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「三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実」

監督:豊島圭介
制作国:日本
製作年・上映時間:2018年 108min
キャスト:三島由紀夫、芥正彦・木村修・橋爪大三郎(東大全共闘)、篠原裕・宮澤章友・原昭弘(楯の会1期生)、椎根和(平凡パンチ編集者)、清水寛(新潮社カメラマン)、小川邦雄(TBS記者)、平野啓一郎、内田樹、小熊英二

 1969年5月13日、東京大学駒場キャンパス900番教室で行われた作家三島由紀夫と、東大全共闘との伝説の討論会様子がTBSに残されていた。約50年の時を経て当時の方々からの証言も交えてドキュメンタリー作品に仕立て直される。
 1968年に大学の不正運営等に反対した学生が団結して始まった全国的な学生運動を全共闘と呼ぶ。特に最も武闘派と言われたのがこの作品に登場する東大全共闘。

三島由紀夫4

 とても偶然にこの討論会を映画化される前にYouTubeで観ていた。PCの小さな画面ではあったが圧倒されてしまった。

三島由紀夫2

 私はこのドキュメンタリー作品で描かれる同時代の人間ではない為、作品から受け取る温度には違いが生じるのかもしれないが、それでも展開される言葉による構築のよそ見する隙を許さない濃密な世界は伝わった。
 初めてこの記録動画を観た際、三島の紳士然とした振舞いと自身が手に入れた諸々で若者らを力でねじ伏せようとする姿など微塵も無く、丁寧に穏やかに学生らに耳を傾ける姿が印象的だった。

三島由紀夫1

 新潮社カメラマン清水寛氏がお撮りになったこの一枚が好きだ。
 招いた東大全共闘側は言語でのボクシングよろしく戦う気満々だったろうが、三島は彼らのお誘いを楽しく受け取り敵地ではなくサロンにでも訪れた雰囲気を漂わせている。
 だが、静かな闘志とでも云おうか三島はこの学生1000人に講義でもするかのような姿勢で、最終的には自身が考える世界を理解してもらうつもりだったように映った。

三島由紀夫3

 繰り広げられたのは、論じ易い「左翼対右翼」の構図ではない。互いが理想とする世界への熱情については同士であるとの共通項が亀裂を作ることない討論会を維持した。TVでみかけるような相手の話を真剣に聞かず、自分の主義主張だけを展開する醜い絵はなかった。

 三島も学生も、彼らが使う言葉は時には矛盾という言葉の文字通りに攻撃もし、自身を守る盾になる。言葉の意味を明確に知り、有効に使う手立てを知っている。同じ日本語が語られているにも拘わらず、羨ましいほどの異次元空間。

 作品としての評価について:素地としてあったこの記録動画が時代を映し、尚且つ、残し見事だった。三島由紀夫に関しては著書でのみ知るしかなかったところを今後彼の読書をする際の多くの知識を貰ったところは大きい。今回の星の数は、映画作品としてではなくあの駒場900番教室を埋めた世界に対してになる。
★★★★

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