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mAb精製のための新規クロマトグラフィー樹脂によるDownstream Process intensification

30年以上前に最初のモノクローナル抗体(mAb)が承認されて以来、mAb市場の進展は、患者の治療を劇的に変えてきました。抗体工学に関する知識や技術の進歩により、これまで満たされていなかった医療ニーズに対応するさまざまな標的治療薬が登場しました。初期の製造プロセスでは、力価が低く精製収率も低いものしか得られませんでしたが、ここ数年でアップストリーム工程の力価を高める大きな進歩がありました。ただ、連続運転の導入によってある程度は改善されたものの、ダウンストリーム工程(DSP)は抗体医薬品の製造において大きなボトルネックとなっています。

その一つが、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーに関する課題です。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、mAbの精製に欠かせない工程ですが、プロテインAレジンはmAb製造における最大のコストの一つです。プロセスの経済面と効率面を考慮しながら、この問題を解決できる革新的なソリューションが現在求められています。Avantorは、J.T.Baker® BAKERBOND® PROchievA™ プロテインAアフィニティ樹脂と、厳選された添加剤を組み合わせることで、取り除くべき不純物を除去しながら大幅なスループットの向上を可能にするmAbダウンストリーム精製工程をの設計を実現しました。この技術によって、治療薬となるモノクローナル抗体を効率的に得ることができます。

PROCHIEVAの利点

バイオ医薬品の開発におけるアップストリーム工程の力価向上は、製造コストの削減や製品の品質向上などで多くのメリットがありますが、その向上によって、元来それより少量の抗体のみを処理するように設計されていたダウンストリーム工程が影響を受け、目的物を適切に精製するために、より多くのクロマトグラフィーサイクルを実行することが必要になります。それにより、特異性の高いプロテインAのクロマトグラフィーを使用していたキャプチャーステップ(Capture step)において課題が生じます。

この課題を克服する1つのアプローチとして、プロテインA樹脂の結合容量を高めることが挙げられます。これにより、1サイクルあたりにより多くのタンパク質を流すことができ、処理時間とコストを削減することができます。また、高容量の樹脂を使用することで、その工程に必要なバッファーの量を大幅に減らすことができ、準備や保管に必要な労力や容量など、バッファーに関連するコストも削減できます。このバッファ量の変化は、プロセス開発のような少量生産の段階では特筆すべきことではないかもしれませんが、臨床製造に向けてプロセスがスケールアップするにつれてその影響は大きくなります。Avantorは、これらの課題やその他の課題を考慮しながら、J.T.Baker® BAKERBOND® PROchievA™のプロテインA由来のアフィニティークロマトグラフィー樹脂を設計しました。

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図1 : BAKERBOND®PROchievA™の動的結合容量

高い動的結合容量によるスループットの向上

動的結合容量(DBC)は、精製プロセスのスループットに影響を与える最も重要なパラメータの一つです。DBCが高ければ、サイクル数を増やすことなく、より多くのタンパク質をカラムに充填することができ、スループットの向上と時間の節約につながります。他の樹脂メーカーでは、粒子径を小さくすることでDBCを向上させていますが、この場合、圧力の上昇によりカラム充填時に異常が生じる可能性があります。下記の図1は、平均粒子径85ミクロンをベースにした、異なる滞留時間でのBAKERBOND® PROchievA™の高DBCデータです。破過点の10%で測定した場合、滞留時間8分でDBCは65mg/mlに達しています。これは、現在市販されているすべてのプロテインA樹脂の中で、クラス最高の性能です。

図2は、異なるDBCに基づくバッチあたりの理論的なサイクル数を用いた計算結果を示しています。35mg/mlのDBCを含む従来の樹脂を使用した場合は、1バッチあたり6回以上のサイクルが必要になります。しかし、同じ条件とカラム容量でBAKERBOND®PROchievA™を使用すると、プロセスを完了するために必要なバッチあたりのサイクル数は3回を少しを超える程度にまで削減されます。全体として、従来の樹脂と比較して、BAKERBOND® PROchievA™は、1バッチあたりに必要なサイクル数を約45%削減し、バッファの消費量を約40%削減することができます。

