「Markdown記法って、何だ？」から始める、思考整理のノート見出し術

[N]ano（ナノ）

2025年1月2日 21:54

「おまえってノート上手だよな。キレイなノートって感じじゃなくて、見やすいノートって感じ。」

自分がノートを見せる機会があるたびに友人や知人、会社の同僚に言われる。

自分としては丁寧にノートをとっている自覚はなく、スピード重視、しかし情報がとっちらからないように”あるルール”で情報を整理しているだけなのだ。

そのルールとは

抽象レベルを揃える

ということ。

これだけではあまりにも説明不足なので、Markdown記法を用いながら以下解説していく。
Markdown記法はデジタルでのノートテイクも爆速になる為、覚えておいて損はない。
しかもアナログのノートテイクにも活かせるので一石二鳥である。

「Markdown記法とか良いから、取りやすいノートについて教えてくれよ！」という方は
「見出しの整理方法と、それが生むノートの情報アクセス性」から読んでいただきたい。

Markdown記法とは？

2004年にジョン・グルーバー氏によって開発された「フォーマット」であり、デジタル文書を作るときにマークアップ言語（HTMLとか）を簡略化出来るようにプログラムされたものである。

特徴として挙げられているのが以下の4つである。

手軽に文章構造を明示できる
簡単で読みやすい
読み書きに特別なアプリを必要としない事
それでいて、対応アプリを使えば快適に読み書き出来ること

引用元：日本語Markdownユーザー会

ここでは1に焦点を当てる。
本の目次などを見ると、1章、1節などの見出し（構造）があり、それぞれの章や節の中に同じ内容の文章がまとめられていることで、文章が読みやすくなっている。
その中で毎回〇〇章、や〇〇節と入力しなくとも、またHTMLのように<h1>などと記載しなくても良い（簡略化されている）というのが革命的である。

文章執筆とMarkdown記法のルール

Markdown記法は基本的にHTMLタグを仕様している為、一般的な文章執筆と感覚が少々異なる。

<h1>第一章　〇〇〇〇</h1>
<p>pタグの”p”とはparagraphの略である。</p>
<p>別のpタグを作ると自動的に改行されるが、
pタグの中で改行しても、実際には改行されていない。<br>改行するためには"br"で
明示する必要があるのだ。</p>

#第一章　〇〇〇〇
pタグの”p”とはparagraphの略である。  (半角スペース2回)
別のpタグを作ると自動的に改行されるが、pタグの中で改行しても、実際には改行されていない。   (半角スペース2回)
改行するためには"br"で明示する必要があるのだ。

上がHTMLの記法であり、下がMarkdown記法である。
今回重要なのは見出し1を<h1>~</h1>で括らずとも、「＃」を入力するだけで表現出来るという点である。

私個人としては、ライティングにおいてこの発明だけでも大きいと思う。
確かにリストを作成する時、HTMLでは
<ul>
<li>~</li>
</ul>
と記述するのに対して、
Markdown記法では箇条書きの前に「*（アスタリスク）」を入れるだけで良いのはとても楽である。

しかし、今回のテーマは「文章執筆とMarkdown記法」である。
*(アスタリスク)を入力するよりも・（中黒）を入力、または記入した方が早いだろうし、何より視覚的に正しいのは・（中黒）である。

重ねてになるが、今回Markdown記法での着目点は「手軽に文章構成を明示出来る」という点である。

つまり、文章構成を明示するのに労力がかからない分、文章構成自体の作成に意識を向けるのである。

文章構成とMarkdown記法

Markdown記法ではそれぞれの章や節を

#(見出し1、大見出し、章)
##（見出し2、中見出し、節）
###（見出し3、小見出し、頁）

で表記する。

そしてそれぞれの記述の後に、記述をした内容に関連した文章を執筆していく。ノートテイクであれば、関連した内容でノートテイクをする。

そして重要な点が、それぞれ＃が小さくなればなるほど抽象度があがるのである。

例えば以下の例を見てほしい。

＃食事
＃＃自炊
＃＃＃朝ご飯
＃＃＃昼ご飯
＃＃＃晩御飯
＃＃外食
＃＃＃和食
＃＃＃中華
＃＃＃洋食

これは食事についてまとめられたものだが、一番上に「食事」という大見出しが着ており、以下の＃が2つ以上のものはこの「食事」という枠から外れることはない。
また「自炊」や「外食」に関しては＃＃（中見出し）階層でテーマが同一のものであり、階層の深さが同じである。
そして最後に「朝ご飯」「昼ご飯」「晩御飯」と続くが、より具体性が上がっている。

