「テッド・バンディー」
原題:Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile
監督:ジョー・バリンジャー
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2019年 109min
キャスト:ザック・エフロン、リリー・コリンズ、カヤ・スコデラーリオ、ジェフリー・ドノヴァン、アンジェラ・サラフィアン、ディラン・ベイカー、ブライアン・ジェラティ、ジム・パーソンズ、ジョン・マルコヴィッチ
「シリアルキラー」の言葉を作らせてしまった猟奇殺人者の話。
と、この程度で観に行った。そろそろ上映館も少なくなっているが、これから観に行かれる方は何も情報を入れずにご覧になることをお勧めする。
R指定が入り、尚且つ凄惨な殺害方法とその犠牲者数を知って観た場合、冒頭からしばらく続く生活に違和感が生じるかもしれない。
この生活は人知られず内に改心した後なのか、それとも、まだ同時進行でバランス棒の一方には絵に描いたような生活、もう一方には殺人が繰り広げれたのかは最初こそ悩むが、ほの少しずつ彼本来の姿を着物の裏地が歩いていてちらりと見えるそのような感じで見せていく。
リヴィングで寛いで音楽をかけている時、多分、演技に隙があり彼の地が出る。流れていたオペラに対してリズが明るい曲にして欲しいとリクエストすると見事な程リズが求める世界を構築し直す。
こうしたことが少しずつ積み重ねられていくと、次第にテッドの影が濃くなっていく。
一方、法廷にまで出されても彼は一向に精神的に参っている様子を見せるどころか、裁判長が嫌味で発言するように、それは彼にとってショーの始まりに過ぎない。途中、ふがいない弁護士を法廷中解雇し自身が弁護士までこなしていく。
TV中継されたこの法廷は、まさしく彼の舞台。多くの目があるほど、彼には心地が良かったのか恐れる姿は微塵も見せない。ここまでくると、もしかすると彼は冤罪なのかと観ている側が考えてしまうほど。
おそらく、その為にも殺人シーンは作品の中盤より前には挟まなかったのかもしれない。
刑務所からの電話のシーンも印象的だった。もはや目の前に人が居ない状況では相手を繰ることが出来なくなっていく。
最後まで解せなかったのは、IQ160もありながら二回の脱獄と歯型を証拠に残したこと。多くの女性を殺めながら、何故リズとは1969年から1976年投獄されるまで彼にとっては極めて長い関係が続いたのか。
この作品ではソシオパスの彼を撮ってはいない。彼と関わった女性二人の姿を通して、結果的にはテッドの論外的な異常性を浮き彫りにしていた。
この最後のシーンまで目が離せなかった。
*エンドロールも必ずご覧ください。
★★★☆