インフルエンサーよりシステム3
ダニエル・カーネマンのシステム1、2を「記号創発システム論」でシステム0とシステム3にまで発展させた。
マーケティングに即してシステム0を外部環境、システム3を外部(市場)のトレンド、ブームと読み替えて考える。
<システム0はインフラ>
カーネマンのシステム1、2は個人の意思決定での二重過程理論であり、心理学である。消費者行動論も心理学を起点にして、市場にまで広げることで心理学からマーケティング論になっている。
B2Cのマーケティングで考えると、市場(社会システム)は外部であり、製品を消費者に認知させる通信(TV、ネット)、届ける流通(鉄道、道路)、陳列する店舗、通販サイトなどが重要な外部システムである。
日本の市場は、これら外部のシステム・構造は完成している。製品・サービス作っても広告宣伝の方法がない、流通網がない、店舗がないということはなく「作れば自然に流れる」とも言えるシステムになっている。
これを完成されたシステム0という。自らプラットホーム、運送会社、小売店舗を作る必要はないのである。
このよくできているシステム0をいかに効率よく安価に使うかがマーケティング課題であり、競争要因になる。
ただ、このシステム0に乗らない製品・サービス、例えばスーパーの棚に乗らない大きさの製品は売れないという制約になる。
<システム1、2は個人の心理過程>
システム1とシステム2は個人の意思決定の二重過程理論であり、システム1と2は協調、競合しながら意思決定に参加している。
高額品や高関与度の製品では熟考型のシステム2が優位になるが、システム1の早い直感的な意思決定が優位になる場面もある。新製品の場合は、コンセプト、ベネフィットを論理的に理解し、既存品と比較するプロセスのシステム2が優位になると考えられる。
ただ、長々と理屈っぽい説明だとシステム1に取って代わられるリスクが高くなる。直感的に理解共感できるコンセプトが要求される。
システム3は記号創発システム論(谷口忠大)でカーネマンの理論を敷衍したものと考える。
<システム3は潮流、トレンド、ブーム、推し>
システム0、システム1、2はすでに説明した。
システム3は消費者集団が持つ(と期待できる)記号創発力である。システム0ほど外部性は強くないが、システム1、2より消費者の心理からは離れて社会性が強い。
具体的にはブームやトレンドを生み出す能力があるのがシステム3である。今回の兵庫県知事選挙でも、システム3の働きで、すでにあった言葉だが「既得権益」「パワハラ」などに新しい意味が付与された、新しい意味が生成されたと考えられる。
システム3は生成AI(LLM)のアナロジーで説明できる。
人間だけが持つ言語を生む力を生成AIは記号創発システムとして獲得した。
LLMを極端に単純化するとプロンプトに基づいて前後にくる言葉の予測確率を計算し、確率の高いものを選んでいるだけらしい。
たったこれだけのことを膨大なデータ量(ネット上の文章)、モデル選択、圧倒的なコンピュータパワーで記号創発システムといえるものを生み出した。この記号創発システム論は人間が遺伝的に持つ言語を生み出す力とは別の言語創生を可能にした。
<グランズウェルを超える?>
グランズウェルの主張を荒っぽくまとめると以下のような戦略の組み合わせ、統合となる。
傾聴→リサーチ
会話→マーケティング
活性化→セールス
支援→サポート
開発→統合
システム3はこのプロセスを消費者とマーケターの協働作業にしようとしている。
その昔、ダンカンワッツがYahooのビッグデータ分析から、ブームを起こすハブは自然状態では発見できなかった。と結論付けた。
システム3はそれの再考を迫るものにしたい(妄想)。