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「たかが世界の終わり」

原題:Juste la fin du monde *It's Only the End of the World
監督:グザビエ・ドラン
製作国:カナダ、フランス
制作年・上映時間:2016年 99min
キャスト:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティアール、ナタリー・バイ 

 カンヌでグランプリを取ったことよりもこの27歳新鋭監督の元に集まった俳優陣が気になって択ぶ。
 劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「It's Only the End of the World」が基になっていることからも分かるように空間の広がり、奥行きよりもこの映画で描かれるものは明確に「人」だ。カンヌでも評が分れたとは云うが日本の反応はもっとこの種類の映画に関しては厳しいに違いない。しばらくの空白12年を空けて次男が意図あって帰宅する。その午後の数時間を描いた作品。背景の説明は殆ど無いように見えるが渡されていくpieceは、それが音楽であれ、風景であっても十分に補っている。説明過多な邦画を好む人々にはいつ核心が来る?と待ち続け、終わりのシーンがそれも唐突に来るように映る可能性がある。

 家族物だから和気藹々とした映画とは限らないし、夫々の立場が例えば母親が母親然とする約束事もない。ある家族の「ある日のある時」を描いているに過ぎないこともある。
 過去幾つかの消化しきれないことがあり、それを抱えたまま最初は取り繕った家族であろうとするところから始まる。しかし、段々とメッキは剥げていく。少なくともこの日の家族は夫々がどう振る舞うべきかと苦悩する。

 こうした「肩越し」のカットが多用されている。鏡がなければ自分のこうした姿は見ることができない。「相手からは見えない顔」だからこそ此処に心情が溢れているのだろう。殆どが胸から上の表情が撮られていく中でスサンネ・ビア監督を思い出してしまう。

 冒頭のこのシーンが使われているのは、まさしく彼の心の中を描いているからだ。音楽の使われ方、過去と現在の描き分け等、映画らしい作品だった。「舞台ではないわよね、これは映画よ」と納得させる。
★★★★

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