見出し画像

尾崎世界観 (クリープハイプ) #AVMS 応援メッセージに寄せて From 後藤正文

尾崎世界観  (クリープハイプ)

アルバイトで貯めたお金で初めてレコーディングをした時、感動よりも、こんなものかと拍子抜けしたのを覚えている。機材もリハーサルスタジオと大して変わらないし、何よりレコーディングエンジニアのおじさんのやる気がなかった。
でも、それで良かったと思っている。少しずつ、ゆっくり時間をかけて理想に近づいていく。自分にはそういうやり方が合っていたはずだから。
ただ、バンドによってどこで成熟するかはまったく違うから、そうでないバンドもきっと数多くいる。
このスタジオは、そんなバンドにとっても必要な場所だ。
すぐに消えてしまう音を、その土地で鳴らし、残す。そうして、音楽と共に、その場所自体も作られていく。
今、レコーディングスタジオがどんどん閉鎖されている。メジャー1stアルバムを録ったあのスタジオも、もうなくなってしまった。 だからこそ、このスタジオの誕生を楽しみにしている。

 尾崎君、応援コメントありがとうございます。

 僕の初めてのレコーディングは、大学の部室に4トラックのMTRを持ち込んで行ったアジカンのDIYレコーディングでした。横浜の楽器屋で買ってきた新品のMTRでしたが、直ぐに誰かがコーラをこぼして、ツマミをいじるたびにガリガリと音がするようになってしまいました。音が良いとか悪いとか、そういう世界があることすら知らなかったですけれど、現在に続くかけがえのない体験です。

 ネットで何でも調べられる、こんな便利な時代になるなんて想像もしていなかったですよね。無知ゆえの苦労や失敗は思い出すとムカつくけれど、どれも大切な時間でした。「自分にはそういうやり方が合っていた」という尾崎君の言葉が胸に沁みました。一般化できない、それぞれのやり方や人生を思います。

 藤枝のスタジオは、出来たらからといってそういった苦労がなくなるような、チートみたいな場所にはきっとならなくて、僕や尾崎君がしたような試行錯誤を、存分にできるような場所にしたいなって思います。

後藤正文



いいなと思ったら応援しよう!