夏休み神学論争 MRは科学か?

夏休みなので、少し暑苦しい神学論争「マーケティングリサーチは科学か?」を書いた。
定性と定量、どっちを使う?
リサーチ会社の人、企業のリサーチ部門の人は「このテーマは定量と定性とでは、どっちが向いている?」と質問され、「定量と定性の違いはそもそも何なの?」と詰められた経験が多数あるはず。
「定量向き、定性向き、どっち?」を説明するのはなかなか難しい。「両方やれば!」で解決だが、これではケンカ売ってるに過ぎない。
定性と定量の違い
定性は、非構成(半構成)のスクリプトでインタビューを進め、対象との会話からテーマの理解・発見・解釈を文章化する。定量(ネットリサーチ)は構成された(決められた)質問文と回答選択肢を提示して回答を集計・分析する。
定性は自由度は高いが、インタビューと分析にブレが大きい、つまり、モデレーターと分析者によって結果が大きく変わる。定量は、自由度は低いが、ブレ(誤差とも言う)は小さいし、ブレの程度を測定できる。
対象をひとりの(消費)人格と考え、サンプル1(n=1)でも分析可能とする定性、対象をサンプル集団と考え、サンプルサイズの設計が必要な定量という違いがある。
仮説の網羅性、緻密さを要求する定量と柔軟な仮説が良い結果を生む定性
定量の質問文と回答選択肢を作るとき、誤解されない語句、わかりやすい質問文と漏れ重複、過剰のない回答選択肢に留意する。そのために、当該市場とテーマに関して作業仮説をある程度網羅的、緻密につくる必要がある。
質問文にない、回答選択肢にない項目のデータはどうやってもとれないし、途中で追加・修正することもできない。
これに対して定性で、あまりに緻密な仮説(スクリプト)を作ってしまうとインタビューが「はい、いいえ」の回答で進んでしまい、発見や新しい解釈を導くことができにくくなる。 
定量は仮説を検証しようとし、定性は仮説をスクラップアンドビルドしようとする。
分析結果をコトバ(文章)で語る定性、分析結果を数値で語る定量
定性のローデータは対象の発言(コトバ)であり、サンプルサイズもないので「集計」という概念、作業はない。
従って、定性の分析・報告に数表やグラフはない。いわゆる「記述的」な分析・報告になる。
定量は集計の後、さまざまな属性とクロス集計して合計、平均、比率など統計数値の(差の)分析をする。
視覚的な理解のためにグラフを作ることが多い。定量の報告の「多い・少ない、増加・減少」などのコメントには必ず数値の裏付がある。
マーケティングリサーチは科学であるか?
測定は科学的態度の基本である。測定結果を理解、推論し理論化するのも科学の使命である。
マーケティングリサーチも科学であり、測定は定量調査が担っている。測定から理論構築に向かうとき定性的な理解・知見が必ず必要になる。
その時、測定結果の読込み、理解のための定性との位置づけもあるが、「理論」は定性だけで「構築」できる。
この点が、バリバリの科学と社会科学の違いであろう。
インタビュー、観測、観察の定性的理解と定量の測定を組み合わせてマーケティング理論を組み上げていきたい。


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