ポルトガル資料1

5.やわらかな印象

 メトロ「Aeroport」から乗車し「Saldanha」で乗り換え「Picoas」で下車、400mほど出口から真っ直ぐに歩き上り最初のホテルReal Palácioへ向かう。迷うような道でもないのだが、ひっそりとしていて五つ星のホテルがあるような道に見えず二人して立ち止まってしまう。まだ、市内地図も購入していない時点の為、手元にあるのは予めダウンロードしていた地図とポルトガル観光案内本のみ。地元の夫人が道案内をしてくださりとても助かった。
 つくづく考えるのだが、私がこの日本で夫人と同じことが出来るのだろうか、と。相手はどう見ても東洋人でポルトガル語が話せるようには見えない。おそらく夫人自身は英語も完璧に話せない。夫人と私たちとの間に共通言語が殆どない状況で案内役を買って出る。簡単なようで日本人の多くが観光で訪れる異国の人々にしていることではない。
 東京オリンピック開催に向かい様々な準備が始まるが、実はハード面に関してはお国柄で片付く類で、大切なことはこの夫人の様に迎える側のこころなのだろう。「おもてなし」ではない。困っている人に手を差し伸べる自然な振る舞いが必要。道案内はこの日に限らず、他の日にも相手の方から近づいていらして教えていただく場面が幾度もあった。
 ポルトガルでは明らかに信号が少ない。その代わりに車が停車し歩行者を渡してくれる。日本では仮令横断歩道で立っていても車は止まらないことに慣れた身には、これも印象に残る温かさだった。

 最初に宿泊するホテルは二泊の内一日目が到着日の宿泊だけであった為、特に重要視もしていなかった。ホテルの立地場所は良く確かにメトロ最寄駅から400mととても近いのだが景観地区でもなく華やかな場所とは云い難く、外観も玄関を探すほど派手さがない。全ての印象が最初は薄かった。
 しかし、館内は廊下から室内にいたる全ての内装に合板ではない天然木の温かみある質感がやさしい。ホテル全体に広々と敷地に余裕があるわけではないのだが、関わるものが絢爛豪華の類ではなくとも品があり時間を過ごすほどに良さが伝わってくる。
 朝食についてはMarriottで楽しみだったオムレツの一人一人の好みに合わせて具材から焼き方まで調整してくれる一コマは無かったが、給仕の方々が無駄の無い動きでサービスする姿が心地良かった。彼ら、彼女らの笑顔がまた素敵だった。静かなホテルにこんなにも宿泊している人々がいたの、という人々とヨーロッパ映画でよく見かける一場面の朝を共有した。ロビーをはじめ働いている方々の親切さもこれ等と質を一にしており、二泊した結果、五つ星だったのだと納得する。

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