注目して欲しいのは、同じ階層の言葉の深さが同じ点である。

＃＃（中見出し）に関しては自炊と外食が同じ階層に存在しているし、「＃＃自炊」の下の階層はすべて同様の言葉の重さである「朝ご飯」「昼ご飯」「晩御飯」である。
また「＃＃外食」の下の階層に関しても、言葉の重さは同じ「和食」「中華」「洋食」である。

この「言葉の深さ」というのが重要であり、この言葉の深さを統一することで、一つの見出しを見ることで目的の情報が同じ階層に存在しているか予測を立てることが出来るようになる。

例えば例の表から「晩御飯」についての内容を見たいと思ったとしよう。
ご飯だろうから「＃ごはん」の中身を見る。
そして「＃＃自炊」か「＃＃外食」かのどちらかの階層の中身を閲覧しようか悩んだとする。
この場合、1回中を見てみて＃＃＃（小見出し）の一つを確認してみる。すると「＃＃自炊」の一番目は「朝ご飯」であり、「＃＃外食」の一番目は「和食」である。
この時点で「＃＃外食」の中には目的の情報は無いだろうと予測ができ、情報を探るのをキャンセルすることが出来るのである。
後は同じ階層を上から下まで探ることで「晩御飯」の情報にアクセスすることが出来る。

この「目的の情報へいち早くたどり着ける」ということが、文章構成として非常に大切なのである。

考えてみてほしい。
本を読む時の目次が整っておらず、目次を読んですぐ欲しい情報が何ページにあるのか分からない。
このような状態では、必要な情報にアクセスしにくいったらありゃしない。文章の中身以前の問題だ。

自分のノートに至っては、基本自分しか見ないわけであり、文章の中身は後回しでよい。気になったら後で修正すればよい。
しかし文章の構成に関しては、修正が（特にアナログでは）非常にしにくいのである。
なら最初から徹底的に意識して構成を完成させてしまった方が、より振り返りやすいノートといえる。

それこそ、見やすいノートである。
見やすいノートとは、見出しが整っているノートなのだ。

見やすい見出しと見やすいコード

ではもう一段落踏み込んで、より見やすいノートを作成していく。

ここで使う考え方が、HTMLなどコンピュータ言語の記述の世界でよく言われる「読みやすいコード」である。
「文章執筆とMarkdown記法のルール」で用いたコードを例でもう一度使う。

<h1>第一章　〇〇〇〇</h1>
<p>pタグの”p”とはparagraphの略である。</p>
<p>別のpタグを作ると自動的に改行されるが、
pタグの中で改行しても、実際には改行されていない。<br>改行するためには"br"で
明示する必要があるのだ。</p>

これを「入れ子」という概念を使って整理すると以下のようになる。

<h1>第一章　〇〇〇〇</h1>
　<p>pタグの”p”とはparagraphの略である。</p>
　<p>別のpタグを作ると自動的に改行されるが、pタグの中で改行しても、実際には改行されていない。<br>
改行するためには"br"で明示する必要があるのだ。</p>

これだけでは「入れ子を使ったほうが見やすい！」と実感しにくいかもしれないが、情報量が多くなればなるほど、入れ子の意味が大きくなっていく。

以下見出しとして「Markdown記法の特徴」を記入し、リストとして先に取り上げた特徴を中黒のリストで表示させる為のHTMLのコードである。

<div>
　<h1>Markdown記法の特徴</h1>
　<ul>
　　<li>手軽に文章構造を明示できる</li>
　　<li>簡単で読みやすい</li>
　　<li>読み書きに特別なアプリを必要としない事</li>
　　<li>それでいて、対応アプリを使えば快適に読み書き出来ること</li>
　</ul>
</div>

このように、それぞれの同じ階層の横からの距離を揃える（ずらしていく）ことで情報の関連性がわかりやすくなるのである。
仮にこれがすべて左詰めにした場合…

<div>
<h1>Markdown記法の特徴</h1>
<ul>
<li>手軽に文章構造を明示できる</li>
<li>簡単で読みやすい</li>
<li>読み書きに特別なアプリを必要としない事</li>
<li>それでいて、対応アプリを使えば快適に読み書き出来ること</li>
</ul>
</div>

