「Fukushima 50」
監督:若松節朗
制作国:日本
製作年・上映時間:2020年 122min
キャスト:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、佐野史郎、段田安則
2011年3月11日東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故が舞台。
未曾有と云われた事故から9年。福島に住まわれる方々には劣化していくことではないが、日々ニュースの上書きが進むと記憶が薄くなる人は出てくる。この時期での映画化はそうした意味ではよかった。
只、この作品が題材は重いが娯楽作品の部類なのか、社会派作品なのか。
もし前者であれば男性一色では申し訳ないと女優を随所に散らすことも残念な考えではあるが興行収入上ではあるかもしれない。だが、後者であれば安田成美の存在も全く不要。社員が家族を気遣うシーンは写真、携帯電話等で十分だった。
ここまで揃えるのかと驚くほどのキャスト陣である、その良さにもっと集約すべきだった。防護服着用では殆ど素顔が見えない状態での演技でも、どの俳優の演技かが分かるほど熱演。全編、キャスティング数が多い為に限られたシーンの熱演の繋ぎ合わせでもあった。
あの当時、報道では事の重大さを差して知りもしない素人キャスターが知ったかぶりでメルトダウンの言葉を連呼していた。ニュースは煽るだけで肝心のことは報道しない。
この作品内でバルブを命懸けで開けに向かうシーンがある。安全が確保されたロボットによる建屋内シーンなどではない。当時も当然ながら最悪の暴走を避けるために犠牲覚悟の作業をしてくださった方々が多くいらした。その様子が少なくとも伝わったことは幸い。
社会派作品であるのであれば、浮きまくっていた首相の描き方も娯楽作品過ぎていただけない。時間を経てあの事故を見直す冷静さが欲しかった。
作品の終わり方も感傷的にならずに、切り口は難しいとしても現在の廃炉過程を問題提起の形でも示し、少なくともこの問題が終わっていないことを示すべき。今回は名が知られている俳優さんであっても多くの方が少ないシーンで頑張っていらっしゃるだけに残念。
★★