一週間かけて鳥取を訪ねる:⑤観音院~わらべ館~湖山池
鳥取東照宮から観音院までは車で移動するまでもない650mの距離、徒歩でも13分程度。地元の方は季節によっては鳥取東照宮から樗谿(おうちだに)公園の流れで花や緑を楽しんでいらっしゃるのかもしれない。
観音院の庭園は江戸時代に作られた池泉鑑賞式庭園。日本庭園で見られる背後の風景を取り入れた借景はこの庭では芝生の傾斜が遠くの山に続くように見えるよう配置されている。
庭自体は決して広くはないが、つい先ほどまでいた生活空間を忘れさせるような静けさが心地よかった。
まさか鳥取でキリスト教絡みの遺物に会うことは想定外だった。
観音院庭園向かって右奥に切支丹灯篭が在る。
鳥取市には5基の切支丹灯篭が興禅寺・観音院・一行寺・西町・東昌寺ある。花崗岩で作られた織部灯籠の切支丹灯篭は潜伏切支丹がひそかに祈ったもの。江戸時代に作られた花崗岩製の灯篭は本来、台座、棹、中台、火袋、笠、宝珠の6部で成るが、指定の灯篭は、その棹石だけを残したものと考えられている。
拝観料650円でお抹茶と茶菓をいただける。街中に四季の移ろいを楽しむ場があって羨ましい。
観光資源のリストに入っていなければほぼ100%に近い確率で足は運ばなかっただろうわらべ館。
平成元年市制施行100周年記念事業として開催した「‘89鳥取・世界おもちゃ博覧会」を背景に、平成7年7月7日に開館した童謡・唱歌とおもちゃのミュージアムとして造られた。
記念事業での創設では単なる箱物で終わってしまうが、「故郷」を作曲した岡野貞一、言文一致唱歌を提唱した田村虎蔵、大阪音大を創立した永井幸次と音楽家を鳥取県が輩出していることを考慮すると意義はあるのだろう。
童謡等に興味がある人ない人で此処を訪れるか否かは明確に分かれる。
実際の印象は観光施設というより地域の児童館の空気。
私はわらべ館よりも昭和5年に竣工された旧鳥取県立図書館の建築についての小さなコーナーが興味深かった。
ひたすら合理性や利便性を追求した無駄がない現代建築ではなく、表現という遊びが随所に見られる柔らかなフォルム。私だけの服を纏うような昭和初期の建物をしばし楽しむ。
鳥取城から始まった二日目は汽水湖の一つ湖山池が最終地。
湖山池の面積6.9㎡は山中湖を超えた広さ、又、池という名では日本最大という。その広さのお陰で鳥取城本丸からも湖山池は見える。
平成26年12月 環境省 水・大気環境局 水環境課「日本の汽水湖 ~汽水湖の水環境の現状と保全~」によると、『「汽水」とは、海水と淡水の中間の塩分を持つ水のことをいい、その水を湛えている湖沼を「汽水湖」といいます。 日本には面積4km2以上の湖沼(ダム湖含まず)が53湖沼あり…』と説明されている。これら湖沼の分布は半数近くが北海道に存在し、次いで日本海側、東日本の 太平洋側に見られる。関東以西の太平洋側では、浜名湖以外に大きな汽水湖が見あたらない。
鳥取県では湖山池と東郷池が汽水湖に該当する。
池中央にある青島に架かる橋を渡るとキャンプ場をはじめ公園を中心に整備され、市街地から近い休日を過ごす市民の場になっているよう。観光資源と呼ぶには厳しい印象を受ける。
但し、汽水湖の成り立ちを含めた山陰海岸ジオパーク繋がりで見る場合は外せないかもしれない。