安達としまむらの修学旅行先を全力で考察してみた
はじめに
入間人間先生著作「安達としまむら」8巻では、修学旅行先を舞台にあんなことやこんなことが繰り広げられる、あだしまの民にとって幸せでしかない物語です。更に修学旅行先が「北九州(九州北部)」というのですから、福岡市民の僕にとって安達としまむらが距離的にも身近に感じられるポイントです。
普段は岐阜県本巣市周辺を舞台にしており、その細かな地理的描写はリアルさを演出させるのに十分な力を発揮しています。福岡の地から「地元の人いいなあ」と指を咥えていたわけですから、修学旅行先を九州にしてくれてありがとう……っ!の気持ちが止まりません。
しかし、読み進めていくうちに「ここは……どこ……?」と現実的に理解不能な行程を組んでいることに気がつきます。のちにそのルートを挙げますが、もどかしさで延々と悶々します。誰か正解を教えてほしいのですが、「安達としまむら 修学旅行 モデル」とかでググっても答えどころか考察記事が見つかりません。というわけでここは地元であり、そして地理と旅行と地図が大好きな僕が、安達としまむらが訪れた修学旅行の行先を限られた情報をもとに全力で考察していきたいと思います。
一応書いておきますが、ネタバレ注意です。
明確な地名
まず本文に記載されている明確な地名を挙げていきます。
以下はしまむらとたるちゃんとの電話の内容で、そのやり取りの中で地名がはっきりと記載されていました。
『しまちゃんは?』
「北九州」
『へぇー。北っていうと福岡?』
「そうそう。後は長崎とか、熊本……だったかな」
(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
というわけで
・北九州
・福岡
・長崎
・熊本
ただし、ここでの「北九州」とは「福岡県北九州市」を指しているわけではなく、福岡県、長崎県、熊本県の九州北部地方を指しているようです(熊本県が九州北部地方かどうかはこの記事で目を瞑ります)
推測できる場所と地名
また本文にはハッキリと地名こそ書かれていないものの、容易に推測できる場所があります。
① 公園で昼食を終えたら、本当にほとんど見学しないでまたバスに乗り込み、地獄巡りに向かった。本当にそんな名前だった。足を止めることはなく、素通りするような感覚で各所を見学する。途中、ワニがたくさんいる場所があってそれが一番興味深く見られた。
② 地獄を観光した後、初日に宿泊する旅館へと移動した。その旅館の前に来た段階で硫黄の匂いがはっきりと立ちこめる。嗅ぎ慣れないと異臭にも感じるそれは旅館内でも、そして班ごとの部屋に案内されても消えることはなかった。温泉地ってこういうものなんだろうか。
③「テーマパークはオランダ風らしいけど、オランダってなにが思い浮かぶ?」
④ その山の名前はわたしでも知っていた。活火山であることもだ。
バスは本格的に山へと上るわけではなく、広大な駐車場へと入っていく。
(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
①については「地獄巡り、ワニがたくさんいる」ということで、ここはもう断言できます。大分県別府市の「鬼山地獄」です。
おめでとうございます。聖地認定です。安心して巡礼できますよ。
②について、「地獄を観光した後に硫黄の匂いがはっきりと立ちこめる温泉地の旅館」に宿泊しています。旅館は残念ながら無数にあり、ここと言える特徴も書かれていないので不明瞭ですが、察する地名といえば大分県別府市しかありません。別府市は町全体が温泉街のようなもので、それこそ硫黄の匂いに包まれています。地獄を巡ったあと、そのまま同市内の旅館に宿泊したのでしょう。
