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「トールキン 旅のはじまり」

原題:Tolkien
監督:ドメ・カルコスキ
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2019年 111min
キャスト:ニコラス・ホルト、リリー・コリンズ、コルム・ミーニイ、デレク・ジャコビ、アンソニー・ボイル、パトリック・ギブソン、トム・グリン=カーニー

 生徒らに「指輪物語は必ず大人になる前に『一度』読んでおいて。そして、大人になって再読して欲しい。」と折に触れて話していた。そう、数えきれないほど何度も。しかし、作者について語ることが不思議となかった。
 「指輪物語」が作品として完成し、そして、その中で十分語られている場合敢えて作者について知る必要がなかったのだ。

 彼がアフリカで生まれたことなども全く知らなかった。銀行マンだった父親の死でイングランドに戻るが、母もまた貧困生活の中病死する。

 カトリック教会は信仰だけの拠り所ではなく信者の生活を支える面もある。母の死後、神父様は長きに渡り兄弟を支援する。
 「ノブレス・オブリージュ」があるイングランド(ヨーロッパ)で兄弟は引き離されることなくある婦人の元に神父様を通して預けられ、そこから学校へも通う生活が始まる。決して、丁稚奉公のように労働は伴わないが精神的自由に制限があったことは想像に難くない。

 上の写真でも伝わるよう「小生意気な」みたいな感じがしないわけではないが、こうして彼らは置かれた階級にあった身のこなしはじめ無形のものを学び、小さな紳士から本物の紳士へと成長していくのだろう。

 親から受け継いだ階級に拘泥せず友情が結ばれていくさまは、本当に美しい。大人の利害が生じる世界前の純粋な時に結ばれることの意義も大きい。
 そして、彼ら四人は卒業後もそれを育てた。

 言語は音だけではなくそこに重層なる意味を持つ、と教授が語る。同じことをガールフレンドがもっと簡易に話すシーンがある。どちらにしても、言葉を丁寧に扱える人がこの作品には溢れている。

 ロビン・ウィリアムズ主演「いまを生きる」1989年の作品が生徒・学生の姿に重なる。学んでいく、探求していくことの楽しさ。
 バイトの間に講義を挟む、単位が取り易い講義リサーチはしっかりとする、リポートはコピペで誤魔化す、そうしたどこかの国の大学生とは全く違うアカデミックな本来の大学が描かれている。(勿論、現在の大学の姿ではないがそれでも某国とは違うだろう)

 トールキン氏が経験したことは幼少の時から第一次世界大戦での最も激しかったと云われるソンムの戦い、どれもが当然だが彼を作り上げ、それは、彼の「指輪物語」に集約されていることがこの作品で伝わる。
 映像も無駄がなく、リフレインされる絵にもくどさは感じられず効果的だった。「指輪物語」を知らなくとも、一人の青年の話として十分に楽しむことが可能。是非、ご覧ください。
★★★★


 

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