ワクチン開発・生産における連動ポンプの重要な役割
著者:John Batts, Masterflex Technical Training Team Leader
人類は、季節性インフルエンザからポリオ、麻疹、COVID-19に至るまで、数多くの病原性疾患の脅威にさらされてきました。一般に、これらの病原性疾患の引き金となるのはウイルスや細菌細胞であり、その攻撃方法によっては、ヒトの免疫系が迅速かつ効果的に対応・予防することが困難な場合があります。
ワクチン接種は、これらの病原体に対して免疫系が迅速に反応するように準備し、効果的な反応を適用するために行われる手段の一つです。ワクチンはさまざまな方法で製造されており、それぞれの方法は、病原体に対する身体の免疫反応を刺激すると同時に、接種時に健康を害することがないよう慎重に設計されています。また、ワクチンは数カ月から数年の開発サイクルで継続的に製造・改良される必要があります。このようにワクチンは開発サイクルが長いため、各開発ステージのハードウエア設計・管理には細心の注意が必要です。そのため、必要なときに必要なだけワクチンを準備し、また汚染のリスクを最小限に抑えながら、高い収率を維持することが重要です。
ワクチン開発の典型的なステージ
ワクチン開発は、まず、適切なワクチンの形態を特定することから始まります。そして、病気の原因となる物質が特定されると、以下の項目を考慮して、どのような種類のワクチンが最も効果的であるかの研究が開始されます。
• 弱毒化ワクチン:このワクチンは、弱められた実際の病原体から構成されています。弱毒化された病原体は実際の病原体とほとんど同じであるため、一般に継続的な免疫反応を確保するのに非常に有効です。しかし、弱毒化ワクチンは時に健康な免疫反応を妨げ、接種者が基礎疾患を持っている場合には健康リスクをもたらす可能性があります。
• 不活化ワクチン:完全に不活性化された病原体から構成されています。より多くの接種者に安全であると考えられていますが、一般に持続的な免疫反応を刺激する効果は低いとされています。そのため、接種者の免疫系反応が病原体に効果的に反応するように、しばしばブースターワクチンの接種が必要となります。
• サブユニット、リコンビナント、ポリサッカライド、コンジュゲートワクチン:病気を引き起こす物質の特定のインターセプトを使用して開発されます。これらのインターセプトは通常、接種者の自然免疫反応を引き起こす病原体の領域や特徴に関連しています。これらのワクチンの性質上、一般に接種者にとって非常に安全であり、また、これら病原体の断片の存在を検出したときに免疫系が積極的に反応するため非常に効果的です。
• トキソイドワクチン:病原体が人体に接触した際に、病原体が放出する毒素を不活化したものを中心に製造されたワクチンです。毒素の存在をより迅速に識別し、毒素が存在する部分の免疫反応に着目して、ヒトの免疫システムを構築するものです。このタイプのワクチンは、時に効果が限定的であるため、適切なレベルの免疫反応を維持するためにブースターワクチンの接種が必要となります。
ワクチンの適切な形状を特定した後、複雑で厳格な製造工程が開始されます。これらの工程の順序は、一般に次のように説明することができます。
1. 培養:この段階は、ワクチンの種子培養により、より多くのバッチを生産することを目的としています。そのためには、温度、pH、バランスのとれた栄養供給など、培養環境に関するあらゆることをモニタリングし、管理する必要があります。
2. 清澄化・精製:目標量の培養が終了したバッチは、培養に使用した補助添加物の成分を全て除く工程へと進みます。これは、精製されたワクチンが最終的に包装や流通などの最終工程に到達する際に問題が生じないようにするためのステップです。
3. 充填・包装準備:ワクチン接種時に、人体に問題がないように病原体の不活性化など必要な措置をバッチに施し、最終工程へと進みます。
4. 充填・包装:この段階では、ワクチン接種で使用するためにシリンジまたはバイアルに充填されます。この工程は、完成したワクチン製品が安定的に有効であることを保証するために徹底的に設計/実施されるべきであり、同様に接種器の安全性を確保するために多くの注意を払う必要があります。
ワクチンの製造サイクルにおける内容物の移送
ワクチン製造サイクルの各段階におけるバッチ液の移送は、細心の注意を払って行われる必要があります。ほとんどのワクチンは活性または不活性病原体を含んでおり、これらの病気の原因となる因子が液中に存在するため、流路全体で使用する機器やハードウェアは、病原体の生存率を維持するように設計されていることが重要です。
ほとんどのワクチンは製造工程でかかるせん断力に敏感であるため、長年の経験と差別化された技術を組み合わせたMasterflexポンプの使用は効果的な選択となります。Masterflexポンプの駆動部は、洗浄が容易なステンレス製ケースで提供され、Cytoflowポンプヘッドは、独自の凸型ローラーと凹型チューブベッドの設計により、せん断力を低減し、細胞の損傷を最小限に抑え、全体の収率を向上させることを特徴としています。これらのポンプドライブとヘッドをMasterflexチューブと組み合わせることで、ワクチン開発の各段階で求められる規制に対応し、高い収率でワクチンを製造することができます。
タンパク質精製時のタンジェンシャルフローろ過(TFF)など、高圧の流体移動が必要なプロセスでは、Masterflex L/S プロセスポンプドライブと革新的な Quattroflow™ ポンプヘッドを組み合わせたシステムの構築を推奨しています。独自の4チャンバー型ダイアフラムポンプヘッドは、処理する各バッチでワクチンの高い収率を確保するために必要な低せん断特性を維持しながら、高圧下での流体の動きをサポートします。
病原体の断片のみが使用され、ウイルスやバクテリアの完全性があまり重要でないプロセスでは、Easy-Load® II ポンプヘッドをMasterflex L/S または I/P ステンレス製プロセスドライブに結合することが推奨されます。これらの一般的に使用されているドライブとヘッドは、上記のCytoflowやQuattroflowのオプションと比較して、より手頃な価格で信頼性の高い連動ポンプ性能を提供します。また、使いやすいインターフェースと簡潔な設計で、世界中の多くのお客様に第一候補として選ばれています。
Cytoflowポンプヘッド、Easy-Load IIポンプヘッド、Quattroflow高圧ポンプヘッドオプションをMasterflex連動ポンプソリューションと組み合わせて使用することは、すべてのシングルユースプロセスに適しています。このソリューションは、ワクチン製造時のダウンタイムを最小限に抑え、またコストも削減にも寄与します。
ポンプ技術を取り入れたワクチン開発のメリット
先に述べたように、ワクチン開発は複雑で時間がかかるものです。その過程では、クロスコンタミネーションやダウンタイムを最小限に抑え、高い収率を達成する必要があります。このような要求の厳しい研究開発において、理想的なカスタマイズが可能なMasterflexのポンプシステムは、ユーザーの利便性だけでなく、コスト削減も実現します。また、豊富なオプションを揃えたMasterflexのチューブとポンプを組み合わせることで、ワクチン開発サイクルで必要とされるほぼすべての流体移送・制御のニーズを満たすことができます。
*事例紹介の原文は、添付ファイルに記載されています。
ワクチン開発の革新に大きく貢献しているAvantorのMasterflexポンプについて、さらに詳しい情報が必要な場合、また、その他の製品および関連アクセサリーは、当社のウェブサイトをご覧ください。
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