コンセプト評価の話法

グループインタビューのテーマは新製品のコンセプト評価がもっとも多いのではないか。
この世にまだない商品・サービスのコンセプトを文章で表現したものを提示して「買ってみたいか」まで聞き出すのだからある意味無謀な作業である。
<コンセプトシートは無言で呈示する>
FGI(グループインタビュー)でコンセプトシートを提示するときは、モデレーターは無言か「どう?」くらいの発言促しに徹する。
間違っても「好きですか?嫌いですか?」などの評価を聞いてはいけない。
黙って提示し、しばらく時間を与えて読んでもらい「どう?」と問いかける。その間、対象者から「ここはどういう意味だ?これは何だ?」などの質問があっても一切答えない。
黙って提示した時の対象者の反応を、
・文章そのものを読めた・読めてない
・理解できた・できてない
・具体物が想定できた・できない
・自分ごとと感じているかかどうか
・共感できる・できない
・買いたい・買う人はいそう・買わない
の順に解釈していき、コンセプト評価を深めていくのがモデレーター話法。
以上の項目を問いかけてしまうと対象者の反応を限定することになる。
それを防ぐためもあって、最初の問いかけは「どう?」が最適になる。
<対象者の混乱の意味を解釈する>
「どう?」という問いかけは、対象者が問いかけの意味や裏に透ける意図(よいと言って欲しい)に忖度せずに第一印象を答えることになる。その中には「深い沈黙、他の対象者の出方観察」などのダイナミックスがあるので、モデレーターはそれを敏感に感じ取るようにする。
第一印象の反応はあまり深く追わない。
<コンセプトシートはわかりずらい>
第一印象の感触がつかめたらに「文章だけを見て分かりづらいところはあったか?」を確認する。ここでは表現者側が込めた意味と読み手の理解とのギャップを明らかにし、そのギャップがコンセプトと密接につながるか、外れたところの誤解かの判断をする。もちろん、る誤読、誤解は修正回答をする。
この時、コンセプトシートにアンダーラインを引いてマルバツをつける方法がある。これは対象者の意識をコンセプト文に集中させる効果はあるが、分析には使えないと考えた方がよい。
<具体的なイメージができた様子があるか>
文章理解が確認出来たら次に「この文章から具体的な製品やサービスがイメージできるか?」と問う。
だが、コンセプト文だけで具体的商品イメージが湧くような生活者はいない。対象者の反応は「この部分はどうなってる?」とスペックへの質問になることが多い。
このときは質問に回答するか、「どうなっていて欲しい?」と逆質問するかの判断もモデレーターの技量になる。
対象者が部分について質問するときは「こうであってほしい」という願望ができていると考えて、対象者が答えを見つけられるようにモデレーションする。こちらが回答してしまうと対象者はそれに従わざるを得ないからである。あくまでも対象者は部外者でモデレーターは「中の人」なのである。
<理解・共感から自分ごとへ>
ここまででコンセプトの理解度と共感性の有無が判断できる。できなければ、モデレーションかコンセプトに欠陥がある。
コンセプトに興味・関心を持ったと判断できたら、自分ごとかどうかを問う。この話法はコンセプトによって違ってくるが、「自分の生活の中にあってもよいか、あってほしいか、今、使っているものとチェンジするか、バリエーション追加になるか」などと問いかける。
<購入意向確認>
最後に購入意向の問いかけになる。「買ってみたいか、買うか?」を迫るわけだが、買わないよりも「買う」の中身を追求する。
買うという返答の中には「自分じゃないが買う人はいそう」という内容が隠れている。自分ごとになっていない状況なので、ここでは圧迫的プロービングをすることもある。「これが発売されたらあなたはお金を払って買いますか!」と訊問調になっても構わない。
ただ、インタビュールームで文章だけ見せられて、製品サービスを想定させられ、将来の現実的な購入場面での購入意思を迫られても「そんなの知らねー」が対象者の真実の印象であることはモデレーターは理解している必要がある。
コンセプトの評価をしているときは価格は提示しない。
しかし、最終てきに購入意向を聞くときは必ず具体的な価格を提示するのが鉄則である。
<コンセプトシート作りは難しい>
コンセプトシートの中には、だらだらと商品特性を説明しているだけでコンセプトになっていないものや、広告コピーのようなものもある。
開発やマーケ部門はまず、社内や上司を説得するためにコンセプトを作る。それをそのまま調査用のコンセプトシートにしてしまうと長い、しつこい、用語がわからない、ものになる。そこに、広告部門が加わると情緒的表現が加わり、一層わかりずらくなる。
クライアントと相談しながら調査用のコンセプトシートを作る。
その時の要件は、
・文章は3行以上にならない
・ひとつの文章はひとつの意味だけを表す(接続詞は使わない)
・コンセプトはひとつに絞る。サブコンセプトはない方がよい。
・専門用語は使わない。
・余計なイラスト、図案は混乱を招く。入れるならPKデザイン案。
などである。

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