幽霊も暴力も出てこない怖い実話2 ドライブ編
高校三年にもなると、受験をしない四月生まれの生徒は自動車教習所に通う、という感覚は平成後半生まれには分からないかも知れないけれど、そんな十八歳はそこそこいた。
私の友人も例外に漏れずが運転免許を取った。
横浜あたりに住んでいると、鎌倉や横須賀の方面へドライブに行くのが通例だと思う。
そんなドライブに飽きた頃に行き着く先は、青木ヶ原樹海。つまり自殺の名所。
あれは秋の深夜だったか、樹海を貫く一本道を走るだけのドライブに出かけた。遊びはとしては不出来、肝試しにもなりゃしない本当につまらないドライブだった。
「帰ろ」
誰かが言った。誰も反対はしなかった。
車は来た道を引き返す。
すると、二十代前半ぐらいの髪の長い女が、それも素っ裸の女が、一本道の真ん中に突っ立っていた。私たちは恐怖した。一番驚いた運転手がアクセルを踏み込んだ。
すぐさま警察に連絡したけれど、そのあとはどうなったのか知らない。いま思うとあれはそういうプレイだったのだと思う。
巷間、そういうプレイをする人たちが実は少なからずいるということは知っていたが、あの時間、あの場所で出くわすと、この世のものと思える人間の方がこの世のものではないと感じる。
あのときの恐怖たるやなかった。しかし一番怖かったのは、同乗していた友人の発言だった。
「あの裸を忘れる前に、早く帰ってシコりたい」
AUskeえいゆうすけ
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