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図2:バッチあたりの理論サイクル数に対するDBCの影響

アルカリ性で樹脂の寿命が延びる

BAKERBOND® PROchievA™のもう一つの重要な特性は、そのアルカリ安定性です。図3は、4℃で0.1水酸化ナトリウムと0.5水酸化ナトリウムを用いてBAKERBOND® PROchievA™カラムを洗浄した結果を示しておりますが、どちらの条件でも100回の洗浄後に初期容量の90%以上が保持されています。この高いアルカリ安定性により、水酸化ナトリウムによるカラムの洗浄を繰り返しても、高いアルカリ安定性により、より長い期間樹脂の性能が保たれます。また、樹脂の交換によるプロセスコストを削減し、カラムの洗浄性を高め、バイオバーデンを低減することができます。

図 3 のデータに基づくと、アルカリ安定性を向上させた樹脂は100サイクル以上の寿命が実現され、BAKERBOND®PROchievA™では、負荷安全率25%で200サイクル以上の使用が可能です。

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図3:PROchievAの樹脂寿命。すべてのテストは2℃~8℃で実施。

さらに、水酸化ナトリウムは樹脂の寿命を低下させるため、Avantorはショ糖、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの洗浄用の異なる添加剤をスクリーニングし、BAKERBOND® PROchievA™への影響を調べました。その結果、200サイクル後でも、水酸化ナトリウムを使用した場合の20%の容量低下に比べ、10%の容量低下にとどまりました。

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図4: PROchievAの不純物除去率

Fc融合タンパク質の捕捉と精製

Fc融合タンパク質は、抗体のFc領域を目的のタンパク質に融合させてキメラ分子を作る、新しい治療法の分野です。Fc融合タンパク質の精製において頻繁に問題となるのは、従来のモノクローナル抗体の精製に比べて、高分子量および低分子量の汚染物質が多く含まれることです。Avantorは、2つの特殊なFc融合タンパク質を用いてBAKERBOND® PROchievA™の性能を評価しました(図5)。その結果、SEC HPLC分析に基づくターゲットタンパク質のモノマー純度が、現在市販されているクロマトグラフィー樹脂と比較して20%高いレベルであることが確認されました。それは、純度が70%のものに比べて90%のものは、最終的に後続の精製工程でのストレスを軽減することになるということです。これは、弊社独自のリガンドがFc領域に特異的に親和性を持つことによるものと考えています。

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図5: PROchievAと市販のプロテインAレジンを用いたFc融合タンパク質の精製。

コンプリート・ダウンストリーム・ソリューション・プロバイダー

Avantorは、コストを削減し、人々の生活を改善するような治療法をより早く市場に投入するためには、バイオプロセスの生産性を継続的に向上させることが必要であると考えています。Avantorの専門チームは、樹脂、緩衝剤、添加剤をスクリーニングすることで、お客様の製品や独自のニーズに最適なソリューションをカスタマイズし、お客様固有のダウンストリーム・プロセスの最適化を支援します。

Avantorは、ライフサイエンス、先端技術、応用材料業界の信頼できるグローバルパートナーとして、人々の生活を改善するようなバイオ医薬品のブレークスルーを実現します。弊社は、cGMP製造用化学物質、添加剤、クロマトグラフィーソリューション、シングルユースおよび流体処理ソリューション、細胞培養用メディア、およびサービスにおいて幅広いポートフォリオを有しています。私たちの目標は、バイオ医薬品メーカーがプロセスを合理化し、収率を向上させ、より良い世界を作ることに貢献する新しい治療法がより早く皆様のもとに届くことを実現することです。

著者について

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Jungmin Oh

(新製品開発担当マネージャー)

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Jonathan Fura

(研究開発担当マネージャー)

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