鎌倉転生悪役令嬢?

「私はいったいどこで間違ったのか」
狐崎の小高い山の上。
押し寄せてくる兵と戦いながら自問自答する。
何も間違いは無かった。
九郎を讒言した時も、七郎に苦言を呈した時も。
私は何も間違ってはいなかった。
なのにいつの間にか、他人へと向いていたはずの矢印は自分へと向けられ。
それは刃へと変わり。

「私はどこで間違ったのだ」

命が絶たれるその瞬間まで、その疑問は頭にこびりついて離れなかった。

「貴方を断罪します! カジハーラ侯爵令嬢!」

気がつくと、厳しい断罪の言葉が自分に向けて発せられていた。
そして無数の冷たい瞳が降り注ぐ。
広間らしき場所で、私は今まさに断罪されていた。

「はぁ? ワタクシが断罪? いったいどういうことですの?」
思わず声を上げてしまって、違和感を感じる。
声はかなり甲高いし(まるで女のよう)、言葉尻がどうもこう、自分では言わない語尾のような。
ふと目線を下に移せば、御所の女房が着るような、さりとて違うような服を着ていた。
そして周囲にいる者(なぜか女性ばかりだったが)も同じような服を着ている。
「今さら言い逃れをするつもりですの!」
私を断罪していた女性が大声で言う。
その顔を見て、思わず目を擦りたくなった。
(和田、義盛?)
女性は和田義盛そっくりの顔をしていた。
「貴方がクロウ子爵令嬢にしたことは、ここにいる皆様がすでに知っていることですわ!」
義盛にそっくりの女性は、周囲にいる女性たちを振り返る。
その女性たちの顔を見て、目を剥いた。
(三浦? 千葉? 小山? 安達? 比企まで)
生前自分を糾弾した者たちが、揃いも揃って女性になり、(当世風の?)衣服に身を包み、私を冷たい目で見つめていた。
どういうことだと疑問に思うまでもなく、私の知らない知識が頭へと流れ込んでくる。
ものの数秒で、私は全てを理解した。

転生。異世界。悪役令嬢。乙女げぇむ。

最後が一番理解に苦しんだが、物語みたいなものかと無理矢理納得した。
「ワーダ侯爵令嬢、ここはカジハーラ侯爵令嬢がクロウ子爵令嬢にした数々の嫌がらせを明らかにすべきですわ」
「ヒキー伯爵令嬢の仰る通りですわね」
めまいがしてきた。
いや、それにしても、
「クロウ子爵令嬢への嫌がらせ? そんなみみっちいことをワタクシが?? やるならトコトンやりませんと」
ポソリとつぶやいてしまって、周りがザワザワとする。
「やはりこの方を許すべきではありませんわ!」
ワーダ(慣れないな)侯爵令嬢が声を荒げる。
「この方が生徒会長なんてふさわしくありません! 生徒会長はワタクシにこそふさわしかったのに!! 貴方が有る事無い事を学園長に吹き込んだから!」
それはお前の私情が入ってないか?
相変わらずな奴め。
「ワーダ侯爵令嬢、今はクロウ子爵令嬢への嫌がらせを」
ヒキー伯爵令嬢が止めようとすると、ワーダ侯爵令嬢は激しく頭を振った。
「これも関係あることです! カジハーラ侯爵令嬢は、クロウ子爵令嬢だけでなく、私や他の方もこうやって貶めていたのです! 自分が生徒会長になりたいためだけに! そうでしょう! 皆様!!」
賛同の声が広間を包む。
流れ込んできた知識で、コレが乙女げぇむで定番の断罪場面だと分かる。
私はこの後、裁かれ処刑されることになっている。
それが、乙女げぇむの悪役令嬢の運命なのだとか。
理解したくなくても理解してしまう。
だが、

「なぁ〜んでワタクシは転生先でも断罪されておりますのー!?」

私の絶叫が広間中を響き渡った。


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