源平咲き
先月初めのこと。耳を塞いで(=音楽を聞きながら)歩いていたものの、一瞬静けさの空間に立ち入った感覚があった。
確かに、視界の中に梅の木があった。水仙の花と同じように寒さの厳しい季節がとても似合う花だ。
梅の木だけの存在であれば、季節柄様々なお宅の庭先に咲いているのを見ている、実は我家の庭にも白梅がある。
足を止めてしまったのは、どう見ても紅白の梅ではあるが、根本は一本の木。無意識で歩いていても、音楽を聞きながら五感の一つを閉じていてもセンサーにかかるものはあるのだ。
帰宅して調べてみると、一本の木に二色の花を咲かせている状態を源平咲きと呼ぶそう。*源平の由来は皆さん想像がつくことの為割愛。
最初は接ぎ木なのかしら、と見ていたが違っていた。
赤の色はアントシアン色素から作られるが、加えて他に多くの酵素を必要とする様々な過程が加わる。その内の酵素が一つでも機能しない場合は赤い色は生まれず白い花ままという仕組みが源平咲きを生む。
紅梅、白梅と勝手に呼んでいるが色を醸し出す舞台裏など考えもしなかった。因みに、源平咲きが見られるのは梅だけではない。
時間を計ってのウォーキングや、誰かとおしゃべりしながら通り過ぎていたなら気付きもしなかったろう小さな風景。形が無い何かが教えてくれたような空間とひと時だった。