「アイ・イン・ザ・スカイ」
原題:Eye in the Sky
監督:ギャビン・フッド
製作国:イギリス
製作年・上映時間:2015年 102min
キャスト:ヘレン・ミレン、アラン・リックマン、バーカッド・アブディ
制作:コリン・ファース
俳優アラン・リックマン氏の遺作、又、ヘレン・ミレン女史のこの二方の出演で内容はともかく年末から観ることは予定していた。話は予告を越えることはないだろうと考える通りに予告が或る意味全てではあるが、よくもスイッチを握るか否かの瞬間までの世界を100分持たせた。
助演である工作員役バーカッド・アブディの演技が地味ながら光る。ソマリヤ出身の彼が映画の舞台であるアフリカの空気を一番解っていることもある筈。工作員として彼の行動如何で作戦の成功が左右されることもあり緊張感が高まるシーンを担う。映画の主役が会議室、指令室に居るのに対して唯一戦場で動いた人物でもある。ドローンの限界をカバーするのはそれも人でしかない。安全なところで何もかもが決して進んではいないのだ。
クイーンをはじめ強い女性を演じることが多いヘレン・ミレン。今回も直情的な大佐役を年齢(71歳)を感じさせず、寧ろ年齢を味方にした女性として毅然と演じており同性として見とれるほどだ。
映画の中で部下が「Yes, ma'am」と答える部分では大佐を越えての信頼があるのかと勝手に解釈、また「Yes, Colonel」は承服しかねても従わざるをえない部下の心情表現だったのか。使い分けが映画の世界だけなのか実際の軍でも聞かれることなのか気になる。
「ドローンだから悪なのか」と単純な話ではない。ドローンでなくとも第一次世界大戦のように「人と人」が対峙する戦争ではなくなった今、爆弾を積載した乗り物に人が実際に「居る、居ない」に大差は無い。それを繰っているのは人であることを忘れてはいないか。既に人の手に血が付かない戦争がこの数年悲しいことに展開している。
軍対政治家と単純に描かれているのは映画としては限られた時間内で説明し易い為であって、対立の要素は英米連合に対し内戦地に住む人との関係もあろう。どちらに立つか、で様相は変わる。死が生まれる戦争にきれいごとは存在しない。責任回避で繰り広げられる場面は映画だからこそ他人事で観ているが現実では「誰かの決断」で「何処かで人が命を失っている」。大義名分という言い訳の元に現時点も戦場がある。特別な世界が描かれているのではない。
★★★☆