名前を付けるということ:うさぎ計画
[未曽有の経済危機に見舞われている南米ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、多くの国民にとって肉を食べることがぜいたくと化している現状を打開する方策として、ウサギを食用に繁殖する計画を打ち出した。「動物性タンパク質は切迫した課題だ。そのため『ウサギ計画』を承認した。ウサギは何しろ『ウサギ算』といわれるほど多産だからだ」。マドゥロ大統領は国営テレビで冗談を交えてこう語り、牛肉などの安価な代用品としてウサギ肉を導入する考えを表明した。マドゥロ大統領は、深刻化の一途をたどる経済危機を「経済戦争」と称している。「ウサギ計画」は、この「経済戦争」における食料や医薬品の不足への対抗策の一環だという。ベネズエラでは、国民の約75%が経済危機の影響できちんと栄養を取れずに平均8.9キロ体重を落としたとの調査結果が今年発表されている。政府の食料計画を任されているフレディ・ベルナル氏は、「ウサギ計画」を成功させるため、国民は「ウサギ愛」を捨てなければならないと主張した。ベルナル氏によると、第一弾として貧困地区を対象に先だって子ウサギを配給したが、住民たちはペットとして名前を付け、一緒に寝るなどかわいがってばかりいるという。同氏は、子ウサギは2か月で体重2.5キロにまで育つと指摘。「ウサギはペットではなく、ベネズエラ国民の食卓に提供される高タンパク・コレステロールゼロの肉2.5キロだ」ということを国民は理解しなければならないと語った。マドゥロ大統領の社会主義政権は、生産コストの高い牛肉の代用品としてヤギの食用繁殖計画も検討している。]*引用2017/9/15 AFPBB Newsより
ポルトガルへ行った時に市場の肉屋さんにうさぎの肉が売られていた。我家ではうさぎが家族として暮らしているのでこころ痛いというかその「キロいくらの表示」は複雑だった。フレンチでもうさぎは供されるので特に気にせず食事をされる方がいらしても全く問題はない。否定も非難もしない、只、私たちはおそらく一生うさぎの肉は口にすることが出来なくなっただけ。
この記事にもあるように「名付けた」ところから生き物は個別化される。他とは違うと認識されるとそれは今までのその他大勢のうさぎではなくなる。記事の最後にヤギが登場しているが動物の種類が違ってもそれは同じこと。
だからこそ、感情が差し込まれない食肉センタの類で加工されなくては私たちは「食物の肉」とは受け入れ辛い。或いは狩猟か。
『ピーターラビットのおはなし』の最初に出てくる「おとうさんのお話」を覚えている方はどの程度いらっしゃるのだろう。日本の童話とは違いヨーロッパ、諸外国の童話は児童に迎合し曖昧描写を取らず現実を見せることが多い。
ここでも「おまえたちのおとうさんは、あそこでじこにあって、マクレガーさんのおくさんににくのパイにされてしまったんです」と外出する子らを諭すくだりがある。
ベネズエラのうさぎたちの中で人間の命の糧として全うせず可愛がられているうさぎの末路がピーターラビットのおとうさんのように害獣扱いにならないことを願うばかり。中途に見放されることが一番悲しい。
Top写真は配給されている食料。一日も早くベネズエラの方々が混迷から出られますよう。