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「レジェンド 狂気の美学」
原題:Legend
監督:ブライアン・ヘルゲランド
製作国:イギリス、フランス
製作年・上映時間:2015年 131min
キャスト:トム・ハーディ、エミリー・ブラウニング、タロン・エガートン
トム・ハーディ自身が製作総指揮者に名を連ねていることでもその熱さは十分に伝わるが、それら情報よりもこれまでのどの映画でも「演じ切ること以上の演技」を描いて見せた彼が『一人二役』を成すことに興味惹かれ、裏切られることはないだろうと映画館に期待を持って足を運ぶ。
ギャング映画ではつい最近j・デップが「ブラックスキャンダル」で同じように実在の人を演じた。しかし、この二作品は比較しようがない。国も違い、時代背景も1960年代に対し1975~95年、又ギャングの切り口が異なる。
映画が始まってしばらくはイタリアマフィアものでも観ているような印象があった。表面の華やかさ、煌びやかさとは対称的な暗闇の部分。J.デップの演じるギャングは何処からどう見てもギャングそのものでこうした作り物であっても似非華やかなギャングは描かれていない。映画後知るがクレイ兄弟は東ロンドンに伝わる神話のようなもの。世界が注目するファッションリーダーと言われるほどおしゃれだったクレイ兄弟の衣装は、禁酒法時代のシカゴのギャング、アル・カポネをイメージされていたと知り、納得。
双子を演じ分けるに際して髪型や、衣装ではイタリアのデザインを好んだというレジナルドのシングルスーツ。一方ロナルドのスーツは、写真資料や自伝本をもとにアル・カポネが愛用したダブルのスーツを再現でsymbolicにはなっていたが、次元はそこではなかった。
俳優たちは「そっくりさん」になろうとしているのではない。それは、一見全くスティーブ・ジョブスには似ていないマイケル・ファスベンダーがそうであったようにその役を演じ成り切る彼ら。
最初に戻るが、今回の映画の凄さは彼の二役。つまり主役を「同時」に二人分演じる。双子の兄弟部分での演技は当然多く、彼は「自分の演技」に「自分で返す」ことになるのだ。
お見事の一言。最初の内こそ「二役」は大変だろう云々と観ていたが、その内に「二役」を忘れさせるトム・ハーディの演技。性格を演じ分けていて、まるで二人の役者が居るようだった。
★★★★
*恵比寿ガーデンシネマは好きな映画館だった。上映作品や立地が好みだったので4年前の閉館は残念で仕方なかった。この春、再び開館となりうれしい。