「ゴッホ 最期の手紙」
原題:Loving Vincent
監督:ドロタ・コビエラ
製作国:イギリス・ポーランド
製作年・上映時間:2017年 96min
キャスト:ダグラス・ブース、ロベルト・グラチーク、エレノア・トムリンソン、ヘレン・マックロリー、ジェローム・フリン
美術館で絵画を観る時はその「静止した絵」の中に入り、風を見つけたり、絵に封印された音を立ち上げ聴こうとする。この映画はこうしたいつもの絵の楽しみ方と真逆、寧ろ日頃の願いが叶ったようにゴッホタッチの「絵が動き」物語る。
公募で集まった125名の画家が62,450枚の絵を描く。この中には古賀陽子さん(31・西宮)がいらっしゃる。インターネットで応募後、ポーランドで採用試験を受ける。1次は3日間、2次は研修を兼ねて3週間でゴッホ調やアニメにするポイントを教習しスタジオに与えられた個室で作業に入る。
採用後は作業時間の規定はなく、古賀さんの場合毎日約10時間前後を充て同じ絵をベースに「一コマ描き終わると動かす部分の絵の具を削り、描き直す」その繰り返しを行ったそう。描いた580コマが映画では僅か1分弱と伺うだけで如何に忍耐を必要とする作業だったかがみえる。
絵の登場人物に似た俳優の方々が実際に演技をし、それをキャンバスに投影しゴッホタッチの油絵に仕上げていく。
少し前の映画「アバター」を思い出した。仕上がりが油絵であっても其処には俳優の演技があるためアニメショーンとは全く異なり妙なリアル感がある。
スクリーンでは油絵が動き会話しているのだけれどもそこに実在を感じる不思議。
この感覚に慣れるまではしばらくは夢の中にでも入ったようだが、気が付くとダグラス・ブース演じるアルマンと共にゴッホの死の真相と最期の想いを辿るミステリの世界に入っていた。
ゴッホの絵はこれまでに観ている。ゴッホという画家も知っている。エキセントリックな耳に関わる騒動もまた知ってはいるが、その他に付け加えることはごく僅かだったのだと映画を観ながら知らされる。
我家にはこの「夜のカフェテラス」のポスターがある。
画家は絵で表現するのであれば、絵が全てではある。しかし、画家の想い、思考を知ることがある時は絵と共鳴する時の手助けとはなるだろう。
改めてゴッホの死に関する事柄を調べていくと確かに映画でも触れられているように辻褄が合わない点が多々ある。これだけでも映画が出来そうな謎だ。
最近の映画としては96分と短い部類。出だしは多少もたついた感は否めないが興味深い体験ではある。終映が近づいているのでよそしければ映画館へ足をお運びください。
★★★
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?