【ドラえもんのターゲット層とは】ANREALAGE×ドラえもんタイアップより
こんにちは。バナナ星です。
2024年は藤子・F・不二雄先生の生誕90周年ということで、F作品関連のグッズ・イベントが盛り沢山です。
私はその中で、衣料品ブランド×ドラえもんのタイアップに注目しています。
以前、Samantha Thavasa Petit Choice × ドラえもんのタイアップについて考察しました。↓
今回はブランドを変え、ANREALAGE × ドラえもんのタイアップについて考察します。
具体的には、マーケティングのフレームワークの一つである「STP分析」を用いてターゲットを推察します(マーケティング素人による解釈ですが…)。
STP分析については軽く後述しますが、詳しく知りたい方はこちらの解説が参考になるかと思います。
それでは、興味のある方は続きをどうぞ。
ANREALAGE × ドラえもん
ANREALAGEとは
ANREALAGE(アンリアレイジ)とは、デザイナーの森永邦彦が2003年に設立した日本のアパレルブランドである。
商品の価格相場は約3,000~500,000円と中~高価格帯。
2014年にはパリコレに進出した実績があり、ファッション業界では国内外の認知を得ていると言える(パリコレ界では低価格帯?)。
男女どちらにも対応したアイテム展開で、性別を問わず人気がある。
特に30代がメインターゲット層だが、20代後半~40代にも支持されている。
ブランド名は、「A REAL(日常)」、「UN REAL(非日常)」、「AGE(時代)」の組み合わせに由来する。
名前からわかるように、日常と非日常をテーマに個性的な洋服を生み出し、ファッションの未来を切り拓いている。
特に近年は、最先端のテクノロジーを取り入れた洋服が評価されている。
例えば、光の反射する素材を使ったり、球体・立方体などの近未来的デザインを手掛けたりしている。
これは、紫外線に反応してポケットの色が変わるTシャツである。
これまでもSTAR WARSなどとタイアップした事例はあるが、Samantha Thavasa Petit Choiceに比べると盛んではない。
本タイアップの経緯は定かではないが、ブランド名に含まれる日常と非日常というテーマはF先生が『ドラえもん』において重視したことと一致する。
というか、一致しすぎている。
それもそのはず、当ブランドを立ち上げた森永氏はF先生に影響を受けて育ったようだ。
実際にブランド公式HPにて、「愛読するマンガ家の藤子・F・不二雄」や「すこしふしぎ」について言及している。
F先生のSF(すこし・ふしぎ)世界では、漫画内における日常と非日常の邂逅が描かれる。
一方ANREALAGEでは、本当の現実世界における日常の中に、非日常的なズレや錯覚を起こす衣服を生み出している。
結果、衣服に最先端のテクノロジーを活用するという発想に繋がったのであろう。
なお、今回のタイアップに先んじて2023年12月にもタイアップした事例がある。
これは、12/12に発売したCasa BRUTUS特別編集『大人も読みたい藤子・F・不二雄100』の特集企画である。
ドラえもんが生まれた22世紀の“すこしふしぎ”な日常服をイメージして作られた。
例えば、紫外線を当てると色が変わるコートや四次元ポケット型のドレスなど全6つの洋服が掲載されており、見ているだけでワクワクする。
タイアップ商品情報
藤子・F・不二雄先生の生誕90周年を記念したタイアップ。
タイアップのために作られたオリジナルロゴがプリントされたTシャツやフーディーなどの洋服が購入できる。
アイテム数は全8つ(色違いの数は省略)。
価格帯は9,900~55,000円である。
詳しい商品情報はこちら。
一般人が購入できる商品とは別に、2024-25年秋冬パリコレクションで発表されたコレクションもある。
こちらはドラえもん、のび太、しずか、スネ夫、ジャイアン、ドラミをイメージしたシャツが展示された。
コレクションのテーマは「OBJECT(オブジェクト)」である。
無生物である球体や三角錐がシャツをまとって空中に浮遊するという、近未来的な洋服の在り方を提示した。
STP分析
STP分析とは「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の3ステップのモデルである。
3モデルの分析を進めることで、マーケティングの指針を立てることができる。
各ステップの説明は以下の通りである。
Segmentaion:市場を細分化する
Targeting:狙う市場を決める
Positioning:自社の立ち位置を明確にする
今回はこのフレームワークを応用して分析する。
Segmentation
まず、本タイアップ商品の顧客は「ANREALAGEファン」と「ドラえもんファン」の2層から構成されると考えられる(図1)。
まず、ANREALAGEファンについて述べる。
前回のSamantha Thavasa Petit Choiceでは「ブランドが好きな人」を考慮しなかった。
しかし今回は、高価格帯であること・パリコレに出品するほど知名度があることから、一部の根強いブランドファンの存在が予想できる。
ここで言う根強いファンとは、「ANREALAGEだから」という理由でアイテムを買い揃えるほどの熱量の持ち主を指す。
つまり、ドラえもんとのタイアップだろうが何だろうが、新アイテムが出たら購入する人たちである。
次に、ドラえもんファンについて述べる。
厳密にはANREALAGEファンと重なり合う部分もあるが、今回はドラえもんファンに絞ってSTP分析を進める。
ドラえもんファンを、オタク度(ドラえもんの好き度合い)・年齢層の2軸でセグメント分けを行った(図2)。
