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森秋彩選手おめでとう

独り言20240811

クライミングが好きだ。クライミングを大学入学と同時に始めて4年目になる。今日は17:15から女子スポーツクライミング決勝があって、クライミングサークルの面々と一緒にレンタルスペースを借りて画面越しに応援した。

日本代表の森秋彩ちゃんは決勝の舞台で苦戦を強いられた。ボルダーとリードの合計点で順位を競うのだけど、ボルダーの1課題目ではスタートのホールドに両手を届かせることができず、結局スタートを切れずに8人中7位でリードを迎えることになった。安直にリーチに配慮を!と叫ぶことは正しくないことだと思うけれど、スタートを切ることすら叶わずにマットを去る秋彩ちゃんの背中は丸まっていて小さく見えた。表情を変えないクールな印象から精神力を讃えられることが多いけれど、世間に流布された風説のどれだけが正しいんだろう。20歳の秋彩ちゃんは女子大生でセカオワが好きでパン屋でバイトしていて、何よりクライミングが大好きなことはネット記事を読み漁って知っているけれど、休みの日には何を考えているんだろう。傲慢なわたしは秋彩ちゃんの頭の中を覗いてみたい。五輪の舞台でスタートを切れなかったことを夢に見たりするんだろうか。2課題目を完登できていたらメダルだったのに、と歯を食いしばって枕を濡らしたりしないんだろうか。もっとつまらないことも聞いてみたいーー苦手な科目の授業前日は憂鬱になったりするんだろうか。

逆風の中で迎えたリード、わたしは誇張なく泣きながら観た。競技前のインタビューでもメダルには一才言及せず、楽しみたい、自分の登りがしたいと言っていた秋彩ちゃんの希望が叶うように祈っていた。

秋彩ちゃんはリードでトップホールドの目前まで迫り、そして落下した。2位に大差をつけての1位だった。合計ではメダルには届かなかったけれど、秋彩ちゃんの願いは叶ったのかなと思う。

秋彩ちゃんはかつてのインタビューで、「わたしの登りを見て、『自分も何かを頑張ろうと思った』と言ってもらえることが一番嬉しい」と語っていた。今日の秋彩ちゃんの登りはあまりにも衝撃的で逞しくて、それを前にしてクライミングを頑張ろうとは言えなかった。でも、自分の人生を一生懸命生きようと思った。研究を頑張ろうと、勉強を頑張ろうと、ラボに心血を注ごうと、思えた。もちろんクライミングも頑張りたいけれど、本当に打ち込むべきことは違うんだと、どこかクライミングに夢を見ているんだろうと突きつけられた気もした。もちろん優しい(と勝手に思っている)秋彩ちゃんはそんなこと言わないと思うけど。

森秋彩選手、五輪4位おめでとう。
いつかどこかのジムで会えたらありがとうと言いたい。あなたのおかげで研究を頑張れました。論文を書けました。仕事を頑張れました。もしくは他の何かかもしれないけれど、それはきっとクライミングじゃないし、違っていて欲しいとも思う。


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