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思い出した話。ナマコ編

皆様こんにちわ。いつもお読み下さりありがとうございます。
思い出したシリーズを書いてみたいと思います。
全く役に立たないシリーズとも言っても過言では無いかと思いますが、宜しくお付き合い下さいませ。

 時は私が高校一年生夏休み頃に遡ります。
私と悪ガキ同級生数人と「海、行かね?」という事で盛り上がり、海に行くのであれば、魚も釣って楽しもうぜ!と、どんどんメニューが盛りだくさんになる訳です。

私たちは目的地を姫路・飾磨港からから瀬戸内海の家島を経由して、坊勢島という小さな島までの生まれて初めての仲間だけでの初トリップ! に、出かけたのです。
なぜ、そこなのか。 理由は仲間のS君が「すげー魚が釣れるらしいぜ!」
この一言で決定したのでした。

小学生のように浮袋を持って、、という風には行かない訳で、当時、私の家の倉庫には何故か、救命ボートのような黄色い6人乗りのゴムボートが置いてあったのです。重さは恐らく空気を抜いて畳み込んでバッグに入っていて20Kgくらいはあるようなしっかりとしたものでした。
所謂、家庭用のおもちゃに毛が生えているものではなくて、「本物! どやっ!」というシロモノでした。

S君は松茸窃盗団の時に使っていたデカいクーラーボックス、そして他のメンバーは、それぞれ釣竿に付属品と足ひれと水中眼鏡にシュノーケル。
これが後々重さの致命傷になることも想像出来ずに全員で雄叫び!
「おー!いっくぜえー!」

全員チャリンコの荷台に”ブツ”を何重にも括り付け、駅まで向かい、意気揚々と切符を買い、見えない予感にも関わらず全員、宙を見つめながらニマニマしながら到着駅を経由し小さなフェリーに乗り、坊勢島へ向かうのでした。

大人になるとリスクヘッジを考えるので、いざという時に予備に一泊と考え、予約を入れておくというのが常識なのですが、そこは怖いもの知らずアホの高校一年生軍団。全くリスクの”リ”すら考えが及びません。
おまけに、その島には当時、民宿すら無いというおまけつき。そして毎日数便しか船は運行されていないという、超スリリングな工程でした。

私たち一行は到着後、すぐにゴムボートにシコシコと足で踏む空気入れでゴムボートをパンパンにし、オールを組み立て、荷物を積み込み、海に出たのです。
島の周辺は岩が多く水深もそこまで深くなかったのでそこまで危険だと思っていなくて、舐めていました。周辺の岩にはフジツボや牡蠣の殻が、がっしりと付着していて、不意に近づくとゴムボートに傷が付き、小さな穴が空き、シューシューと空気が漏れているのに気づくのでした。
勿論あれだけしっかりしたボートが何だか萎んできたぞ、、と思っていても誰も言い出すこともなく、「潜ってみようぜ!」の誰かの言葉で「おー!」と、アホの集団は全員海に飛び込むという集団心理。

 海に潜ってみると透明な水に小さな魚があちこち泳いでいて一瞬、我々の現状を忘れさせてくれるのものでした。

その時、S君が何かを見つけたようで、全員集合。
「いっぱいナマコ見つけたで」「ナマコはホンマに美味いねん」「絶対高いから獲って帰ったらみんな喜ぶでー」、、はい、決定。
魚釣りからナマコ乱獲。

これでもかというくらい、クーラーボックスに獲っては入れ、獲っては入れを繰り返し、ほぼ満杯にし、「お〜すごいことになったなぁ〜」と全員満足。 帰りのフェリーの中でも、電車の中でも、S君の「ナマコのコリコリする食感は凄いねんでー」の話に盛大に盛り上がりながら帰ってきました。

そしてS君の家の倉庫で成果を確かめていたら、S君のお父さんが覗きに来て、「何釣ってきたの?」 S君は鼻の穴を最大限に膨らせながら、「お父さんが大好きなナマコ獲ってきたでー!!」

少しの沈黙の後に
「ナマコ?」

私たちはその沈黙に”あらっ?”と思っていたときに、S君のお父様から間髪入れずに、衝撃のひと言。

「夏のナマコは虫がおるから食えへんでー」

全員がっくし膝が折れました。 その瞬間に、魚の一匹も釣らず、脇目も振らずナマコ大量捕し、あれだけ重たい荷物を引き摺るように持って帰り、、
という事が、ぐるぐる回っているのが分かるほどでした。

そして、「臭なるから、はよー捨てときやー」と、S君のお父上は去っていくのでした。

我々は裏山の麓にスコップで鼻水垂らしながら、デカい穴を掘り、ナマコの大群を葬りました。 穴を掘りながらS君は何も言わず涙を我慢しているのを痛いほど皆が分かっていました。

恐らく今でもその場所には、「ナマコ様の墓」と書かれた墓標が立っているでしょう。。

私はその数年後に、板前修行の中でナマコの内臓をシュポシュポと取り出し、塩漬けにした、珍味 ”このわた” を作る担当になるのでした。
それをしている時はずっとこの事が思い出されて、堪らなく笑えてきたものでした。

 今回も全くタメにならないお話にお付き合い下さいまして有難うございました。お読み頂いている皆様の心情を察するあまり、鼻水が止まらなくなります。有難うございました。

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