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SCANDAL RHYTHM
引き続き、スカタライツのスキャンダルスカを分析してみます。
今回はリズムに関してです。リズムというか、タイムの話ですね。それによって生み出されるグルーブの話を感覚ではなくて文明を使って科学してみます。
タイムについて
まず、AIを使って楽曲のトラックを楽器ごとアイソレートして書き出します。ドラムに関してはパーツごとに書き出しました。
それをDTMソフトに起こして波形を見たものがこちらです。
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ライドシンバルと、裏打ちを比較してみるとよくわかるのですが、ライドシンバルの裏拍の位置はやや三連符の三つ目より手前。いわゆるスイングフィールってやつです。
それに対して裏打ちはほぼプレーンでスクエアな八分音符。いわゆるイーブンフィールです。
さきほどの波形を拡大します。
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要するにライドの裏拍の位置より少し発音のタイミングが早いんです。
まぁズレてます。でもおかしく聴こえないですよね。なぜか。
彼らは四分音符を表現したいんです。それが彼らの演奏の目的です。この時代の演奏の中での裏打ち(八分音符の裏)というのは表拍(強拍)を演奏するためにあります。八分音符と八分休符を使って四分音符を表現してます。もうちょっとわかりやすくいうと裏打ちは表拍を面白くするためのシンコペーションみたいな感覚で演奏しているということです。
なんでここまで断言できるかというと、実際にこの時代の録音は裏打ちの音符が非常に長いです。しかし表拍ぎりぎりでちゃんと音を切っています。
これは音を切ることで表拍を表現しています。
何度も言いますが、彼らは四分音符を表現したいんです。
だから八分音符がずれたりすることに関心がありません。なんでもいいんです。
時代が進むと、これが徐々に裏拍を強調する形になって裏打ちが短くなります。そうなってくると明らかな八分音符ののりになります。もう少し後のスカやロックステテイ、レゲエという音楽は八分音符や16分音符を表現したい音楽なんです。
これはアメリカ音楽の進化、ジャズからロック、ソウルからファンクへのビートの細分化と全く同じ歴史を辿ってるわけです。
この話だとスカの裏打ちが短くなった理由がちょっと曖昧で不明瞭なんですが、いつのまにか面白さを求めて進化し、標準化していまうという例は他にもあります。
音楽的な進化
余談になりますが、ジャズのシンバルのパターンがまさに似た進化をしています。
ジャズのシンバルのパターンてこれですよね。いわゆるシンバルレガートって言われるパターンです。
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これ、実は元々は逆のパターンでした。
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こういうリズムでした。
ジャズ発祥のニューオーリンズではお葬式のとき、埋葬する前に悲しい曲を演奏しながら墓地までいきます。これをファーストラインといいます。
ところが帰り道は楽しい演奏をするんですよ。これをセカンドラインといいます。イメージがつきやすい代表的な曲は聖者の行進とか、ああいうのです。
このセカンドラインがジャズのリズムの元なんですが、これが今のパターンと逆ですよね、。
こういうのをドラムセットができる前、スネアドラムのロールで演奏してたんです。そのセカンドラインのパターンがドラムセットにおきかわったときに何故が逆に裏返ったんです。誰かがその方が面白いって変えちゃったんです。
現代でも聴くことができるジャズのシンバルレガートというのは元々は逆だったんですよ。こういう音型なんですね。
事実、アメリカのジャズドラマーは練習するとき必ずシンバルを四拍目から練習するんです。口で歌う時も”walk the dog”っていったりします。
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ジャズのシンバルレガートって「チーンチーキ」っていうフレーズじゃなくて、「チーキチーン」っていうフレーズで覚えるものなんです。ちなみに裏が「the, da」になってるのは非常に重要で、このように歌うと跳ねすぎません。これを口で歌いながら覚えるわけです。
閑話休題、結構な余談になりましたが。何が言いたいかというと、「こっちの方がおもしろいじゃん」で音楽が進化してしまうってことはあるってことです。
誰かが裏打ち短くして、八分音符を表現した方が裏のノリがでておもしろいじゃんと思ったわけです、きっとね。
管楽器の裏打ち
あともう一つ、これは僕の結構な憶測です。裏打ちが短くなったことの原因としては、サックスの裏打ちが影響してるんじゃないかと思います。
裏打ちが長い時代でも、サックスの裏打ちは短いんですよ。
これは何故でしょうか?
打楽器として扱ってるから?多分違います。
理由は簡単です。よく裏打ちをする楽器、サックスでいえば低音部で破裂音を安定して伸ばして、それを継続するのってくそ難しいからです。
ぶつ切りする方が圧倒的に楽。しかもノリが出る。そしてそのノリというかバウンス感を鍵盤と弦が真似をした、引っ張られたと考えるとなかなか自然じゃないかなと思います。
結果、裏打ちが短くなったことで、そのバウンス感は失われているのですが。
要するに古いスカ特有のバウンス感というのは、イーブンな長い裏打ちの上に短いテナーの裏打ちが乗っかることによって醸成されてるのかなと思います。
ベースについて
さて、古い時代のスカは四分音符を表現している音楽、この曲でよく分かる事があります。
ベースです。
もちろん四分音符を弾いているからそりゃそうなんですが、3連とかを感じて弾くとちょっとニュアンスが違います。
ベースを分離して聴いてみるとバウンス感ないんです。多分ウラとか感じてないと思いますよ。四分音符しか見えてないんだと思います。これが3連っぽいノリになるとちょっと新しい雰囲気になりますよね。この頃のベースは確実に四分音符しか感じてません。
でもちゃんと音が減衰するからちょっとノリが出てる、くらいな感じです。
また、ベースに関しては当時のコントラバスの機材的な理由もあります。なぜ当時のベースはあんなモコモコしたはっきりしない音で、減衰時間が短いのか。明確な理由があります。マイクやピックアップ等の電気的な問題ではありません。それは別記事サウンド編で解説します。
バスドラム
ベースに関連したところだとドラムのキックの話がありますね。
この曲ではドラムはおそらく、キックは四分音符を踏んでいます。ワンドロップ的に2&4拍では踏んでないと思います。爆音でよく聴くと聴こえますよ。
これもジャズはみんなやっている事でバスドラムの四分音符刻みのことをフェザリングって言います。鳥の羽で触るくらい軽く、まぁちょっとこの曲だとキック強めっぽいですけどね。ベースの四分音符をキックでサポートしてグルーブを支えるわけです。
ジャズの人、フィリージョージョーンズとかジミーコブとかみんなやってるんです。レコードを大きい音でかけるとちょいちょいきこえます。トントンて。
今のビバップ系ののドラマーの人、グレッグハッチンソンとかももちろん当然のように四分音符踏んでます。ジャズの場合は受け継がれてますが、スカはなんで受け継がれていないんでしょうね。
さっき書いたこの楽譜は間違っているわけではないです。
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ジャズの人はこういうふうに叩いてるわけです。
結論、スキャンダルのドラムのパターンはこういうパターンって事です。
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ソリストのタイム
リズムの話で最後にソリストはどのように拍をとっているのか。
テナーソロの冒頭です。
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波形でみてみます。
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若干のうねりはありますが跳ねてません。イーブンです。
ソロのタイムに関しては色々書かないといけないことがあります。このソロも8分音符どんだけ遅れてんだっていう件とか。その辺は次の曲(DR. KILDAREのテナーとトランペットのソロを解説する予定です。)のときに詳しく書こうと思います。
スキャンダルスカのリズムに関しての分析はは以上です。
次回はスキャンダルスカサウンド編です。