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Jリーグ観戦における撮影画像のSNS投稿に関する経験と考察


観戦体験の共有

スタジアムでの体験を写真とテキストで表現しSNSでシェアすることは、現在では当たり前のこと。でも昔はそうじゃなかった。一部の人がブログでそうした記事を書くくらいで、かなり趣味性の高い行為だったと思う。それが変わったのは、やはりスマホとSNSが普及したことが要因だろう。誰もが簡単に写真を撮れ、テキストとともに自由にアップできる。スタジアムでの観戦体験が即時的に共有され、それが共感(あるいは反感)の連鎖を相乗的に呼んでいく

特に変わったのが企業の広告宣伝活動。TVや新聞・雑誌といったオールドマスメディアから、YouTubeを含むインターネット・SNSへ軸足が移って久しい。個々人へリーチでき、消費者のフィードバックやマーケットデータを直接受け取れ、SNS自体がマーケティングツールになる。Jリーグも公式アプリを通じ、ビッグデータ解析を行なって市場動向を把握していることは明らか。もはや試合前に調査回答用のアンケート用紙(とボールペン)が配られることは無くなったよね。あるとしてもforms等を使ったオンライン形式になった

それでも変わらなかったのはSNS写真投稿に対するガイドライン。そもそもSNSを明確に想定しておらず、甚だ不明確というかグレーゾーン的なポリシーだった。謳われていたのは、

  • 動画はダメ

  • 静止画は個人利用に止めるならOKで、営利目的の撮影(配信)行為を禁じる

という曖昧な表現だった。動画に関しては理解できるが、静止画に関しては様々な解釈が取れてしまうものだった。SNSを個人プライバシーの延長と捉えれば、広義の「個人利用」と解釈できよう。但し「不特定多数への頒布行為」と捉えれば、肖像権・著作権の侵害行為とも見做せてしまう危うさがあった。実際、各地のクラブでSNS写真を巡って多種多様な問題が起きていて、カメラ禁止・インターネットへの投稿禁止を明言するクラブが続出した。知る限りにおいて、

  • 写真が選手やクラブへの誹謗中傷に使われたケース

  • 写真が営利目的に使われたケース

  • 写真や動画が不正アップロードされたケース

  • 写真が不正にコピーまたは改編され、無許可でグッズ製作されたケース

といったトラブルが各地から耳に入ってきたが、当該クラブの判断・対処に任されていて、リーグ統一の明確なルール化が求められていたと思う。実際、僕なんかも「グッズを作りたい」「スマホケースを作りたい」「壁紙にしたい」から「画像データを貰いたい」とのDMがひっきりなしに届いていた。ほぼ全て丁重にお断りしていたのだけど。たとえ自分が撮った写真でも、肖像権(人格権+商業権)は選手・クラブ・マネジメント会社・Jリーグに跨って存在することは自明なこと。それをSNSに上げることは、

  • 個人利用の範疇なのか?

  • 不特定多数への頒布行為なのか?

この両者の狭間で自問自答する日々だった...

Jリーグ側の変化

そこに明確なガイドラインが敷かれることになった(2022年2月施行)

ざっと要約すると、

  • [動画] 試合中のピッチ内、及び大型スクリーンに流された試合の映像を撮ることはNG

  • [写真] 写真なら試合中の様子を撮影しSNSへ投稿OK

  • 但し、リーグまたはクラブ関係者を特定し「社会的な評価を損なわせる」行為、他者の肖像権を侵害する行為(プライバシー)、ライブ配信行為等々はNG

時代の趨勢に追従しただけと言うのは簡単だけれども、Jリーグが個人のSNS投稿を容認したことは、とても大きな変化だったと思う。しかも静止画であれば、インプレーの写真投稿も可能だと明記された。DAZNから大型の放映権料を受け取る昨今、たとえアマチュアの個人利用とはいえ試合中の写真を撮ることを是認するのは簡単ではなかったはずだ。各クラブにもJリーグにも数多くのオフィシャルカメラマンがいる訳だし。来場者数の頭打ち、少子高齢化等に直面する中、SNSをマーケティングツールとして活用したいJリーグ側の想いが伝わってくる

また近年、Jリーグ公式または準公式サイト(旧J's GOAL / 現J's LINK)がサポーターの写真投稿をフィーチャーするという取り組みも多く見られるようになった。かく言う自分も何度か写真投稿を引用リポストして貰ったことがある。たとえば、

サポーター参加型のコミュニティーサイト「J's GOAL」(現在はJ's LINKに移行)が閉鎖されて以降、Jリーグ公式が、サポーターが撮ったスタジアム風景やインプレーの写真をフィーチャーすることで、SNSを多用するファン層(特に若年層)に訴求しようと取り組んできた。それは一定の効果があったと思うし、Jリーグを盛り上げる有効なマーケティング手段だったと思う

