「ロケットマン」
原題:Rocketman
監督:デクスター・フレッチャー
製作国:イギリス・アメリカ
製作年・上映時間:2019年 121min
キャスト:タロン・エジャトン、ジェイミー・ベル、リチャード・マッデン、ブライス・ダラス・ハワード
予告を見る度にずっと気になっていた作品。あの(私の中では最悪だった映画「キングスマン ゴールデンサークル」)作品出演のタロン・エジャトンがどうしても絵的にエルトン・ジョンに結びつかない。けれども、予告30秒スポットで既に十分エルトンに見えていた不思議。
監督が「ボヘミアン・ラプソディー」を後半バトンタッチで受けたデクスター・フレッチャー、プロジューサーに「キングスマン ゴールデンサークル」のアダム・ボーリングとまでくるとキャステイングにも頷けてしまう。
「ラ・ラ・ランド」以上に冒頭からアクセル全開ではあるが、このアクセルさばきの緩急が見事だった。「ラ・ラ・ランド」を非難する気はない。
只、最近のミュージカル作品一代表として比較すると、ミュージカル作品を作ろうとして音楽が繋がっている作品とは微妙に違う。既に「エルトン・ジョン作品ありき」が根底にあり、彼の作品が言葉(台詞)としても生きながらダンスも邪魔にならず、寧ろ派手な彼にふさわしく相乗効果になって話は展開していく。
「ボヘミアン・ラプソディー」ではクイーンの作品内音楽をそのものをMVのように楽しみながら、尚且つ、フレディの生き様を観ていたのに対して、「ロケット・マン」では聞き慣れていた音楽の意味或いは背景はこうだったのね、と観方・聞き方が私の中では違っていた。
聞き慣れていたエルトン・ジョンの楽曲だが訳までは特に気にしていなかった背景もある。同性婚等のニュースに流れる彼自身のことは知ってはいたが、それ以上でも以下でもない。楽曲を耳にしてるほどは彼のことを知ってはいなかったことも改めて意識させられる。
「ボヘミアン・ラプソディー」と違い主演タロン・エジャトンが吹き替えなしに全編歌いこなしなた事は拍手喝采。また、エルトン・ジョン氏自ら製作総指揮に入っていらっしゃることが、作品を演技過剰にせず、美談にもせず、本の「自伝」と同じ作品に仕上げているのだろう。
トレードマークの派手なメガネと衣装の裏にあった彼の葛藤。波のように浮き沈みする精神を保つための奮い立たせる衣装が、ピカソの絵を年代を追って観ていくとキュービズムを受け入れられるように着ぐるみだろうともエルトン・ジョンが纏うならそれはアリなのだ、と理解する。
衣装に関して:同じ監督作品であっても「ボヘミアン・ラプソディー」ではフレディのシャツ襟ぐりのcm単位まで正確に再現、或いは、当時のブライアンの衣装を借りているところもあったが、この作品ではエンドロールで丁寧に実際の衣装との比較写真があり全くのコピーではなくニュアンスを伝えていることが分かる。
監督が同じ、そして、イギリスのミュージシャンと重なるものが多くつい二作品を比較する形になったが、前作とは全く違う楽しみをいただく。
「ボヘミアン・ラプソディー」も数回観に行ったが、「ロケット・マン」も、また、もう一度観に行くだろう作品。
★★★★