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さくら 春の弔い
川面を流れる桜の花びらは本来は花筏というべきだが、風にはらはらと舞い散り流れる様を見ていると静かなとても静かな花の葬列のように映った。
短い命を全うして季節を縁取るかのように舞い落ちていくこの時期の桜。舞い落ちた其処が水が流れる川であったお蔭で花びらはもう一度儚い花びらから姿を変え、散った他の花びらと共に葬列になる。春の弔い。
光があり明るい筈なのに古い映画の畦道を通る葬列、或いは夏のお盆の時期に流される灯籠のようだと何故だか見えたのだ。
一陣の風に周囲は花吹雪となり、舞台や映画のsetのようであったことも現実離れした想像に一役かったのかもしれない。
他の花には申し訳ないが、咲き始めから散る間際どころか「散った」その姿にまで人々が思いを馳せる花はそうない。