現状はどうか

新しいチェアマン(執行体制)になり、Jリーグ公式がSNSで一般人の写真投稿を引用ポストする事例は、私が知る限り、皆無になった。J's GOALを引き継いだJ's LINKも「スタジアムナビ」以外は、一般人の投稿を掲載しなくなった。前掲のJリーグSNSガイドラインが改廃されたと言う話しは見聞しないので、Jリーグ事務局の写真・動画投稿に対するスタンスは変わっていないと願いたい。但し、年々、商業化が進むJリーグ。プロリーグであるが故、当たり前なのだけど。DAZNとの大型契約。アジア市場への進出。秋春制への移行と海外リーグとの連携。一部クラブのビッグクラブ化。いつ何時、肖像権(= 人格権とパブリシティ権)に対する考え方が変わってもおかしくないと思っている。Jリーグの価値が上がれば上がるほど、肖像権をより厳しく管理することになるのだろうと日々感じる次第。そして、それはあるべき方向性なのだろうとも思っている

気をつけていること

オフィシャルカメラマンが撮る公式写真があれば、それでいいじゃないか。そういう考え方があることは重々承知している。その上で、スタンドからサポーターが撮った写真があってもいいのではないかとも思っている。そもそも両者の撮る画角は違うので、対立したり競合する性質ではないと思っている。これ、ある意味、Jリーグ観戦文化の一部じゃないかと。だから、その文化を大事にしていきたいと思ってる。そのため、日々、気をつけていることがあって

  • 写真はファクトチェックを怠らない

    • Jリーグのガイドラインに沿っているか?

    • 観客やスタンド、スタジアム内の個人プライバシーを暴露していないか?

    • クラブ関係者や競技役員の業務上の守秘を晒してないか?

    • 選手の肖像権(特に人格権)を毀損していないか?

    • 誹謗中傷に繋がるような表現になっていないか?

  • 特に、インプレーの写真については、

    • フォーメーションやオフサイドトラップ、マークのつき方等、戦術の機微を明示するようなカットは撮らない(投稿しない)

    • その他、利敵行為に当たるような行為はしない

    • 対戦したクラブが肖像権管理を厳しく行なっている場合、相手選手の顔や姿、ロゴがはっきり映り込まないようにする

    • 写真の投稿タイミングに留意する。即時性という価値を邪魔しない。そのため、Jリーグまたはクラブ公式がオフィシャル写真をHPやSNSにアップロードするタイミングを待つ

    • 主観性と客観性のバランスに気を付ける(偏った過激な表現は避ける)

    • 公式記録・写真やDAZNハイライトを参照し、写真のファクトチェックを必ず行い(時間、場所、記録に係る部分)、虚偽の流布に繋がるような投稿はしない

写真にハッシュタグを付けて投稿する以上、選手やクラブの価値が上がるように心掛けています。何より、自分の行為がクラブやJリーグの肖像権管理規程に触れてしまって、写真禁止、カメラ禁止という方向性に舵を切られてしまうことを最も恐れています。時間や場所によっては、公式カメラマンには撮影が無理で、スタンドにいる我々サポーターにしか見えない画角もある。なので、プロの領域を犯さぬよう、それでいてサポーター目線の写真があってもいいのではないのか。また、露骨にチーム戦術を可視化してしまうことも、時と場合によっては、利敵行為になってしまうのではないか。そうしたことを日々考えながらスタジアムに通い、カメラを握り続けています。まかり間違っても、自分の行為がその他大勢のサポーターを制約してしまうようなことがあってはならない。そう常に考えて行動している

NPBの動き

以上、ここまで書いてきて、昨年末、サポーター仲間から教えて貰ったことがある。日本野球機構(NPB)が2025シーズンから、インプレーの写真についてSNSへの投稿を原則禁止するという。これはちょっとショッキングなニュースだった。動画の配信行為や静止画の商業利用はあってはならないが、たとえ個人利用だとしてもSNSへの投稿はダメとなる。NPBのリリース本文、及びそれを解説したWeb記事のリンクを貼っておく

他の記事を読むと、一般客が映り込む写真が問題になったとか、ビールの売り子さんを執拗に撮ってSNSへアップする行為が問題視されたとある。最終的に、SNSは肖像権が放棄されていない画像や映像を不特定多数へ配布する行為と捉えられたのではないか。これは非常にマズいと思っている。競技者人口、観戦動員数のいずれを取っても、野球界は規模がでかい。Jリーグファンとして、これは対岸の火事では決してない。いつか火の粉を被るのではないか。実はそう危惧しています・・・

最後に

今もまだ勉強途上。写真について、肖像権について、クラブを応援する方法について、自分のアイデンティティについて、学びの日々です。上述の記事は、10年間以上、徳島ヴォルティスとJリーグを撮り続けてきて学び得た個人の見解です。至らぬ点があれば、ご寛恕頂けると幸いです。そして、愛するクラブとJリーグをともに盛り上げていければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。

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注意

掲載した写真は、特に断りのない限り、すべて私が撮影したものです。目的の如何を問わず、無断使用、二次利用を禁じます。よろしくお願い致します。

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