日本の東西南北制覇を目指して:波照間島へ⑦町の風景が見せる時間の速度
普段の生活では見上げる空のどこかには必ず電線が横切り、そして、空の一部は建築物で欠けている。タイトル写真のように此処に虹が架かるならば始点と終点が見える広い空間はない。
その代わり、と比較も変ではあるが駅のホームに立つと4,5分に1本で電車が入ってくる利便だけは優位な場所に住んでいる。ほんの少し待つなら次の電車がすぐに来ると分かっていながらも、それでも、予め乗り継ぎ検索に近い乗車を目指す性(さが)は滑稽でもある。でも、それが普段の生活。
波照間では道路に信号機が一機も存在しないが、それが必要とされない結果が、ただ、ただ、羨ましい。
波照間を事前に調べていた時に、「島内全てのカフェを短時間で回ることは不定期な開店と個々の営業時間がある為に難しい」とあった。実際に島を訪れると確かに開店している日や営業時間が圧倒的に短く見えるのは確かだが、それは、普段急いた生活をしている側から見える風景であって島時間では問題は無いのだろう。
旅行者は島が狭い故に、他に観光施設が存在する訳でもないから全部カフェを回ってみようと考えることに想像がつく。訪問前は可能に見える計画なのだ。
我が家には門扉があり、隣家や全面道路の間には明確に境界線を兼ねての塀がある。それに対して沖縄での家にはヒンプンと呼ばれる緩い塀がある。
沖縄でよく見かけるシーサー・石敢當・ヒンプンは中国から伝来している。ヒンプンは中国語の屏風(ピンフォン)から由来しているそう。
ヒンプンは外部からの目隠し機能のほかに魔物を跳ね返す魔除けの役割があったらしい。沖縄では悪霊や邪悪なものは家に対して真っ向から飛び込んで来るという言い伝えがあることからそれを入口ではね返す役目。
場所がら台風の風よけにも役立っていたという研究は納得できる。面白いのは、男はスージ(路地)からヒンプンに向かって右側、女は左側へと、人の動きを振り分ける役割もあったそう。
そのヒンプンの材料や造り方は、1枚岩を使用、石垣や瓦石垣、竹垣、サンゴ石灰岩やアワ石を積み上げたもの、ガジュマルといった植物を使用したものと様々。
建築の背景にある文化を知って見ると、単なるインスタ映えの風景を超えてこころに映る。
町(外部)と家(内部)を緩やかに繋げるヒンプンがまだ存在している波照間の土地は刹那的だが観光客をもその世界とそこに流れる時間に組み込んでくれる。
広さに比例して町が開発され一般的な便利な生活が形成されたとしても、利便や物品の豊富さが豊かさと同意語ではない、おそらく。
また、一時滞在者の通過する旅行者には見えない、分からない島で暮らす大変さは其処にある。それを踏まえても、雑多な街から訪れる私たちに少しだけ分刻みの日常を忘れさせてくれた小さな島の大きな自然とゆるりとした時間はありがたかった。
日本最南端記念碑だけではない波照間訪問だった。
次回はお天気に恵まれますようにと祈りながら再訪問しそう。