③については簡単です。オランダ風のテーマパークといえばハウステンボスしかなく、ここも聖地認定ですおめでとうございます。
④について。
1泊目の宿泊場所は②大分県別府市で、そこから③長崎県佐世保市に位置するハウステンボスに向かう途中に立ち寄った場所です。
地理的な候補としては由布岳と阿蘇山が挙げられるのですが、より全国的に有名な活火山は阿蘇山ではないでしょうか。出発地より結構長い時間をかけて来たとも書かれているので、別府市に隣接する由布岳より大分県を越えた先にある阿蘇山のほうがしっくりきます。さらに広大な駐車場は草千里駐車場もしくは阿蘇山上有料駐車場だと考えられます。
広大さが感じられるのは草千里駐車場の方だと思いますので、こちらがやや有力かなと思います。ここでは草千里駐車場と断定しましょう。
標高が高く秋から冬にかけて濃霧が頻繁に発生する場所でもありますので、僕としては阿蘇山説を推していきます。
立ち寄ったスポットとルートの考察
ここまで判明した場所と、文中に書かれている交通手段等でルートを考察します。
まず出発の空港について、岐阜県から近いところと言えば県営名古屋空港か中部セントレア空港が考えられますね。ここで二点考慮すべきものが
・10年後も同じ空港を使って海外旅行をしている
・学校からバスに乗って駅に向かい、電車に乗り継いで空港まで行く
海外便が就航しているのは言うまでもなくセントレア。県営名古屋空港は国内線のみです。
また電車で辿り着けるのもセントレアのみ。おそらくバスに乗って名鉄岐阜駅でミュースカイに乗り換えたんじゃなかろうかと思います。10年後は名鉄名古屋駅を使ったのかな。妄想が膨らみますね。
というわけで出発空港は中部セントレアです。
では次に到着空港について。
セントレアから就航している「九州北部」の空港は以下の通りです。
・福岡空港
・大分空港
・長崎空港
・熊本空港
ここで注意したいのが大分空港です。大分空港ー中部セントレア空港を就航しているのはIBEXエアラインズのみで、使用機材は70席のCRJ700です。さすがに修学旅行で70席の機材は使用しないでしょう。それかチャーター便を用意した可能性がありますが、修学旅行での予算面を考慮すると外すのがベターでしょう。というわけで大分空港はこの場合除外します。
ここで以下の文を引用します。
着陸時に眺めていた北九州の町並みと山、そこへの接近に翻弄されながらも飛行機は無事に空港へと着陸した。(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
「北九州」っと言ってるので北九州空港を想起させますが、セントレアから就航していないので北九州空港ではない…はず。それよりも「着陸時に眺めていた町並みと山、そこへの接近」となると、福岡空港が最も有力かなと思います。長崎空港は洋上にあり、熊本空港は山こそ近けれど町は接近というほどないかなと。何より福岡ーセントレア便は数が多いですしね。
福岡空港では着陸時に南側から進入する航路があります。その際空港南の右側に位置する大城山が目線の高さまで迫ります。すると山、町が接近する様子で空港へ着陸することになります。
こちらの動画を見ていただいたらよりわかりやすいかと。15分04秒から大きく旋回し、右側に見えるのが大城山です。動画でもわかるように山と町が接近するようにそのまま飛行機は空港へ着陸します。
というわけでいったん福岡空港有力説で進めます。
さて空港からバスに乗り、「結構な距離」を走って大分県別府市方面へと向かっているはずですが、ここから奇妙なルートに入ります。
なんとフェリーに乗るのです。
福岡空港から大分県まで陸路で当然行けますし、むしろフェリーを利用する場面がまったく見当もつきません。
ということは福岡空港説はない……?
