安藤教祐 「2019年新人王戦の裏側」
はじめに
こんにちは
「ボクサーのストーリー」にスポットライトを当てるという目的で始めたこの「あわちゃんnote」。
現役プロボクサーの僕が、独自取材に基づきプロボクサーの素顔をお届けします。
今回の記事は、同じKG大和ジム所属、2019年ライトフライ級東日本新人王、
あんちゃんこと、安藤教祐選手のストーリーです。
Here we go♪(´ε` )
もくじ
(無料記事)
・はじめに
・全日本新人王決定戦後、負けたボクサーの晩餐
・ボクシングを始めたきっかけ
(有料記事)
・東日本新人王決勝戦
・全日本新人王決定戦
・新人王戦を終えて
プロフィール
安藤教祐 Ando Kosuke
愛称は「あんちゃん」「こーすけ」「世界のコースケ」
1992年7月4日生まれ宮崎県出身の27歳
身長163cm、血液型/AB型、右利きオーソドックススタイル
戦績は、9戦7勝(3KO)2敗(2020年4月時点)
獲得タイトル 2019年ライトフライ級東日本新人王
全日本新人王決定戦後、負けたボクサーの晩餐
「びっくりドンキー」は彼のリクエストだった。
正直僕はハンバーグの気分ではなかったけど、ジムの先輩、担当トレーナーも同じ兄弟子として、今夜は彼の食べたいものにしようと決めていた。
彼はいつもより2~3割テンションが低かったけど、飄々としていた。こちらに気を遣って無理やり明るくつとめているという感じでもない。
ハンバーグを食べる彼は、数時間前に後楽園ホールで全日本新人王決定戦をフルラウンド闘ったボクサーとはとても思えない、傷一つない綺麗な顔をしていた。
というか、そもそも普段の彼の風貌からはいわゆる「ボクサーっぽさ」を感じない。
小柄な体格、笑うと両の頬にできるエクボ、宮崎訛りの抜けない緩いしゃべり方……KG大和ジム内では「世界のコースケ」というよくわからない異名で呼ばれることもあり、愛されキャラを確立している。
街中で見た彼からボクサーを連想するのは至難の業だろう。
普段は力の抜けた雰囲気の彼が、リングの上では真剣な表情で殴り合いをする姿にギャップを感じるファンも多いはず。
さらにボクサーとしての彼は軽量級らしからぬハードパンチャーだ。スパーリングでパートナーを倒す光景を何度も目の当たりにしてきた。
彼より僕の方が変な気まずさを感じていて、何を話していいのかわからない……
自分も何度も負けたことがあるから今の彼の気持ちはわかるつもりだったし、全日本新人王に関していえば、僕は勝って、彼は負けた側だ。彼がこの新人王戦に懸けていたことを知ってるから、何をいっても彼にとって嫌みになるような気がした。
「全日本は獲れなかったけど、今日までやってきたことは無駄じゃないですよね。いい経験したっていえるように、来年結果出すしかないですね。」
彼のその言葉は決して強がりではなく今の率直な気持ちに聞こえて、驚きと安堵の気持ちが湧いた。
というのもジムメイトであり彼と職場の同僚である阿部麗也から、
「東日本を獲ったあと、ひとまずおめでとうみたいな感じで祝勝会やって焼き肉奢ったんすよ。そのときあいつ、”東獲れなかったらボクシング辞めてた”って言ってたんですよね。」
という話を聞いていた。
"今日の結果次第では、もしかしたら―"
そんな考えを頭によぎらせながら僕は全日本新人王決定戦を観戦していた。
と同時に、「切り替え早いな。」とも思った。
自分が試合に負けたときのことを思うと、こんなにすぐ次を、それも”前向きな次”を考えられたことはない。
さらに彼は試合帰りの車の中でジムの会長とトレーナーに、
「次の試合っていつ頃になりそうですかね?」
と聞いたらしい。
さすがに驚いた会長が、「今はいいからとりあえず少しゆっくりしよう。」と苦笑いで答えたそうだ。
