家が第一王子キトルスの命令によって爵位を剥奪され、一家離散することになった。
これによって、フレッサ王国王家によってかけられた獣人に対する呪いや契約がすべて解かれることになったのだ。
カンナ自身もフレッサ王国から出ることができるようになり、プラタノ皇国へ逃げることができるようになった。

アルテアが言っていた、学園が行なったプラタノ皇国の見学にカンナが参加しなかったのはこれが理由だった。
カンナはフレッサ王国に縛られていて、他国に行くことができなかったのだ。
ただこの事情を知る人は少ないため、アルテアでも知らない話だった。

ここまできちんと背景が決まっていながらも、本編でこの話がほぼ出てこないのがルヴァンシュ。笑
書こうと思えばトラオム共和国の成立経緯とかも書ける。これもフレッサ王国とスキロス家が関わってることだから。
でもそこまで書き始めたら何の話? となりかねない。

少し長くなってしまった自覚があるのでこの辺りで終わりにする。
おそらく何のことを聞かれてもこんな感じで書ける。と思う。
気が向いたらまた何か書きます。王家の話とかそんなに書いてない気がするので。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?