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哀しいバレンタイン

仕事中に流れるラジオは、
一週間後のバレンタイン一色。
今年のプラザの包装紙は、
かわいくて惹かれてしまう。
あれは、何年前のバレンタインだったか。

特に喜んでくれる訳でもないけれど
それまでは、家人にも
チョコレートを贈っていた。
ずっとバレンタインを特別な日だと
思いたかった。

「はい。チョコレート」
「そこ置いとって。後で食べるから」

ある日冷蔵庫を開けると、
食べられることなく放置したままの
チョコレートが落下してきた。

「いつ食べるの?」
「ずっと放置してるから落ちて来たやんか」
落下の衝撃で、チョコレートは割れていた。

食べないのなら、もう買わないから

家人は、テレビの画面から振り向くことなく

「うるさい」

一言投げ捨てるように言った。

「それってひどくない?」

わたしの声のボリュームは、
少し大きくなった。

うるさいわ
もともと買って欲しいとか
頼んだ覚えないしな

じゃあもう買わないね

そんなもんいらんわ
そんなもんいらんわ。**
それからバレンタインは止まった。

今年もまた思い出して
しまったやないの。

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