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陰キャの男はB'zでキマれ
はじめに
幼少期を車社会の田舎で生きた人間にとって、親の車で流れていた音は心に深く刻まれているものだ。僕にとってそれはB'zであった。学校の送り迎えも、病院に行く時も、行きたくもない部活の練習試合で遠くに行く時も、僕の子供時代はB’zのサウンドに包まれていた。ここまでくるともはやBGMといってもいい。人生のBGMなのだ。
大人になった今でも、もちろん嫌いではない。紅白出演で話題になったこともあってか、しばらく聴いていなかったB’zを聴きながらこの1月を過ごしている。
折角なので、好きな曲とその理由の言語化に挑戦してみようと思う。
B'zの楽曲は単純に音としても良いのだが、僕は稲葉浩志の作詞に惚れているところがあるので、その魅力も伝えられたら良いなと思っている。この記事がB’zを聴いてみる小さなきっかけになってくれたら、とてもうれしい。
・Easy Come, Easy Go!
夢にまでフラれそうで 思わずぞっとする
そんな日をどうか耐え抜いて 明日にバラを咲かせよう
アルバム「RISKY」より。
シンプルに音が好きなタイプの曲。全体的に楽しげな曲調ではあるのだが、節々に寂しさも感じるところが良い。A-Bメロ部分でつらいこと、悲しいことを歌いながらサビでは一転、今日は踊っちゃおうか!といった切替が素敵。
B'zの曲にしては音域がやさしめなのだが、油断してカラオケで歌うとアウトロで死にかけるため注意が必要。
・恋じゃなくなる日
小さな貝殻にひとつずつ絵を描いて おもいでを砂に埋めてゆく
遠くで響いてる鐘は何かの終りと始まりを告げている
ミニアルバム「FRIENDS」より。
FRIENDSというミニアルバムは、小さなストーリーを描くものになっている。「恋じゃなくなる日」は起承転結でいうところの転といえるだろう。この曲の後、結局ふたりはどうなったんだろうね、どうやって「どうしても君を失いたくない」に繋がっていくんだろうね、というところにも想像を膨らませていきたい一曲。
楽曲としては無難に良いといった感じであるが、歌詞の美しさが限界突破しているので非常に好きな楽曲の一つ。冬の海辺を歩くならこの曲でキメろ。
・春
寂しい街から抜け出して
遠い国で君を抱きたい
アルバム「The 7th Blues」より。
松本孝弘が奏でる最強のアウトロがgood。B'zの楽曲の中でも1,2を争うレベルでアウトロのギターが良い。個人的1位は後述。
ねっとりとした不倫や浮気を匂わせる非常にヘビーな歌詞にも注目。「春」というタイトルからは考えられないくらい重くて暗い。
・きみをつれて
もう一度だけ 君をつれて旅をしてみたい
知らないうちに忘れてきたもの探し 道をたどる
ミニアルバム「Friends II」より。
マイベストアウトロ。今まで聴いてきたあらゆる楽曲の中で一番好きなアウトロはこれ。めちゃくちゃに長いがそれも気にならないほどの完成度。アルバムを締めくくる重苦しいギターの音色を抜けた先に待つピアノが、不思議な冬の寂しさを表現していて素晴らしいのだ。ありがとう、Tak Matsumoto…
・ながい愛
いつの日か 世界が消えてしまっても
瓦れきの中輝く 朝露のように
美しい気持ちだけを残したい
そんな気持ちを僕はあなたに持ちたい
アルバム「Brotherhood」より。
ストリングスから始まるイントロから急転直下、突如ハードロックのサウンドに切り替わる衝撃。Brotherhoodの収録曲は全体的にわかりやすいハード系の音から構成されているが、「ながい愛」は一味違う。
ラスサビ、稲葉浩志の超絶ボーカルの畳みかけの裏で鳴り続けているストリングスの美しさは何度聞いても惚れ惚れしてしまう。B'zの楽曲の中で一番好きだといっても良いかも。
・RING
欲しい 全部欲しい
何でも差し出そう 悪魔がそう望むなら
連れて行って欲しい ひとりに戻れない
たった今僕は目覚めた
アルバム「ELEVEN」より。
イントロから不穏な雰囲気たっぷりの激重バラード。勿論歌詞も超ヘビー。RINGに限らずELEVENの収録曲は全体的に重めな歌詞が多い。愛のprisonerとかも重くて良いよね。この時期、何かあったのか?稲葉浩志。
2番以降のサビの「悪魔がそう望むなら」、「それが君の中にあるから」の後にくるギュギュギュギュイーン!!!みたいなギターが好きなんだという話を友人に何度かしているのだが、だいたいふーん…といった風に流されて悲しい。
・Blue Sunshine
あなたを好きでいられることを幸せに思うよ
どこでも送ってくよ 望む場所があるなら
バイバイ Blue Sunshine
アルバム「GREEN」より。
B'zの中でも珍しい曲調の楽曲だと思っている。夏の夕暮れっぽい、爽やかだけどちょっと寂しい、そんな雰囲気がgood。まあ歌詞中では真っ昼間のdriveらしいのだが。
基本的に女にフラれているかろくでもない女に振り回されていることが多いB’zの歌詞の中では珍しく、叶わない恋や憧れを描いたものになっており、なんだかキラキラしている曲。
・夢の中で逢いましょう
死ぬまで気になる人なんだろな きっと
だれにも一人はいるんじゃないでしょうか
アルバム「MAGIC」より。
情けない男の心情を書かせたら世界一の男、稲葉浩志。多彩な語彙で結局うじうじしている歌詞が良い。ちょっと乙女ちくな感じもあってかわいい。
最後、「どうかもう一度現れてほしい」の後から突然ギターが激しくなるのも、秘めたる激情を表しているかのようで好き。
・黒い青春
きみのことがね 好きですたぶん
ボクに点数つけないから
アルバム「ACTION」より。
陽のオーラをまとうアルバム、ACTIONに差し込まれた「陰キャの思春期」を描く一曲。やたら解像度の高い陰キャ仕草を記した歌詞が僕たちの心を刺激してくる。なぜあんなかっこいい男にこんなものが書けるのか。とにかく陰キャはこれを聴け!
おわりに
やはり陰キャの男こそB'zを聴くべきだ。稲葉浩志が紡ぎ出すなんか妙に情けない男に自己を投影し、エモに溺れろ!とにかく僕が伝えたいのはこれだ。
ちなみに、メジャーどころをあえて外しているようなラインナップになってしまっているが、別に意図したわけではない。好きな曲は?とだけ問われればまだまだ書ける。LOVE PHANTOMとかもめちゃくちゃ好きなのだ。とはいえ、個人的にはやっぱりIN THE LIFE~C’monあたりまでが一番好きかもしれない。
これはマジで公開してくれてありがとう。