豪州VIC州EV Tax違憲判決が石炭ロイヤルティに及ぼす影響について
VIC州政府が課すEV税に違憲判決
2023年10月18日、オーストラリアにおける最高裁判所(以下、最高裁)が、VIC州のEV税(電気自動車, EV, 保有者を対象とした道路利用税)は違憲であるとの判決を下しました。オーストラリア憲法90条において「物品税(excise)」の課税権は(州政府ではなく)連邦政府に排他的に与えるとしており、VIC州政府が課しているEV税が物品税にあたるかの解釈が争われた事案。VIC州政府が課すEV税は物品税に該当すると判示されたもの(VANDERSTOCK & ANOR v STATE OF VICTORIA [2023]HCA 30)。
判決の概要
被告であるVIC州政府はEVに対する税ではなく、単にその利用段階(消費段階)において課されるものであって、”運転という活動”に関して課している税である。従って、EVという物品への課税には当たらないとの主張。
これに対し最高裁は、大きくは、「物品税に該当するか否かの判断規準(2要件)」(いずれの要件も充足する場合に憲法90条における物品税に該当する)を支持。これらの要件への当てはめを行う結果として、VIC州政府が課しているEV税は単に”運転という活動”に対する課税であるとは認められず、EVの需要抑制等に影響を及ぼすものであるから、物品税に該当し、従ってVIC州政府に課税権は無いとの判断を下したもの。
租税が物品の活動等に緊密に関係しているか:換言すれば、物品のライフサイクルのいずれかの局面(オーストラリアにおける生産・製造段階や、その後の流通、販売又は再販売、所有、コントロール、使用又は再使用、あるいはオーストラリアにおける廃棄の段階を含む)で課される税であるか
租税が物品の市場における需要を抑制又は減退させる傾向をもたらすものであるか。あるいは、物品の供給や価格、需要に影響を与えるものであるか
違憲判決が各州政府の課す石炭ロイヤルティ等に及ぼす影響
本判決の影響は単にVIC州や、ましてEV利用者に留まるものではありません。特に資源(石炭)業界に影響が大きいと考えられるのは、現在州政府が課している石炭ロイヤルティの合憲性です。石炭ロイヤルティは、石炭(物品)の清算活動に密接に関連して課されるものであって、かつ、それが物品の供給や価格、需要に影響を与えるものであるためです。
ただし、本件は憲法解釈が論点となっていることから、憲法上の「物品税(excise)」への該当性の解釈を、裁判所で明らかにしなければならないことになります。業界団体の動向を注視していく必要があります。
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