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退職者が多すぎて別れが辛すぎて私もう働きたくない
また人が辞めた。
別れは寂しい、辛いけれど、新しい出発だ。門出だね。頑張ってね。
顔の小さな後輩が、渡された花束で一瞬見えなくなる。
「ありがとうございます、楽しかったです!次の職場でも頑張ります!」
イメージに合う黄色い花束を抱えて、1ミリも後悔なんて感じない、心からの満開の笑顔。
こちらの冷えきった拍手なんて何も気にしちゃいない。
もう二度と通らないであろう扉へ力強く進む彼女を見送り、ちゃんと送り出せてよかったなんて呟いてみる。
よかった。
よかった?
何がよかった?
え??何も良くないだろ!?
勤めて3年目。一体何人見送ってきた?
私を育て上げてくれたけど犬猿の仲になった最初の先輩。お前は辞めるべきじゃないって引き止めてくれておきながら自分はさっさと辞めていった無精髭上司。たった2人の部署になって、最高の相方だって周りから羨まれたのに何も相談してくれなかった同僚。
数えるのも思い出すのも嫌だ。
だって、
私を置いていくから!!!みんなのこと大好きなのに!!!!!
最近この人と上手くいっているな。最近この人尊敬できるな。仕事ぶりが好きだな。
…と思っていたら1か月後には知らせが入る。
3年目ともなると誰が辞めそうかって分かっちゃう。なんでやねん。分かりたくないわ。
冒頭の後輩もそうだ。
ある日、同僚の北海道土産「大平原」という銘菓を私はそのままチンした。
カントリーマアムと同じような包装だった。案の定、庫内に火花が散った。
慌ててストップしたので爆発はしなかったのだが、袋はしわくちゃで焦げ焦げの大平原。
こりゃ大草原。
上手い。美味いし。
紫のサテンの座布団が欲しくてその子に話したら「何上手いことやってんすかあ」ってケラケラ笑ってくれて。
またこいつも辞めんのかって。泣きながら食べて。
会社を辞めたい理由なんて山ほどあるけど、
別れが辛すぎて辞めますとは言えない。
私だってかっこいい理由で辞めたいんですよ。もっと自分の可能性を試してみたくなったとか。
実際は辞める人に引きずられてるだけ。人間好きすぎて闇の世界へ突入してるだけ。
こんなに好きなのに…。辞めてやる。私だって辞めてやるんだから。辞めて皆も病んじゃえばいいんだ。
ヤンデレ彼女?
いつまでも出せない退職届は
辞めていった人、辞めそうな人へのラブレターでもある。
重い想いは、いつ昇華されるのだろうか。
黄色が似合う彼女が言っていた。
「私、情緒不安定な重い女が嫌いなんですよね」
涙を流しながら大平原を食べる大草原女が、いつか満開のお花畑で笑って卒業の日を迎えられますように。
さあ、明日も元気に働くぞ。