本当にマイペースというか、飄々としている。
良くいえば、切り替えが早いし、
悪くいえば、淡白で冷めている。
ちなみにこのときのエピソードをひとつ付け足すと、
僕は元々「新人王戦のハードスケジュールをやり終えて、一年間疲れ様」という意味で今夜はごちそうする気でいたが、
会計をしにレジに向かいながら、彼はボソッと「あ、財布忘れた。」とつぶやいた。
ボクシングを始めたきっかけ
ボクシングを始めたきっかけは、同門KG大和ジムの世界ランカー「天才」阿部麗也だ。
高校を卒業して、宮崎から上京して就職した会社の同期だった。高校でボクシング部だった阿部に誘われて19歳のとき、近所のKG大和ボクシングジムに通い出した。
別にプロボクサーになるつもりはなかった。
小学校でソフトボール、中学で野球、高校でサッカーをしてきて、「怖いから」とテレビ中継の格闘技も避けてきたほどボクシングとは無縁だった。
ただ、「部活とかもっとスポーツに打ち込んでおけばよかった。」という気持ちがずっとあった。それだけだった。
毎朝7時前に起床、8時出勤、17時退勤だが休日出勤も含めて月約50時間残業で毎月一週間は夜勤……
慣れない土地での社会人生活は決して楽ではなかった。
そのサイクルに週6で仕事終わりのジムワークが加わった。ジムの毎週一回の合同筋トレや毎月一回の合同ロードワークにも基本的に必ず参加する。
KG大和ジムでは19時すぎからプロや選手志望の練習生がジムに来だして練習を始めるが、彼は大体20時すぎにくることが多い。
22時の閉館時間を10分過ぎた時間まで残っているとどこか一ヶ所掃除をしていくのがジムのルールなのだが、彼はそのジム掃除が常習だ。
いつも帰宅したときには23時を回っている。
「東日本新人王を獲れなかったら、さすがにモチベーションが続かないなっていうのがありました。」
新人王決勝戦は、アマチュアをやっていない叩き上げプロボクサーにとって、はじめて世の中に脚光を浴びる瞬間だ。
「ボクシングをやってきた証が欲しかった―。」
飄々とした雰囲気のまま、彼は力強くたしかにそういった。
社会人になってから草野球チームに入った。バドミントンに夢中になったこともあったし、趣味でバンドを組んだこともある。
「ボクシング引退したら、毎日スポーツジムに通って身体をムキムキにしたいんですよね。」
そういって笑う彼に、それがどこまで本気かはわからなかった。
ただ彼は常に目の前に目標が欲しい、毎日の生活に張りが欲しいだけなのだ。
そんなあんちゃんは今、次戦に向けてワークアウトに励んでいる。
コロナウイルスの影響で決まっていた試合は流れてしまったが、それでも彼は「早くA級に上がって、日本ランキングに入りたい。」と目標を口にする。
草野球もバドミントンもバンドも、今はもうやってはいない。
なぜボクシングは、19歳から8年も続け、全日本新人王決定戦に負けても、すぐまた次の目標をつくって走り出すことができたのか―。
ボクシングも草野球やバドミントンと同じ、毎日の生活に張りを求めて始めたスポーツのひとつのはずだったが、確実にボクシングは他のものと違う何かがある。
去年の東日本新人王決勝戦、全日本新人王決定戦にスポットを当てながらもう少し「安藤教祐」というボクサーについて掘り下げようと思います。
そして、あんちゃんに興味を持って「彼の次戦が観たい、応援しよう」と思ってくれる人がいたら僕も彼も嬉しいです。
あんちゃんのInstagramアカウントのリンクを貼っておきます♪(´ε` )
https://instagram.com/kous_anpon?igshid=1cikxouqmuzlm
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