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布団に入る。そして生物学を知る。

生物学は、どうしてつまらないか

皆さんこんばんは。美味しい魚です。
現在は東京大学の理学部生物学科に在籍中で、来る院試に向けて眠れぬ日々を過ごしています。
科学の営み、特に生物学は特別な面白さに溢れています。ゲノム編集などの技術の進歩に伴い、生物学の文化的重要性も日々亢進しています。しかし、生物学の奥深さ、面白さは一般の人々にまっっっったく伝わっていないように感じます。周りの生物を選択している高校生や、生物系を専攻している大学生と話していてもなお、十分に生物学の魅力を認識している人はごくごく少数であるようです。そして、この現状を作り出している要因として、日本の(おそらく世界の)生物学高等教育があまりにもつまらないということが挙げられます。

皆さんは生物学教育の被害者である

かくいう私も今でこそ生物学を専攻していますが、高校の生物の授業を面白いと感じたことはほとんどありませんでした。数学や物理の方が100倍面白かったです。この記事を読んでいる皆さんと同じように、理系科目の癖に膨大な語句の暗記を要求する、先人の積み重ねた知識をなぞるだけの学問として「生物」を捉えていました。授業で紹介される生物の仕組みのいくつかは精巧で美しく感じましたが、その一方でわかったようなわからないような、不安定さも覚えていました。

今思うとこれは以下のような問題に起因しているようです。
・教科書に載っている一見わかりやすいイラストは情報をそぎ落とされ過度にデフォルメされているため、実感を伴いにくい
わかっていないこと。が教科書に書かれていないため、これに起因する行間のギャップがあっても、生徒は納得しようと無駄な時間を費やすことになる。そして、とりあえずわかったことにして次に進む。
・生合成回路(光合成や呼吸など)は、回路の全体像を頭からお尻まで理解したとしても、化学知識の不十分な中高生にとっては言葉遊び以外の何物でもない。しかも教科書に化学的背景の記述はほとんどないため、意義は理解できない。
・そもそも小さい視点から大きい視点へ、という構成が多くの学生にとって興味を持ちづらい(最新の学習指導要領では改善されたようです)
・実物の木の種類をスギとマツくらいしか知らない生徒にバイオームを覚えさせても意味があるとは思えない
・高校生物の教科書は重要概念の俯瞰としては非常に優れており、冒頭から1ページずつ読み進めれば何となくわかった気持ちになるが、逆に言えばそれ以下でも以上でもない。数学の公式を、応用問題に敷衍できた時のような、知識が自らの血肉となった感覚は実感できない(本来はたくさんあるはずなのに!!!)

もったいない

もったいない。この現状はあまりにもったいない。生物と生活を結び付けた書籍や、動物の奇妙な生態に着目したTV番組、書籍は多くありますが、生物学の静謐さを満足いく解像度で、かつ初学者にもわかりやすく記述しているメディアは存在しない。いくら探してもない。自然科学に分類される学問は生物学以外にも数学や物理学、化学等々数多ありますが、論文として日々発表されている最新の論文を、門外漢の人が少し勉強して理解しうるのは生物学の特権です。それなのに、生物学に足を踏み入れる十分な足掛かりとなる教科書としての文章が存在しないのはなぜなのか。自分が書くしかないか…と思い筆をとっている次第です。この試みのきっかけの一つは、中学の同窓会でひょんなことから生物学の話をした際思いがけず好感触を得たことです。その時卓を囲んでいたメンバーは僕以外の全員が文系でしたが、彼らからの質問に対して関連する知見を話すという形で2~3時間過ぎ去ってしまいました。その時トピックのいくうかはヒトの性に関連するもので、ある種我々の年代にとってキャッチーな話題ではありましたが、日常の多くのことは実は生物学と密接に関係していて、これらを論理的に議論できることは生物学の大きすぎる魅力の一つだと感じています。

noteの目標

・読者の皆さんに楽しさ、面白さを提供する
 ユーモアに富んだ筆致は、教科書のような固い書物では嫌がられますが、   本noteでは理解の妨げにならない程度で積極的に取り入れます。構成としての面白さも追求します。
・生物学の重要概念を理解してもらう
 皆さんが得た知識が、皆さんの暮らしを少し豊かにできるような、読み終えた後でついつい生物学的思考をしてしまうような、そんなnoteを目指します。
論理性を失わない
 論理的でない記述は、しばしば興味を失わせる原因になります。特に理工系の人々にとって、生物の教科書が読むに堪えないものになっている原因の一つはここにあるように感じますが、隅々まで必要性や十分性に配慮して書かれた生物の書籍を目にしたことはありません。論理に厳密にあることを誓います。

ただし、3つ目について、論理を追究するあまり構成が煩雑になり結果として可読性を失う恐れがあります。従って、補足的に細かい議論まで行間を限りなく小さくしたver.と、より一般向けのver.の2つを並行して更新出来たらいいなと思っています。。。どれだけ実現できるかはわかりませんが、この辺は皆さまの反響も見ながら柔軟に対応できたらと思います。

構成は検討中ですが、とりあえずいくつか身近なテーマから断片的に重要概念をいろいろな視点から眺める形にしようと思っています。ゆくゆくは冒頭から末尾まで、オーバーラップしながらも一貫した流れのある形でまとめたいですね。

公開予定のテーマたち

・精神疾患を知る。

 こころ、とは何でしょうか。こころの主体は中枢神経同士のinterectionであるという立場から部分的にこの問いに答えを与えるとともに、現代社会で浮かび上がるいくつかの特性を精神疾患と呼称し、薬剤投与で治療することの是非を議論します。遺伝子やDNA、ニューロン、脳といった重要概念について概観するとともに、社会と生物学の在り方について考えるきっかけを提供します。

・出生前診断や堕胎、避妊を社会はどうとらえるべきか。

母体の権利に関するセンシティブな問いを生物学的知見から限りなくドライにとらえ、現行の問題点を浮き彫りにします。避妊がもたらす進化的帰結についても焦点をあて、現在全く議論されていない出生率低下以外の懸念について提案します。発生学や進化について学ぶとともに、現代社会と生物学の関わり方について、新たな視点から切り込みます。

・性的マイノリティは生物学的におかしい。のか

表題の問いについて考えます。性決定の分子機構、性染色体、進化について学びます。一言結論を申しますと、おかしくありません。そもそも私もあなたも全人類、ひいては全生物に生きる意味はないというのが筆者の考えです。

・生物学はどうしてつまらないのか

冒頭で述べた高校生物のつまらなさについて、実際に高校生物の教科書を単元ごとに取り上げ、どうしてつまらないのか、どうしたら面白いのかを最新の研究知見とともに取り上げます。網羅的に生物学の重要概念を学ぶとともに、生物を学ぶ学生にとってのブレイクスルーとなることを目指します。

頑張って更新します!読んでください!!

正直このテーマでnoteを書くのはめちゃくちゃ大変だと思います。特に論理に気を遣う部分とか最新知見を追うのはしんどそうですが、この部分にこだわることで唯一無二の文章になると信じています。マジでモチベが欲しいので下のハートボタンからスキ、拡散等してくれたら嬉しいです!!!ぜひ次回以降も読んでください!!よろしくお願いします。



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