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『キューポラのある街』で見かけた北朝鮮帰国事業

以前書いた駄文の再掲。

金属を溶かす直立炉、それがキューポラ。ま、煙突だね、煙突。そのキューボラが林立している埼玉県川口市を舞台にした浦山桐郎の監督デビュー作、吉永小百合の初出演作『キューポラのある街』。

あらすじは各々ググって欲しいけど、ざっくり書きまっせ。

川口市に住む貧しい日本人姉弟。彼らをJ姉弟と呼ぶことにする。このJ姉弟には在日朝鮮人姉弟の友達がいる。彼らをNK姉弟と呼ぶことにする。J姉はNK姉とクラスメイト、J弟はNK弟と仲良し。でもJパパはNK姉弟と仲良くしてる子供たちにいい顔をしない。差別的なんだな、これが。んで、あーだこーだあって(本来、ここを書くのがあらすじなんだけど割愛)、Jパパが失職しちゃったりNK姉弟が北朝鮮帰国事業で本国へ帰っちゃったり。劇中、J弟はNK弟を「チョーセン」と呼んでからかう。NK弟も売り言葉に買い言葉、憎まれ口を返す。ところがNK弟が電車に乗って帰国船の停泊する港に向かう際、J弟とNK弟は思いっ切り手を振って涙の別れ。ときには憎まれ口を叩き合っても、親友はいつまでも親友なのね。で、何だかんだあって、物語は終わる。

北朝鮮への帰国事業の末路がどうなったかは、まあ……アレだね。

私は親戚に在日コリアンが一人いる。友人には何人もいる。中には幼稚園から付き合っている者もいる。ただ彼らに、朝鮮人か韓国人かも聞いたことがなけりゃ、何世かも聞いたことがない。もちろん聞かされたこともない。
てことは・・・向こうは友人と思ってないかも?

それはともかく、小学校二年生のとき、ある在日コリアンの友人が我々の住む横浜から遥かかなたの西東京市に引っ越すことになった。横浜から見た西東京市は、当時、ブラジルぐらい遠い場所に思えた。
別れ際、これでもかというほど泣きじゃくった。くだんの友人は引っ越しのワクワクで私の涙なんてそっちのけ、思いっ切り手を振って笑いながら機上の人、ではなく、西東京市の人になった。

その光景って、ちょっとした『キューポラのある街』じゃん?

くだんの映画をNHKだかVHSだかDVDだかで見た後、大学生になった。
通学電車はすんなりと、あっさりと、ちゃっかりと、シレッと西東京市を通り過ぎ、学生街へ向かいやがる。
西東京市がブラジルぐらい遠くに見えていた子供の世界は広いのか狭いのか分からないけれど、Jパパのような人間が「見たがる世界」は確実に狭いと言える。

余談。この映画の名台詞は、とある不良娘が発する「アタイ、これから赤羽に行くんだ」。赤羽橋じゃないよ、赤羽だよ。
ついでに言うと、浦山監督はとてもナルシストで、自分が撮った映画を観て泣くそうな。


AUskeえいゆうすけ

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