カーネマンのシステム3

ダニエル・カーネマンは人の意思決定に2つのタイプがあり、素早い意思決定をシステム1とし、熟考する遅い意思決定をシステム2とした。そこに最近、AIロボティクスの世界から、1と2だけでなく、システム0、システム3もあるとの仮説が提案された。(『記号創発システム論』 谷口忠大 編 )
<システム1、システム2のおさらい>
カーネマンの定義にこだわらず(というかはっきりと定義していない)システム1の意思決定の特徴をみると「直感的、感覚的で早い」意思決定になる。意思決定に感情・情動のウェイトが大きいといえる。
システム2は「論理的、分析的で遅い」意思決定である。感情・情動よりも論理・理性が勝った思考となる。
システム1のためにヒューリスティックが使われるが、ヒューリスティックは認知バイアスも言え、システム1の欠点になることがある。
<システム1、2はいろいろな場面に出てくる>
システム1とシステム2の使い分けは厳密ではないが、我々の実生活で「あ、そうだな」という納得感がある。例えばマーケティングでも「売り場ではコンマ秒以下の注視でブランド選択している」つまりシステム1、一方、住宅や車など検討要素が多い商品では時間をかけて冷静に論理的に比較検討して意思決定するシステム2が採用されるという言説は納得されやすい。
ところが、マンション購入でも突然、システム1で意思決定されることもある。システム2の検討は徹底しすぎると「購入機会の喪失」につながる危険が大きくなる。
また、この二項対立的物言いは一般受けする。システム1、2も下表のように敷衍できる。マーケティングリサーチにもあてはまる。
<シテム0とシステム3で環境・機械から社会構成まで一気通貫>
カーネマンのシステム1、2は二重過程理論と呼ばれ、ディープラーニングにも当てはめられる。
初期は画像・音声認識など低次の早い認知機能にとどまっていたが、LLMは高次の認知機能の
AI化、世界モデルに進んでいて、これは記号創発モデルである。
システム1と2は、個人レベルの記号創発であるが、その前に構造としての機構(機械)やシステムを考え、これをシステム0とする。
よくできたモデル、機構(機械)は環境の変化に自然に対応する。自ら意思決定していると見える。
さらに、個人をこえて集合体として働く記号創発システムが作動し、集合的知性を生み出すシステムを想定し、システム3とする。
人間は世界モデルを構成し内的表象を生み出すことにより個人として環境に適応するにとどまらず、外的表象を生み出し、つまり記号を生み出し、集団として環境に適応している。(以上は『記号創発システム論』 谷口忠大 編 より)
これで、機械(ロボット)→人間(意識)→集団(社会)をつなぐ記号創発モデルが出来上がる。
このモデルの理解はまだ不十分だが、マーケティング分析に使えると考えている。ブランドに関する調査で考える。
システム0は甘味指数など機械的測定、システム1は対象者の感覚器的反応・評価の観察測定、システム2はロイヤリティなど予測符号化に基づくイメージ表現、システム3はブーム、トレンドと呼ばれるような集団の外的表象、という分析モデルを作りたい。

システム1、2の比較


MRのシステム1、2


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