「ボーダー 二つの世界」
原題:Grans
監督:アリ・アッバシ
製作国:スウェーデン・デンマーク
製作年・上映時間:2018年 110min
キャスト:エバ・メランデル、エーロ・ミロノフ
税関職員ティーナは、彼女の人並外れた嗅覚を生かし税関という水際での勤務をこなしている。その臭覚は税関で活躍する麻薬探知犬と異なり、人が何かを隠している罪悪感や羞恥心といった感覚をを嗅ぐ能力と設定されている。
「映画」という扉を既にくぐっている所為か、税関で他の職員と立っている姿でさえ予告で謳われているような彼女の異形さに対し不思議と驚きがなかった。
何をもって異形というのか。彼女が何の問題も生じず勤務を遂行するのであるなら、それでよい筈。
特殊メイクに時間を要し、時間短縮の為に二人で取り掛かっても毎回3時間かかったそう。演技前からお二方には負担がかかっての作品。
毎回、ネタバレは避けて記録することを心掛けている。今回は、その点がとても難しい。北欧ミステリーと案内されているが、ミステリー要素と捉えるよりもファンタジーに近い。ミステリーにしてしまうと雑に扱われている事柄の後始末緩さ加減とバランスが取れない。
只、ファンタジーと云い切るにはかなり際どいシーンや虫が苦手な人にはキツイシーンが随所にある。それでも、全体に北欧のトーンが落ちた森の質感が画面から伝わってくる。
彼女らが一糸まとわず森を走り回るシーンをどう観るのか、捉えるのか。
そもそも、一般に映画世界ではあまりに俗に云う美男美女、それも均整の取れた体形の人々が溢れ、現実社会とはかけ離れている。不自然な方がどちらであるのかは自明だ。
人間側から見る動物と動物側から見る人間にどのような差があるのか。美醜を何によって判断しているのか等々。
この作品自体がリトマス試験紙のよう。
★★★