帰りたいと言う気持ちが、僕の脳内に作り出すいきものがかり。
仕事中、気怠かったり眠かったり、些か調子が良くないことがある。
そんな時、僕の脳内に颯爽と現れる人たちがいる。
いきものがかりだ。
あら、どうしてこんなところに、と思う間もなくボーカルの吉岡さんは唐突に歌い出す。
帰りたくなったよ〜♪
仕事中だろうが、飲み会だろうが、遊んでいる時だろうが、とにかく帰りたい衝動に駆られた時、彼女は唐突に歌い出す。
僕の脳内ステージで美声を放つ。
君が待つ街へ〜♪ までいってしまうと、大事な人が亡くなったり、人を盛大に傷つけたレベルになるしで意味が変わってくるので、脳内吉岡さんは、帰りたくなったよ〜♪ のワンフレーズをひたすらリピートする。
この吉岡さん壊れてるんじゃないかな、と不安になるぐらいに。
電化製品は叩けば直る、という母の教えを教訓に吉岡さんを少し叩いてみるが直らない。
無心で『帰りたくなったよ』と意思表示をするだけである。
吉岡さんでなければ、帰りたい教の洗脳によって、僕は追い詰められていることだろう。
帰りたい教ではない吉岡さんは、心のダムに溜まった帰りたいを浄化してくれる。
背中を地べたに擦り付け、両手両足を叩きつけて、「帰りたい!」と意思表示したい僕を、柔らかく宥めてくれる。
優しさと慈愛に満ちた聖母のように。
いつも、ありがとう〜♪ と歌っているけれど、今回は僕が伝えたいと思う。
ありがとう、いきものがかりの皆さん。
僕の帰りたい欲を、いつも宥めてくれて。
すると、恐らくいきものががりは、こう言うだろう。
「何言ってるの?」と。