2020_0530 パラノーマンズ・ブギー EP1 有り得ない レビュー
(全て敬称略)
パラノーマンズ・ブギー EP1(2020_0530)
作 ススキドミノ
http://doodletxt.web.fc2.com/paranormansboogie1.html
総論
ムービーを用いたガッチリとしたOPで幕開けです。
キャスティングテロップもしっかりと打ち出して実に本格的。
楽曲も台本オリジナルのものと思われます。
にしても、いい声してるなこのボーカルさん。
全編において音響がしっかりしていました。
BGMや効果音のタイミングとチョイスが適切で
気が削がれるような演出などはほとんどありませんでした。
劇構成に関して強く感じたのは
多人数劇だからできるクロスオーバーやフェードなど
本当に立体的な演出がされているという点。
もし、全員で通し稽古などをやったなら是非そういう記録も
後日、特典的に公開してほしいと思いました。
ストーリーや展開は
意図的に場面を切断するような表現が多く有り
外連味たっぷりでどこか荒涼とした感のある
世界観をよりソリッドに描いていらっしゃいます。
演者さんによってもちろんキャラクターは変わりますが
性別や年齢などのキャラクター設定を前提に
台本執筆者さんはシーンごとに
音(声)の領域をある程度寄せて書いたのかな?と思いました。
それくらい、リズムよくテンポよく馴染んでいて
長い台本が心地よいスピード感で進んでい区ので
場面場面で印象や雰囲気が大きく切り替わる
ダイナミズムが生まれていると思いました。
速水 朔 / 芥川どぽぽ に関して
この方、とても綺麗でよく通る高めの声をしてます。
全編通してほとんどのキャラが非常に濃く
その影響もあってか彼のストレートな声が
一層水のように耳にスッーと入ってきます。
ボ↑ク↓だ!の響きがほんとノーブル……。
漂う上級国民感は天性のものか?
しかし後半のネットリと絡みつけるような演技では
毒蛇を思わせるような空寒さを滲ませます。
緩やかにキレる上司みたいなタイプです。
田中 新一郎 /るふに関して
速水と同時に登場するため
最初の印象を少し持っていかれこそしますが
実はこの方も、とてもよく通る上品な声をしています。
あとこの方、笑う演技がとても愛らしいです。
速水とのやりとりをする都合、相対性を出すために
意図的に少しピッチを下げて演じているのかな?と
思うような部分があったが、その声がまたとても魅力的でした。
こういう、カッコイイキャラを演じるって
多分結構プレッシャーなんじゃないかなと思うんですが
ラストの山場まで見事にかっこいい田中を演じきられてました。
演者さんの耐久力みたいなものを感じます。我が田中・・・。
棗 /やこっこに関して
少年要素がいくらか入った甘酸っぱい少女の声をしています。
冒頭、大藤のヤニが絡んだような声との対比が良いです。
セリフが進むにつれて弾むような鈴の響きが出る方で
テンポの早いセリフが実に合うように思います。
どうしてもギザギザして耳が疲れるような
早く荒っぽい応酬のなかでも(この台本は特に多い)
この人のセリフが挟まるとスピード感は失われず
柔らかさがそこに加味されてとてもいいです。
私もあの声で、よるなバカッ!って言われたい。
うっせえバーカ!でもいい。
あと、声のサイズが安定してます。
コンプをかけたみたいにセリフの音のサイズが揃っていて
今回の演者さんの中でダントツで聞きやすかったです。
荒人 / ガロに関して
意図的に低音を増強させたように聞こえる
下から蹴飛ばしたみたいな発声が
ダークヒーロー感を一気に強くさせていると思いました。
本来もっとストレートで、音の厚みでいうと
倍音少なめのやや薄めの声をしている方だと思うんですが
上記のエンハンスで他のキャラクターの濃い声と
うま〜く絡み合っています。
格闘演技はさすがです。SNKとか出れそう。
大藤 一 /ゆう兄に関して
太く、低く、少し荒く
説得力と頼もしさのある声をしています。
演技も十分な間をとっていて、それが今回の配役に
最適な貫禄を与えています。
元々の声、演技における適正
ストーリー上の配置と役割が合わさり
この方にとっての『当たり役』だと思います。
少し息苦しいような喋り方が
キツめに結びすぎたネクタイを連想させます。
何乗ってんのかな。ベンツかな?
ベントレーあたりかなぁ。ジャガーかもしれない。
栄 友美 / 机の上の地球儀に関して
意図してかなり若い声で演じているように感じました。
前半から中盤にかけて
パラノーマンズの中で、あえて自身の声は
キャラとして耳につかないように
少し抑えているような控えめな演技が印象的でした。
苦しそうな声で演技するととてもいいですね!(個人的なアレ)
キャンキャンと鳴く小型犬を擬人化したような演技でした。
棗とは逆でテンポが早くなると鈴のような、
子犬を思わせる軽やかさがなくなって、棘が出てきます。
それのため、栄と棗のやり取りは性別上声の高さが近くても
カブるようで全くカブらない絶妙なバランスです。
村田ヒロタカ / ウルヤに関して
なんとも言えない神経質さを孕んでいて
どこかスリリングな文学青年を思わせます。
「有り得ないことが起きたんだッ!」
語尾が内側に流れ込んでくるような
独特の舌の巻きがあってとても癖になります。
ドリフトするように荒ぶっていくセリフ廻しが
最高に似合う、今回の上演で私が一番ハマった方でした。
後輩・ハンター・N / オルット3に関して
大変落ち着いた声をされていて
ナレーションがとても聴きやすかったです。
長丁場の口開けと幕引きにとてもふさわしいと思いました。
ミスも非常に少なく、語り部としてめちゃくちゃ安定してますね。
チョイ役の後輩になった瞬間なんともいえず
チャラくなるのはさすがだなーと思いました。
にしてもこの人のナレーションは本当いいですね。
なんだろうか、この上質な香水みたいな感じは。