どの情報がリストなのか、一つひとつタグを見て判断しないといけなくなる。構造の把握の為に読むのに必要以上の労力がかかる。

しかしノートをとっている時、皆この状態になりがちなのである。

なのでここでは
＃
＃＃
＃＃＃
の数にならって、それぞれの見出しの階層別に少しづつ見出しを右にずらしていく、という方法を提唱したい。

＃ごはん
＃＃自炊
＃＃＃朝ご飯
＃＃＃昼ご飯
＃＃＃晩御飯
＃＃外食
＃＃＃和食
＃＃＃中華
＃＃＃洋食

を、ノートテイクでは

ごはん
　自炊
　　朝ご飯
　　昼ご飯
　　晩御飯
　外食
　　和食
　　中華
　　洋食

と記載するのである。

見出しの整理方法と、それが生むノートの情報アクセス性

STEP1 見出しをつける

ノートのテーマを決める。
左上にこのノートの全体的なテーマを一言でまとめ、記述する。
このテーマを見ることで、「そもそもこのノートを振り返る必要があるのか」を判断することが出来るようにすることが目的である。

ここでは先程の例を使って説明していく。
今回のテーマは「衣食住を整える」としよう。

「衣食住を整える」

STEP2 大見出しを考える。

ノートを記述する前に、「今から何を書くのか」という内容を考え、1つ目を作成する。ここで大雑把に書く方向性を定める。1つ目を考えたら、あとは今後核であろう内容を記述してしまう。これがこのノートで書く内容の方針を決める。

「衣食住を整える」
飲食
服
居住地

STEP3 中見出しを考える

それぞれの中見出しの記述内容を考えるうえで、考えるヒントとして中見出しを考える。
そしてここから一字ずらしをする。

「衣食住を整える」
飲食
　平日
　休日
服
居住地

STEP4 小見出しを考える

STEP3と同じ事を繰り返す。
具体的には中見出しを7±2個の項目で分けることを意識して小見出しを作成する。
7±2個というのは、ぱっと覚えられる、認識出来る個数ということである。
なおこの考え方はチャンクという認知心理学の考え方を参考にしている。
「マジカルナンバー」と呼ばれる、7±2が理想的である。

しかし無理に5個以上にする必要はないと考えている。
この「マジカルナンバー」は暗記の際に活用出来るが、ノートテイキングにおいては覚える必要はなく、情報にならべく早くアクセス出来るようにすることを心がけるものであるからだ。
なお試験対策などで覚える必要性があるのであれば、この「マジカルナンバー」の考え方は参考になるだろう。
各項目を7±2の範囲内で分けることで、試験範囲を覚えやすくなる。

「衣食住を整える」
飲食
　平日
　　朝
　　昼
　　夜
　休日
服
居住地

STEP5 各項目に内容を記述していく

ここまでして初めて内容の記述を始める。
細かく項目分けしているから、どの内容を書くべきなのか脳内がクリアになっている為、不必要なことを考えなくてよいのもメリットと言えるかもしれない。

「衣食住を整える」
飲食
　平日
　　朝
　　　基本的にプロテインにする。
　　　食べないよりも朝から栄養補給をしたいが、時間がないから。
　　昼
　　　昨日の晩御飯の余りを弁当として持っていく。
　　　外食をするより節約になるし、栄養管理もしやすい。
　　夜
　　　3色になるように意識する。
　　　多めに作って余った分は次の日の昼ご飯になる。
　休日
服
居住地

STEP6 繰り返す

後はこの作業を繰り返すことで、情報量が多くとも見やすい情報となるだろう。
例えば「飲食」の欄を作成してみた。

「衣食住を整える」
飲食
　平日
　　朝
　　　基本的にプロテインにする。
　　　食べないよりも朝から栄養補給をしたいが、時間がないから。
　　昼
　　　昨日の晩御飯の余りを弁当として持っていく。
　　　外食をするより節約になるし、栄養管理もしやすい。
　　夜
　　　3色になるように意識する。
　　　多めに作って余った分は次の日の昼ご飯になる。
　休日
　　朝
　　　基本的にプロテイン。
　　　朝はやっぱりゆっくりしたい。
　　昼
　　　外食を控える為、自宅で食事を済ませる。
　　　夜の外食分を考えて栄養バランスを調整する。
　　夜
　　　好きなものをたべる。
　　　このタイミングのために全部調整していると言っても過言ではない。
服
居住地

まとめ

この作成方法のメリットは、自分が何を考えなくてはいけないかすら分からないという時に、見出しを作成する過程でMECE（もれなくダブりなく）を意識することで精度が高い思考活動が出来ることである。

資格試験対策用のノート作成の場合も見出しをずらすという考え方は参考書の目次を参考にすることが出来る。
そもそも参考書をノートに書くという事自体が効率が悪いと思っているが、メモのように作成する場合の見出しとして活用することが出来るだろう。

しかし最も大切なのは、実際にノートの見出しを作成した後は見出しの内容について集中して考え、筆記するという活動である。

皆さんの知的活動がより良いものになりますように。