「フォードvsフェラーリ」
原題:FORD V. FERRARI
監督:ジェームズ・マンゴールド
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2019年 153min
キャスト:マット・デイモン、クリスチャン・ベイル、トレイシー・レッツ、カトリーナ・バルフ、ノア・ジュプ
1966年ル・マン24時間耐久レースにおいて絶対王者として君臨しているエンツォ・フェラーリ率いるフェラーリ社に挑戦するのは、新参者であり且つ経営が行き詰まっての打開策として耐久レースに打って出たフォード社。
耐久レース参加への蓄積など皆無、ノウハウも持ちあせていない状況に加えその準備期間さえ十分ではない中で、アイアコッカは敏腕レーサーと云われながら心臓病で引退したキャロル・シェルビーと自動車整備工場経営且つレーサーとして活躍していたイギリス人ケン・マイルスを迎え敵対するフェラーリへの立ち向かう。
アイアコッカがこれほどこの作品中で観られることは予想外だった。だが、タイトルを考慮すると単にレースだけを描くわけではないことは確か。
若干ながら車やアメリカ経済に興味が無い人に概略程度知らせる意味でフォード内部事情が挟まれる。
ケン・マイルス氏を知らない状態で作品を観ている為、最初、前作「バイス」においてディック・チェイニー副大統領役作りで体重増加の後、今度はおそらくかなりの減量した結果での頬がこけたその姿に驚いてしまう。
レース中はヘルメット姿で顔だけで演技するしかない。
このレースシーンについてはマニアックな方からは甘さを指摘される部分もあるようだが、そもそもレースシーンの再現をテーマにした作品ではない為、私は十分に楽しんだ。実際は、目前を瞬時過ぎ去るレースをこうしてスローモーションのように観られるだけでも楽しい。
息子との関係が随所に描かれている。
1960年代当時のレーサーが命懸けの仕事であることはピーターも承知している。父の仕事仲間に「事故で燃えることがあるよね?さっき火がついていたよね?」と真剣に問う。
父ケンは単にレースの話ではなく、レース運びを人生でもあるようにピーターにこども騙しでなく語る場面は印象に残る。
アポロ月面着陸がこの作品と重なった。
制御、車体素材、レーサーを守る諸々何もかも命を託すにはあまりに頼りない世界でありながら、チーム力以上にレーサーのテクニックが光る時代だった。
この出会い(上の写真)が通奏低音のように流れていた。この時にケンが投げたスパナは作品のキーにもなった。額に入れられ大切にされたスパナは最期に帰るべき所へと戻っていく。
W主役のこの作品では、描かれる二人の友情そのものと同じようにマット・デイモン、クリスチャン・ベイル両氏の演技はバランスよく配分がされる。互いが相手を引き立てることでお二人が共に主役に成り得た。
★★★★