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言の葉採集 降りみ降らずみ

 散策中にきれいな花を見つけて足を止めてしまうように、本を読んでいる時も言葉や表現の美しさに読みが止まってしまうことがある。
 以前に紹介したアーサー・ビナード氏の別のエッセイを読んでいる時にタイトルにある「降りみ降らずみ」という言葉に出会う。

 降りみ降らずみ
 この言葉の意味は、「降ったり止んだり」。ここにある「み」は接続語、動詞などについて「…したり」の意を表す。

 降りみ降らずみ降ったり止んだりとは同じ雨の風景を表現しながらも随分と語感が異なる。
 まず、「降ったり止んだり」では促音が入りなめらかさや静けさに欠ける。動詞自体も二種類が使われ、同じ雨の様子でも情景としての連続性が途切れる。
 降りみ降らずみには、単に雨の降り方だけを表現するに留まらずに雨の音を聞いている人の心情さえ反映し、降る雨と一時止んだ雨の情景が其処に在る。

 日本人だから日本語が堪能とは言えないことは皆が承知のこと。日常会話や論文ではない文字を記すことには十分でも、そもそも語彙力自体が人夫々異なるのであるから他者に伝える表現する力は千差万別。
 母国語の他に第二、第三外国語として日本語を習得した方々がはるかに古語を含めて日本語の使い手として何枚も上であることがある。頭が下がるし、自身の勉強不足が情けない。

 諦めずにこうして言の葉を集め、いつか自然と自身の文章に昇華して出てくることを待つ。

*タイトル写真:Westminster Bridge ロンドンでも小雨くらいではフードを被る程度で殆どの人が傘を差さない。

 

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