このステップは前回のSamantha Thavasa Petit Choiceの分析とほとんど同じである。
ただし、前回はブランド顧客の多くが女性だと想定されたのに対し、今回は性差が大きくないと考えられる。
Targeting
次に、上記のセグメントの中から今回のタイアップにおけるターゲットを絞った(図3)。
まず、オタク度については重度のファンを想定した。
その根拠は、タイアップ商品の価格帯と主張の強いデザインにある。
価格帯は最低でも9,900円と、やや手が出しづらい値段である。
もちろん買えなくはないが、近年コスパ・タイパが重視されている中でTシャツに約10,000円払うには心のハードルがあると感じた。
したがって、「かわいい!」というノリで買う人は少なく、ドラえもん愛が強くてグッズの収集癖のある重度のファンが購入すると考えられる。
また、アイテムのデザインはどれも一目見てドラえもんだと認識できるような個性的なデザインである。
主張の強さは、ファンである自分を表現するにはうってつけだが、人によっては恥ずかしさを覚える場合もある。
そのため、主張の強いアイテムを買う人=重度のファンだと考えられる。
次に、年齢層については20代後半~50代を想定した。
当ブランド自体のターゲット層に則れば20代後半~30代がメインとなるが、ドラえもんは今の50代の幼少期に始まった作品であることから、この世代に重度のファンが多く存在している可能性がある。
具体的にペルソナを考えよう。
例えば、50代の会社役員男性を想定してほしい。経済的な余裕があり、ブランドアイテムを多く保有している。
子どもの頃からドラえもんの漫画やアニメを観て育ち、今も愛着がある。ドラえもんグッズを見るとついつい買ってしまう。
そんな中、今回のタイアップのことを知る。オフの日の部屋着にピッタリだ…!と思い、買い物かごへ…
少々都合良く考えてしまったが、あり得る話ではないだろうか。
Positioning
最後に、Targetingで絞り込んだ領域内で、今回のタイアップ商品の立ち位置を考える。
タイアップの中でも、特に衣料品・小物アイテム関連のブランドをピックアップしてポジショニングマップを作成した(図4)。
マップの2軸は、衣料品・小物アイテムのIPグッズを購入する際に私自身が注目する点である。
まず、オタク感の強さ。
これは、Targetingのステップで触れた話である。ファンではない第三者が見てすぐにIPを特定できるようなデザインかどうかを意味する。
もちろん、オタク感の強弱に良し悪しはないが、個人的には公の場で使う衣料品はオタク感が薄いものだと嬉しい。
ネガティブな理由としては、キャラクターものを身につけていると恥ずかしいいことである。
ポジティブな理由は2つある。
第一に、「ファンにはわかる」デザインだと、より上級のオタクになったような気がする(?)。第二に、TPOを選ばず日常的に身につけられるため、キャラクターと共に生活できて嬉しい。
この軸に関して、本タイアップ商品はオタク感強めに位置すると考えた。
どの商品もドラえもんをイメージしたデザインで、主張が強いからである。
一見IPタイアップ商品だとはわからなくても、色合いが奇抜なので目を引く。そして、注視しているうちにドラえもんが認識できるようなデザインである。
次に、実用品か鑑賞品か、という用途の違い。
オタク感が薄いものや、ジャージなど家で使用するアイテムは自ずと実用的になる。
一方、オタク感の強いものや高価格アイテムは、日常使いではなく鑑賞用になりやすい。
この軸に関しては、鑑賞品としての比重が高いと考えた。
ただし、実のところ確固たる根拠はない。
高価格帯かつオタク感の強いデザインということで鑑賞品寄りだと思ったが、重度のファンであればむしろ堂々と着用して外出するかもしれない。
この点については実際に購入者にインタビューしたいところである。
以上の考察から、本タイアップ商品はマップの真ん中よりやや左上に位置すると考えた。
しかし、特に縦軸(実用品・鑑賞品)の位置については購入者の背景によって変動が大きいと思われる。
終わりに
本稿では、ANREALAGE×ドラえもんのタイアップ商品を考察しました。
私自身は本ブランドのことを知りませんでした。けれども、調べるうちにドラえもんがルーツにあることが明らかになり、改めてドラえもんの影響力に感服しました。
そのようなブランドの背景も踏まえつつ、STP分析を用いてターゲット層の仮説を立てました。
要点は以下の通りです。
ターゲット層:「重度のオタク」×「20代後半~50代」
ポジショニング:「オタク感強め」×「鑑賞性高め(?)」
本タイアップ商品は、購入を躊躇する高価格帯・オタク感の強さから、万人受けする商品ではないと考えました。
ただし、高価格帯と言っても60,000円を切ることや、オタク感の強いデザイン=ファンとしてのアイデンティティ表現になることから、重度のコアファンからの強い需要が期待されます。
また、分析からは除外しましたが、実際はANREALAGE自体のコアファンも購入すると思われます。
ブランドファンについては私の知識不足のせいで踏み込んだ議論ができませんが、SNSの投稿を分析してタイアップに対する世間の反応を伺おうと考えています。
今後も多領域の企業やブランドとタイアップすることで、ドラえもんの可能性が開拓されていくのを期待しています!
例えば、靴、楽器、料理本、美容家電などの商品も良いですし、
本屋、献血ルーム、スポッチャ、チームラボなどの「場所」とのタイアップも面白そうです。
ドラえもんに関わる提案・要望を送り付ける場所が欲しい、、、
最後までお読みくださりありがとうございました。
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