フランスで就活した話

フランスで就活したことのある日本人はそんなにいないと思うので、書いてみようかなと思います。私がフランスの大学院卒業したのが2021年だったので、大体そのころの話です。今は事情が変わっているところもあるかもしれませんので、あくまで一個人の経験した話ということでご理解ください。
ちなみに経緯をざっと説明しますと、高校卒業後ニートとかフリーターをしてぶらぶらしていた僕は、フランス語と英語を覚えて資格をとって、当時学費が無料だったフランスの大学の学部に正規入学→学部卒業→修士卒業という流れです。大学はバキバキ文系です。

フランスの就活

フランスには新卒一括採用みたいな制度はありません。というか、逆に世界で新卒一括採用みたいな謎の制度があるのは日本だけだと思います。フランスでは大学卒業した後みんな好きなタイミングで就活します。すぐ就活する人もいますし、海外でワーホリしたりする人もいますし、ニートになる人もいます。ただ、フランスでも長い空白期間はあまりよく思われないので、海外に行って見識を広めていましたとかなんとかの勉強をしていましたとか面接でつっこまれないよう考えておく必要はあります。

フランスはたぶん日本以上の学歴社会で、まず学部卒だとあまり良いところには就職できません。まともな会社に就職したければ最低でも修士をとる必要があります。それから政治系の学校とかビジネス系の学校のほうが格が高いとされています。
日本では大学で勉強したことと関係のない仕事に就くことがままありますが、フランスでは基本的に学校で勉強したことと関係のある分野でしか働けません(もちろん例外はあるでしょう。いつだって例外はあるので)
なのでやりたい職業があったら学校に入りなおす人とか学部を変える人がけっこういます。これに関しては日本のほうが良いなぁと思わないでもないです(逆に学校で学んだことを活かせないというデメリットもありますが)

履歴書

フランスの履歴書(CV)には日本とは違い決まったフォーマットはありません。日本で好き勝手に色つけた履歴書で応募したら即書類落ちだと思いますが、フランスでは自由です。みんな勝手に履歴書デザインしています。ただ内容は大体同じで、学歴とか職歴は明記しておく必要があります。それから履歴書のほかにLettre de motivation (志望動機書)という自分がなぜその会社で働きたいかをA4用紙一枚分くらいにまとめる必要があります。これがけっこうめんどくさくて嫌でした。ちなみに履歴書には決まったフォーマットはありませんが、Lettre de motivationには割と決まった書き方があるので注意です。最後にVeuillez agréer, Madame, Monsieur, mes salutations distinguées…とつけるとかね。

履歴書の写真

フランスでは履歴書の写真に証明写真を使ってはいけません。できるだけインスタ映えする自分が見るからに陽キャっぽい写真を使います。ただあんまりフランクなのもダメなようで、僕が大学で就活講座みたいの受けた際に(大学が就職予備校化してるのはフランスでも同じですね)は、ジャケット、Yシャツ着用が望ましい(Tシャツとかパーカーはよくない)、ちょっとにっこり微笑んでいる程度にしましょうとのことでした。

実は履歴書には写真を載せなくてもかまいません。差別を防ぐため、履歴書の写真は義務ではありません。僕は何回か写真載せないで応募したけど普通に面接に行けました。ただあなたがイケメンや美人なら載せたほうが得なのは間違いないでしょう。

余談ですが、名前がフランス系ではないマグレブ系の人は名前で差別されて書類で落とされやすいという社会問題があります。日本人の名前は?そもそもフランスで就活する日本人があんまりいないと思うのでよくわかりません。

出典:https://www.lepoint.fr/societe/les-maghrebins-victimes-d-une-forte-discrimination-a-l-embauche-24-11-2021-2453653_23.php#11

滞在許可証

海外在住者の肩に重くのしかかる滞在許可証。これがけっこう難関というか、僕は当時学生の滞在許可証で就活していましたが、フランス(あるいはヨーロッパ)で働きたければ労働者用の滞在許可証に切り替える必要があります。ですが、労働者用の滞在許可証に切り替えるためには、まずは就職する必要があります。つまり、ビザ支援してくれる会社を探す必要があるわけです。
フランス人と結婚して配偶者ビザがあれば楽だったのでしょうが、独身なので仕方ありません。当時は配偶者ビザで働ける人をちょっとうらやましく思ったりもしました。

フランスの会社からすればフランス人を雇えばビザサポートみたいなそんなめんどくさいことをする必要はないので、普通は同じ能力のフランス人と日本人がいればフランス人のほうをとるでしょう。また、今も同じかは知りませんが、当時はフランス企業が日本人(ないしEU圏外の外人)を雇う際には、フランス人に払う最低賃金より高い給料を払う必要がありました(たしか2200ユーロくらいだったと思う)。なのでよほど特殊な能力を持つ人でない限り、フランス人からすればフランス人(あるいはEUのヨーロッパ人)を雇ったほうが得です。
あとからビザないなら無理とか言われるのが嫌だったので、電話で人事に「ビザサポートしてもらう必要があるのですが、大丈夫ですか」とあらかじめ聞いていました。

採用試験

正直そこまで企業受けてないのですが、採用試験はその会社によります。日本のSPIみたいな画一的な試験はありません。
出版社の最終面接受けたときは、とある日本の漫画家の短編漫画を読んで分析して小論文にまとめよという試験でした。
私が受けたメーカーではちょっと絵を描いてデジタル造形をして性格診断を受けるというものでした。試験がなくて面接だけのところもあると思います。

福利厚生

これも会社によりますが、ticket restaurantというお食事券みたいのをくれる会社が多いです。義務なのかはわかりません。あと僕はもらったことないです。住宅補助とかも僕は見たことないなぁ。僕が小さい会社でしか働いてないせいかもしれませんが。賞与はあるところはあります。
アルバイトしてたこともあるけど、交通費も支給されたことないです。
全般的に見て福利厚生は日本の優良企業のほうが良いと思います。

結論

就活っていやですよね。お祈りしますとかNous sommes au regret de vous annoncer…とかの文面を見ると何とも言えない嫌な気持ちになります。就活の悪魔がいたら絶対強いです。チェンソーマンに就活を食べてほしいです。

結論から言うと日本の就活もフランスの就活もどっちも大変だと思います。フランスでも今は職にあぶれてCDD(日本でいう非正規雇用みたいなもの)を繋いで生きている人はいっぱいいます。失業率も高く、2023年11月の段階でフランスの25歳以下の若者の失業率は17.4%です。
出典:https://injep.fr/tableau_bord/les-chiffres-cles-de-la-jeunesse-2023-activite-emploi-chomage/#:~:text=Page%201-,En%202022%2C,ans%20(part%20du%20ch%C3%B4mage).&text=leur%20part%20de%20ch%C3%B4mage%20est%20de%205%2C4%20%25.

ただ新卒一括採用みたいなプレッシャーがない分気持ち的にはフランスの就活のほうがゆとりがあるかなぁという気はします。


もしフランスで就労したい日本人にアドバイスがあるとすれば、修士号までとることと、大学で勉強したことのほかにもう一つ何か特技を持っておくことです。特技を持っていたほうが良いというのはほかのフランス人と差をつける何かがないとフランスで日本人が職を得るのは厳しいからです。

あとはやっぱりなんといってもコネです。フランスはコネ社会です。私はコネとか特にありませんでしたが、強いコネクションを持っている人を頼るとフランスの就活はずっと楽になるはずです。(口で言うのは簡単ですが現実はきびしい)







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