仮に他の空港だとしましょう。
熊本でも大分までは陸路のみです。フェリーに乗るシーンから最も遠い空港です。物理的にありえません。
では長崎はというと、これはかろうじてありえるかなといったレベルです。長崎空港なら「町と山が接近して着陸」することも……まぁそんな風景でも……うーん……。
長崎空港から陸路で島原半島まで行き、そこからフェリーに乗り換えて有明海を渡る……といったルートです。
これでもかなり無理やりです。というか無茶です。
そもそも2日目にハウステンボスを訪れているなら、ここを起点として別府に向かい1泊し、2日目に戻ってくるなんて無駄が多すぎますね。初日にハウステンボスを訪れていたなら確証できたんですが……。
ただ救いにも本文には「次の目的地に向かうためあえて遠回りのフェリーに乗っている」ともあります。おぉ、うんめー。と思うのも束の間。以下引用です。
次の場所へ向かうために敢えて遠回りしながら乗るフェリー、はしゃぐ同級生たちの声、遮りなき大海原、なんかでっかい船(多分そこまででもない)の甲板、取り囲むは白と青。(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
ここで注目したいのは「遮りなき大海原」です。航路の有明海は内海で、雲仙普賢岳を始めとした周囲の高い山が海のどこからでも見渡せます。遮りなき大海原と表現するには少し大げさな気もします。
まぁ頑張って解釈すると、この時のしまむらは安達と付き合ってなんやかんや幸せな日々を送っていて寛大なようですし、生まれも育ちも内陸岐阜県であれば多少の狭い海でも大海原と表現するには誇大ではないのかもしれません。無理やりにでも納得することにしましょう。
と、無理やり納得したところで光が差します。
本文では以下のように続いています。
他の同級生は乗船してから船員さんに貰ったスナック菓子を、カモメの群れに投げている。観光用のために日頃から慣らされているのか、カモメたちはし損じることなく、宙に浮かんだお菓子を受け取る。(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
併せてこちらの記事をご覧ください。
こちらの記事にはかっぱえびせんがカモメのエサとして売られています。販売時期は11月〜4月とのことで、修学旅行の10月とはズレますがまぁそんな細かいことはいいでしょう。きっと船員さんがサービスで渡したのです。
有明海は意外とカモメが有名です。秋から春にかけてカモメとフェリーが併走する景色もよく見られます。となると、わざわざこのような描写を本文中に載せたということは、やっぱり有明海ということがわかりますね。
引っかかるところは沢山ありますが、これで納得するほかありません。
ということで今のところ
中部セントレア空港〜長崎空港〜島原港〜有明海(九商フェリー)〜熊本港
が有力です。
次に訪れるところが最大の難所ともいえます。
それから船を降りてまた少し移動した先は、わたしでも名前の知っている公園だった。正式名称は公園じゃないし、神社とか、美しい水の流れる景観とか見るべきものの多い名所だけどそういうものとは特に無縁でただ昼ごはんを食べるために立ち寄るのだった。一階がお土産売り場で、二階が食事処。(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
まったくわからん……。ただヒントは多く散っていますね。
・しまむらでも知っている=全国的に有名な公園。
・正式名称は公園ではない。
・神社や美しい水の流れる景観が名所。
・一階がお土産売り場で、二階が食事処。
ちなみにここで昼食をとるのですが、そのメニューは蕎麦と馬肉のしゃぶしゃぶです。馬肉といえば熊本が有名です。ここはフェリーの行き着く先が熊本港でないと考察ルート上困るので、馬肉を食べてくれてありがとうとなりました。
ではしまむらでも知っている公園となると、ひとつ挙げられるとすれば熊本城かなぁと……。城内には加藤神社がありますし、堀の水も美しいといえば美しい……?です。
では熊本城をベースに考えていきましょう。すると早速完全に理解した状態になります。それが立ち寄った食事処の場所です。
なんと熊本城の公園内に団体観光客向けの施設があるじゃないですか。しかもこちらは馬肉やお蕎麦を取り扱った店もあり、団体向けに提供するとなると十分にありえそうな場所です。
引用:城彩苑見開きパンフレットより
土産物集合ゾーンがありますね。1Fが団体飲食ゾーンとなってますがそれっぽい施設もあります。
熊本にあるしまむらが知っているほど有名な公園で、そこには神社があって水が流れてる見どころの多い名所、となると多少の差異はあれどアンサーでよいのではないでしょうか。せめて城って書いてくれ……!!
というわけで僕の考察では熊本城とします。
追記 2021年2月26日 水前寺成趣園説
頂いたコメントより、水前寺公園ではないか説が急浮上してきました。
早速検証していきましょう。
場所は当初想定していた熊本城からほど近いため、ルート上に問題はありません。
さて、難関とされる散りばめられた以下のヒントを埋めていきましょう。
・しまむらでも知っている=全国的に有名な公園。
・正式名称は公園ではない。
・神社や美しい水の流れる景観が名所。
・一階がお土産売り場で、二階が食事処。
・しまむらでも知っている=全国的に有名な公園
まず水前寺公園が全国的に有名なのかどうかですが、正直怪しいです。いや、決してこの公園がダメというわけではなく、岐阜県在住の九州に来たことがない女子高生が知っているレベルかどうか? と考えるとかなり怪しいところはあります。
ちなみに山口県出身の僕の妻は知りませんでした。
ただしまむらの視点で描かれているため、たまたましまむらが知っていた可能性だってあります。それは僕の主観的な印象より、しまむらの「わたしでも知っていた」を尊重すべきなので、知っていたものは知っていたんだと納得することにします。
・正式名称は公園ではない
こちらの正式名称は「水前寺成趣園」です。
やった!一致!
