日本を「51番目の州」にするとどうなるのか? その①
※ この記事は前書きを飛ばして読んだ方がわかりやすいと思う!
読まなくても問題ない前書き
先日行われた2024年の都知事選。高々日本の一部である東京の長を決めるだけなのに、連日全国ニュースを賑わせていた。結果においては皆様ご存じの通り、左派の雄やパワハラ元市長を押しのけ、現職が当選した。
個人的にはネットオンリーで戦っていた絶対正義マンが供託金は帰ってこないもののそれなりの得票を集めていたこと、伝説の人がポスターをそっと出していたこと、ポスターの枠が足りずに結果無効の申し立てが起きていることなど面白い部分はあった。が、総じて誰に言及しても立つ角がある、なかなか難しい選挙であったという印象である。
翻って太平洋の向こうへ目をやれば、国の長を決めようとして、近しいことが起きている。片や有罪判決を受けた大統領経験者、片や健康状態が心配される現職。国の一地方ではなく国そのものの話である分、世界中がやきもきしていただろう。結局、現職は撤退を宣言し、後釜には元判事である副大統領が選ばれた。
ちなみに上の話は「党の公認候補に限れば」の話であり、無所属ではもっとヤバいのが立候補して、撤退して、大統領経験者を指示している。ネットニュースでは「ケネディ家の異端児」なんていう丁寧な表現をされているが、人の口からは「陰謀論者」と火の玉ストレートな呼ばれ方をされているような男だ。
やっと本題
さて、そんな最中にXで見かけたのが以下のポストである。
このツイートの肝は「日本が51番目の州になってしまうと、米国大統領を選ぶプロセスにおいて、日本が重要になりすぎる」という主張である。今後、いくつかの記事を使って「51番目の州」となった日本の影響力について計算していく。
(ネタバレ)
米国大統領選挙人団について
本邦においては、国家元首たる内閣総理大臣は、選挙権を持つ国民が選んだ国会議員の中から選ばれる、という制度になっている。他方、アメリカにおいては党が指名候補者を選定し、選挙人がどちらかの党の指名候補者を選ぶ構造になっている。詳細は以下のURLから読んでもらうと良いかもしれない。
ここでいくつか今後の議論の前提となることを説明する。
① 選挙人団という存在があり、彼らが大統領候補に投票する
選挙人団というシステムは合衆国憲法に規定されている。これはアメリカにおける「伝統」の一つであり、建国以来の歴史を持つ集団である。
この集団は、大統領候補および副大統領候補への選挙権を持つ。つまり、選挙人の過半数から投票されれば (基本的には) 米大統領になれる、ということである。
② 選挙人は州ごとに人数が割り当てられる
ある州の選挙人の人数は、その州から選出される上院議員と下院議員の合計数に等しい。上院議員に関しては各州2名、下院議員は最低1名は割り振られることとなっている。そのため、ある州に割り当てられる選挙人の数は最低でも3名となる。
ちなみにワシントンD.Cは実は下院議員を選出できない。なぜなら大統領のおひざ元であるからだ。しかし、選挙人は3名分割り当てられている。
③ 下院議員の数は州ごとに異なる
下院議員は定数を州ごとの人口に比例して割り当てることになっている。2024年現在、下院の定数は435名であり、それを2020年の国勢調査の結果に基づいて各州に割り振っている。計算方法は州ごとの人口をある定数で割っていく「Hill方式」と呼ばれるやり方で、計算方法はおそらく以下の論文がわかりやすい。
大和 毅彦 (2003).議員定数配分方法について――定員削減,人口変動と整合性の観点から―― オペレーションズ・リサーチ,48,23‐29.
さて、アメリカでは2020年に国勢調査が行われている。ちょうど本邦でも2020年は国勢調査が行われた年である。ということはそれらのデータをもとに以下のようにすれば、日本の影響力を計算できる。
アメリカの州ごとの人口データを用意する
日本全体、または適宜分割した地域ごとの人口データを用意する
上記2つを用いてHill方式で下院議員435名を分配
配分後における日本に割り振られた選挙人の全体に占める割合を計算する
以上のことより、人口データに基づいて、下院議員の割り当てを計算することがまずは必要となる。
次へ続く!
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