「天使にショパンの歌声を」
原題:La passion d'Augustine
監督:レア・プール
製作国:カナダ
製作年・上映時間:2015年 103min
キャスト:セリーヌ・ボニアー、ライサンダー・メナード
先週シネスイッチで予告を見ていた。今日は悲しい話、ミステリー、社会派といった、画面を観ると同時に自身の回路が動く類の映画は観たくなくて音楽ものを択ぶ。事前にこの映画案内を読んでいなくて正解だった、が感想。針小棒大なこれでも?という膨らませた案内記事から映画館へ行っていたなら落差に私の評価はかなり低くなる。
1960年代、シスターの修道服からでも見て取られるように因習や男女差が明確にある時代が舞台。改めて映画を観ながら黒の修道服が意味するところを後半のシーンと絡めて考えてしまう。全てすっぽりと覆い隠す修道服は外から見ると窮屈そうに見えても身に着けている彼女らからすると「世俗」から身を守る鎧。個を、欲を、世俗から繋がるものを断ち切って「聖」の世界に入る。
個性的なシスター役の面々は日本では知名度が低くても演技で全体を支えて、バイプレヤーとして生徒役の少女たちとバランスを取る。
近代化が進み始めた社会の中で田舎の修道院経営私学が存続の危機に見舞われる。音楽を通しての成長、教師と生徒の結びつき等謳われているが、映画には深みはない。話は至ってシンプル。少し昔の寄宿舎生活の描写に音楽が寄り添う程度で観に行くほうが裏切られない。
流れるクラシックの音楽の授業で聴く類で耳に馴染んだものばかりだ。只、ピアノを弾く手元からそのまま引いて奏者全体を撮ることから解るよう全ての演技が本人らによるもの。「グロリア」の合唱のシーンはもう一度聞きたいほど美しかった。
後で調べてみるとアリス役ライサンダー・メナードは5歳からピアノを習い始め、6歳でコンテスト出場。本格的にピアニストを目指してモントリオール音楽院に入学後、インターナショナル・クレシェンド・コンペティションにて優勝し、カーネギーホールで3度演奏。9年連続カナダ音楽コンテストのファイナリストとなった他、2012年には“カナダを代表する未来の音楽家30人”のうち1人に選ばれている。
四季の移り変わりを丁寧に追い、映画全体にクラシックが流れる。シンプルに音楽を楽しむstanceで観ては如何。
★★