・神社や美しい水の流れる景観が名所
園内に出水神社があります。
またこちらの公園はなんといっても文字通り美しい水の流れる景観が名所です。
引用:水前寺成趣園公式HP http://www.suizenji.or.jp
一致!!すご!!綺麗!!
・一階がお土産売り場で、二階が食事処。
水前寺成趣園に隣接する「水前寺観光センター」があります。
こちらの施設は本館と別館に分かれ、別館が「一階がお土産売り場で二階が食事処」となっています。
座席数は200席と十分用意されていますね。
引用:Google マップ ストリートビュー
しかも!!
こちらで提供されている食事のメニューに「学生様用 御昼食メニュー」というものがあり、そのなかに馬肉のしゃぶしゃぶとお蕎麦がセットになったものがあるのです。本文中にその記載があります!
昼食の献立は蕎麦と馬肉のしゃぶしゃぶだった。(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
引用:水前寺観光センターHP https://suizenji.jp
桜しゃぶ御前!!
これや!!熊本城訂正!!
水前寺成趣園です!!!!!
コメント頂きましたbonbosukko様ありがとうございます!!
こうやって考察ルートをあだしま民で埋めていくの感動ものでしょ……
追記終わり。
それから別府市への地獄へと向かうのですが、やっぱりなかなか無謀な経路だな……。
地獄からハウステンボスまではわかっているので、現時点でのルートは以下の通り。
1日目
中部セントレア空港〜長崎空港〜島原港〜有明海(九商フェリー)〜熊本港〜水前寺成趣園〜鬼山地獄(地獄巡り)〜別府市内旅館
2日目
別府市内旅館〜阿蘇山(草千里駐車場)〜ハウステンボス
一気に判明してきましたね。
ここで最後の施設です。
二日目の宿泊先はホテルだった。旅館よりも縦に長い。
見上げていると形からカステラを連想する。(入間人間「安達としまむら8」電撃文庫)
描写がこれしかありません。もはや意味不明です。もっとヒントをくれ。
ただ、ここまでで訪れていない県がひとつあります。どこかわかりますか?
しまむらが明言していた地名は以下の通り。
福岡、大分(地獄めぐり)、長崎、熊本
そうです。ここに来て福岡県にまだ訪れていませんね。
当初福岡空港に降り立ったと考察しましたが、フェリーを考慮するとあまりにも無茶苦茶で破綻してしまうので、長崎空港としました。そうなると未だ訪れていないのは福岡県ということになります。
そして縦に長くカステラを連想する、これだけでピンと来た福岡市在住歴25年の僕。
ヒルトン福岡シーホークでしょう。
引用:ヒルトン福岡シーホークHPより
もうここでいいでしょう……これしか思いつかんもん……。
見上げればなんとなくカステラに見えなくもないし……。
高校生の修学旅行で泊まるには高級すぎるホテルだけど……。
ちなみに余談ですが、このホテルは「君の膵臓をたべたい」の聖地です(マジ)
というわけで僕はここを2日目の宿泊先と考察します。もうこれ以上は出てきません。「ここじゃない?」ってところがあればぜひ教えてください。
まとめ
修学旅行のルートは以下の通り
1日目
中部セントレア空港〜長崎空港〜島原港〜有明海(九商フェリー)〜熊本港〜水前寺成趣園〜鬼山地獄(地獄巡り)〜別府市内旅館
2日目
別府市内旅館〜阿蘇山(草千里駐車場)〜ハウステンボス〜ヒルトン福岡シーホーク
ぜひGoogle マップを開いてこのルートをご確認ください。マジで意味不明です。無駄の集大成です。助けてほしいです。頭が割れそうです。
でも……あだしまが幸せならそれでOKです!!
おしまい
(シーホーク以外にももし「ここじゃない?」って場所があればぜひ教えてください)