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原口沙輔 (音楽家) #AVMS 応援メッセージに寄せて From 後藤正文

原口沙輔 (音楽家)

いつからか創作には実験が減ってしまった。 "実験音楽"はジャンルとして残っていようとも、もう数年前に実験し終えた事を新しいソフトで何度も繰り返しており、それは果たして実験と言えるのだろうか。 現在では使用機材を絞ってミニマムな環境、方法で制作する人間も増えている。 その小さな範囲内では今も新しい物は生み出されている。 それは興味深い進化な反面、最初から正解を出さなければいけない空気感になってしまった。 余裕のある環境を作るというのは、経済的にも日々難しくなっているが、そのままでは人々の興味は薄れ、皆フリーBGMで満足してしまう。(本気で言っている) 豪快なアイデアを持った人間が、外の人間とのコミュニケーションや収音や音色や方法を、何の障壁も無く使える環境に入って制作をした際に、頭で考えられる範疇を超える、より面白い進化を遂げると思っております。 そのきっかけがこの場所になると良いなと感じました。

 原口さん、応援コメントありがとうございます。

 これほどまでに情報化した社会では、誰しもが何かの模倣である可能性を避けるのが難しい、というか進んである種の型にハマってしまう、自分の活動においても反省すべきことだと考えています。創作のどの部分に独創性や実験性を見つけるかというのは、人それぞれですが、そうした精神はいつでも、誰に何と言われようとも、自分らしく持っていたいです(例えば、形骸化したジャンルのなかにも、テクスチャーについての実験があるように)。

 フリーBGMばかりが聴かれる社会にあっても、作り手それぞれの「自ら作りたい」という意識は減滅しないのではないかと僕は想像します。音楽はいよいよ、聴くものというよりは作るものになるのかもしれません(作るということは注意深く聴くということでもあります)。作り手たちは、きっとフリーBGMでは満足しないでしょう。というわけで、音楽は、音楽と、あるいは同等の価値があると思われる何かとだけ、交換されるようになるのかもしれません。

 場があるというのは、大切なことだと思います。私たちを思ってもみない方向に導くのは、原口さんの言う通り、関係であり環境であり、それらの集合としての場であると思います。期待に応えられるどうかは、使う人の能力にもよるとは思いますけれど、いつでもとんでもないことが起こってもいいように、頑張って準備しますね。 

後藤正文

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