映画パンフ感想:モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン
映画『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』の映画パンフ感想。
※ヘッダ画像:クリエイティブコモンズ3.0(※画像を一部トリミング)
原典:YouTube: "신비로운 매력"...전종서, '화려한 데뷔' #JeonJongSeo [디패짤]
ここでチョン・ジョンソ(전종서)の画像を使うと今後使えなくなるが…まあいいか(クールですね)
【基本情報】
判型:B5縦(左綴じ)
総ページ数:20ページ
価格:800円(税込)
発行日:2023年11月27日
編集・発行:株式会社キネマ旬報社
発行承認:株式会社キノフィルムズ
デザイン:大寿美トモエ(大寿美デザイン)
執筆協力:山元明子(ヘルペチカ)
【構成】
2-3ページ:映画スチル(2ページにタイトルコピーあり)
4-5ページ:イントロダクション&ストーリー
6-7ページ:キャストプロフィール
8-9ページ:レビュー 女優チョン・ジョンソの凄さ、その類い稀なる個性(岡本敦史)
10-11ページ:レビュー アナ・リリ・アミリプール 過激なヴィジョンの底に流れる繊細なエレガンス(渡部幻)
12-13ページ:プロダクションノート
14-15、17ページ:映画スチル
16ページ:スタッフプロフィール
18ページ:クレジット
19ページ:海外ポスター
【内容】
・キャストプロフィール
ケイト・ハドソン【ボニー・ベル】、チョン・ジョンソ【モナ・リザ】、エド・スクライン【ファズ】、クレイグ・ロビンソン【ハロルド巡査】まで紹介。
ここまで来たらエヴァン・ウィットン【チャーリー】まで紹介して欲しかったところだがスペースないし仕方ないか。子役だしな。
その分4人が等分に紹介されている。(だからキャリアの長いケイト・ハドソンはコンパクトに、他3人は割と記述が多い)
・映画ライター/編集者による俳優論
映画ライター/編集者として活動されている(第二期映画秘宝 4代目編集長)方による俳優チョン・ジョンソを中心とした当作品の俳優論。
映画デビュー作のイ・チャンドン(이창동)監督『バーニング 劇場版』(2018)、主演作のチョン・ガヨン(정가영)監督『恋愛の抜けたロマンス』(2021)、そして私生活でもパートナーであるイ・チュンヒョン監督(男前)『ザ・コール』(2020)※、『バレリーナ』(2023)といった作品を紹介しながら、ヒロイン、あけすけな現代女性、連続殺人鬼、武闘派ヒロインと幅広い役柄を演じたチョン・ジョンソの魅力に触れていく。
そして『バーニング 劇場版』を見て今作の起用を決めた本作のアミリプール監督も、抑圧を排除し、自由を求めて突き進むモナ・リザ役で赤子のようなイノセンス、野生動物のような凶暴性を体現するチョン・ジョンソの魅力を引き出していることに触れている。
さらに、そのようなモナ・リザに感化されていく周りのキャラクターを演じるケイト・ハドソンを始めとした各俳優の役作りの妙に触れつつ、エンディングの意味を論じている。
(エンディングに触れています、の注釈はパンフになし)
なお、批評の冒頭では「どう見ても、作り手が役者に惚れ込んでいる。」とあるが、俳優チョン・ジョンソに惚れこんでいるのはこの評者岡本敦史も同様ではないか。そう思わせる俳優論である。
※『ザ・コール』はイギリス映画『恐怖ノ黒電話』(マシュー・パークヒル)(2011)のリメイク(特集上映「“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション」にて劇場公開)
・映画批評家/編集者による監督論
映画批評家/編集者として活動されている方による監督アナ・リリ・アミリプール論。
まず最初に表題にあるようにアナ・リリ・アミリプールが過激なヴィジョンの底に流れる繊細なエレガンスを持ち合わせた監督である、という結論から入り、それが如何なるところから生まれたのか、彼女の出自からも明らかにしていく。
他のイラン系アメリカ人女性監督※と比較しつつ、イギリスで出生後アメリカへ移住したアミリプールを、80年代アメリカポップカルチャーとアナ―キズムの影響を受けて育ち、21世紀のポストパンク・リバイバルと共鳴した存在として規定している。
そして、『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』(2014)や『マッドタウン』(2016)の作品の特徴に触れつつ、本作『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』が前2作と違ってカーニバル的な世界観を持ち、親しみやすさを持ちながらも、さらに表現主義を強めており、また「人間関係、家族、社会、宗教、政治、国をコントロールするシステム」から切り離された少女と底辺を生きる人々の孤独へのまなざし、という3作に共通する点をあぶりだしている。
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