映画パンフ感想:香港の流れ者たち
映画『香港の流れ者たち』の映画パンフレット感想。
※ヘッダ画像:深水埗 クリエイティブコモンズ4.0(※画像を一部トリミング)
出典:Wikimedia Commons
【基本情報】
判型:B5縦(左綴じ)
ページ数:28ページ(※全体ページ数)
価格:900円(税込)
発行日:2023年12月26日
発行:cinema drifters 大福
編集:福士織絵(大福)
デザイン:阿部事務所
【構成】
※パンフレットページ表記は表紙見開きに記載されたページ数に準拠した。
表紙裏:各国映画祭出品&受賞歴
見開き:パンフレット目次
2-3ページ:イントロダクション
4ページ:ストーリー
5ページ:映画の舞台/背景解説
6-7ページ:批評 まちが、きれいになると……(宇田川幸洋)
8-9、15、19、24ページ:映画スチル
10-13ページ:キャスト
14ページ:監督プロフィール&コメント
16-18ページ:監督インタビュー
19ページ:識者コメント(映画スチルあり)
20ページ:海外映画評(映画スチルあり)
21-22ページ:批評 面倒な、愛すべき人々(鷲谷花)
裏表紙裏:クレジット
【内容】
・各国映画祭出品&受賞歴
2021年台湾アカデミー賞(金馬奨)12部門選出(脚本賞受賞)、2022年香港アカデミー賞(金像奨)11部門選出、他映画祭でも受賞と、かなり評価された映画になる。
・イントロダクション
本作『香港の流れ者たち』は映画制作配給会社mm2の新人監督企画コンペ「mm2 Emerging Directers Program」の第一弾作品。監督作としては長編第2作。
・映画の舞台/背景解説
映画の舞台である深水埗(シャムスイポー)、映画のモデルとなった2012年の通州街(トンジャウ)ホームレス荷物強制撤去事件について解説したページ。
深水埗は九龍半島の北西部に位置する下町で、工業・商業施設が多く、路上生活者も多い地区とのこと。
食物環境衛生署が路上生活者40名以上の所持品を廃棄したことに対し、政府に賠償と謝罪を求めて裁判した事件がモデルとなっている。賠償金は支払われたが、謝罪は拒否された。裁判の途中で亡くなった人も出たとのこと。2015年、2019年にも同様の事件が起きている。
・香港映画を中心にアジア映画を批評する評論家による批評
PFFでの映画入選から映画評論に転じ、アジア映画を中心に批評する映画評論家による批評。香港映画の批評ではおなじみで、漢字をひらいた平易な文体が特徴の方。無手勝流で自身の体験、過去の香港映画の紹介、役者への言及という形で連想が飛んでいくような批評となっている。
1986年に初めて香港を訪れ尖沙咀(チムサーチョイ)の路上で折りたたみベッドで眠るおっさんを見て心を動かされた、という個人的な体験より文章を始め、そこから90年代に入り香港が清潔できれいなまちに変貌していく流れの中で居場所をうしなう人たち、という流れで本作を含め、貧困層を描いた過去の香港映画の紹介※へと移っていく。
※ジェイコブ・チョン(張之亮)『籠民』(1992)(未見なんですが、これ
日本で事故のため亡くなったウォン・カークイ(黄家駒)主演作ですかね…)、アン・ホイ『千言萬語』(1999)が紹介されている。
ここから『千言萬語』にも出演していた(金馬奨で最優秀主演女優賞受賞)ロレッタ・リーの紹介でほぼページの半分が割かれるのが微笑ましい。好きなんだろうな。イップ・トン(セシリア・イップ)(葉童)にもちょっと触れたあと抑制するのもまたよし。
・キャスト紹介
脇の俳優まで紹介されているのが嬉しい。
フランシス・ン【ファイ】、ツェー・クワンホウ【ラムじい】、ロレッタ・リー【チャン】という主要役者だけでなく、チュー・パクホン(朱栢康)【ダイセン】、ベイビー・ボウ(寶珮如)【ラン】、セシリア・チョイ(蔡思韵)【ホー】、ウィル・オー(柯煒林)【モク】まで紹介されている。
・監督プロフィール&コメント
監督は香港中文大学ジャーナリズム学部卒、ケンブリッジ大学ジェンダー研究哲学修士課程を修了、という経歴。
監督コメントより、大学生の時(2012年頃)に深水埗のホームレスを取材しており、その後の地域の変化も見ていたことが分かる。長きにわたってホームレスに関心を寄せていたことが今回の映画に結実している。
・ジュン・リー(李駿碩)監督インタビュー
聞き手:リム・カーワイ※1
監督になったきっかけ、本作の企画について、キャストについて、撮影監督レオン・ミンカイ (梁銘佳)について、音楽を手掛けたウォン・ヒンヤン(黄衍仁)について、今後の展望について、などで構成されている。
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